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World Piece  作者: アキラ
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第17話 チーム戦での模擬戦

ザルトがオルクと一緒に女性陣が仲良く話している様子を見ていると、オルクが声をかけてくる。


「なあ、ザルト」


「どうした?」


「久しぶりに手合わせをしねぇか?オレはこういうところにいるよりも身体を動かしている方が性に合うんだよな」


「ああ、いいぜ。久しぶりに手合わせしようじゃないか」


オルクから模擬戦に誘われたザルトは快諾する。ザルトとしてもそろそろ身体を動かしたいと思っていたところであったため、彼としてはありがたい申し出であった。


「アオラ」


「はい!何でしょうか!?」


「これからオルクと模擬戦をしようと思っているんだが、訓練場を使ってもいいか?」


ザルトはこれからオルクと模擬戦をする上で城内の訓練場を使えるかどうかを聞いてみた。


「よろしいですよ!今なら空いているはずですので!」


「何なに?ザルトとオルク、これから模擬戦するの~?」


ザルトとオルクが模擬戦をするということを聞きつけたシャーロットが反応してくる。


「おうよ!シャロも一緒にやるか?」


「うん!やるやる!」


オルクに話しかけたことでザルトと同様、模擬戦に誘われたシャーロットはいつものノリで乗ってくる。


「せっかくだからさ、今回はチーム戦でやろうよ!」


「チーム戦というと、もう1人は必要だな…」


シャーロットの提案で今回の模擬戦はチーム戦をすることになったため、公平な人数にするためにもう1人必要ということになる。


「それなら私が参加してもいいかしら?」


「リアナが参加するなんて、珍しいね?」


リアナが模擬戦のチーム戦に参加することを立候補したため、それを意外だと思ったミネルバが突っ込む。


「シャーロットとオルクの2人の戦闘データを取りたくてね。戦い方を見ているよりも直接、やり合った方がより多くのデータを取れそうだと思ったのよ」


「あたしとオルクの戦闘データか~。それならチーム分けはあたしとオルク、ザルトとリアナでいいよね?」


「ええ、構わないわ。よろしくね、ザルト」


「ああ」


シャーロットの提案でチーム分けはザルトとリアナのラムリア王国チームとシャーロットとオルクのアストロ王国チームという形になった。そこから5人はラムリア城の地下図書館から訓練場に移動するのだった。


「訓練場に到着です~!」


ラムリア城の訓練場に到着するとザルトとリアナ、シャーロットとオルクは向かい合っていた。ミネルバとアオラは4人の模擬戦を安全な場所から観戦することにしている。


「地下図書館にずっと篭っていたから、地上に出てくるのは久しぶりね」


「いつもあの場所で篭っているのか?」


「ええ。基本的にモニターでの監視や魔法の研究で地上に出ることがないからね」


リアナは普段からあの地下図書館に篭りっきりであることもあるため、こうして出てくるのは新鮮であるようだ。


「そうか」


「ええ。だから、たまには身体を動かさないといけないわ。戦闘での勘が鈍るようなことになっては元も子もないし」


リアナは武器であろう魔法書のような本を持ちながらもザルトと話をする。


「それで、私はどっちの相手をすればいいかしら?私としては両方の相手をしても構わないのだけど」


「リアナにはシャロの相手を頼みたい。俺はオルクの相手をするから」


「わかったわ」


ザルトはオルクの相手をすると言い、リアナはシャーロットの相手を任されたことで模擬戦の方向性が決まる。


「おっ、あっちは方向性が決まったみてぇだぜ。シャロ」


「そうみたいだね~。こっちも決まったし早速、始めちゃおっか!」


シャーロットは短剣を鞘から抜いて、オルクは身の丈ほどある大剣を鞘から引き抜く。シャーロットの短剣はグラディウスほどの長さで、オルクの持つ大剣は彼の身の丈ほどあるため、持ち運ぶには大の男が数人ほど必要な重量であるがオルク自身が怪力の持ち主であるため、これを片手で担げるのである。


「ミネルバ。スタートの合図をお願い」


「あ、うん。それじゃあ、始め!!」


ミネルバの合図と共にチーム戦の模擬戦がスタートした。ちなみにミネルバは椅子に座っており、アオラはミネルバの側で控えるようにして立っている。


「行くぞ!」


ザルトはそう言うと、地面を勢いよく蹴ってオルクの方に突撃していく。そして剣を鞘から抜いたのと同時にオルクと剣を交える。ザルトは物凄いスピードで突進したがオルクはそれを軽く受け止める。その直後にオルクは大剣を振り上げるとザルトに向かって振り下ろす。ザルトはそれを読んでいたかのように軽くかわすと、オルクが大剣で攻撃した場所は轟音と共に小さなクレーターのようなものができる。


「烈衝破!」


ザルトはオルクの重い攻撃を難なくかわした後に剣から衝撃波を放つ。オルクはその攻撃を大剣で軽く防いだ後に大剣を左手に持ち替えて風属性の魔力を纏わせた右手の拳をザルトに向かって叩き込んだ。


「波衝拳!」


「くっ…」


ザルトは剣を盾にしてオルクの拳撃を防ぐが、彼の放った拳撃の威力は相当のものらしく、ザルトは後ろに大きく吹き飛ばされる。しかし慣れているのか、その後は普通に着地する。


「オルクさん、魔力を拳に集中させることで攻撃の威力を上げて放っていましたね!さらにオルクさんは風属性の使い手であることもあって、鈍重に見えがちの動きを魔法の効果で軽やかにするという芸当まで…」


「なるほど。ああいう魔法の使い方もあるんだね。あの一撃を受けて平然としているザルトも凄いけど」


先ほどまで戦いを黙って見ていたミネルバとアオラはここで口を開いた。アオラはオルクが今の一撃をどのように放っていたのかを見て把握したようでミネルバに解説する。


「相手がザルトさんでなかったら、あの一撃をまともに喰らったら場合によってはノックアウトですよ~」


「それだけザルトも強いということだよ」


オルクが放った一撃は威力が相当高いため、場合によっては相手を一撃でノックアウトできるくらいのものであるのだが、彼の相手をしているザルトの実力が高いこともあって、ダメージを喰らう程度で済んでいるようだ。

ザルトとオルクが激しく戦っているなかでシャーロットとリアナはお互いに動かずに向き合っていた。リアナは2人の方を見ていることからオルクだけではなくザルトの戦闘データも取っているようだ。そこでシャーロットが動こうとしていることに気付いたため、声をかける。


「いつでもどうぞ」


「そっか。それじゃあ、行っくよ~!」


リアナから先手を譲られたことで、シャーロットは遠慮せずに床を勢いよく蹴ってリアナに向かって飛び出していく。ミネルバと模擬戦をした時とは変わって最初から接近戦に持ち込むつもりでいるようだ。


「魔法戦が得意なリアナさんを相手に接近戦に持ち込むことは良い判断ですね!」


「そうだね。でも、リアナは私と同じようにはいかないよ」


模擬戦を安全なところから観戦しているミネルバとアオラはリアナとシャーロットの戦いを見守っている。


「なるほど。接近戦に持ち込もうというわけね。でも、そう簡単にはいかないわよ」


リアナはそう言うと右手を前に出して自身の前に巨大な魔法陣を展開する。ちなみに左手には魔術書を持っていることでその姿はさながら魔女のようである。

シャーロットは短剣による攻撃を仕掛けるが、リアナはそれを魔法で難なく防ぐ。攻撃を防がれたことでシャーロットは後ろに跳躍する。


「ブライトロック!」


シャーロットは足元に魔法陣を出現させると、そこから次々と岩が出現してそれがリアナに向かっていく。


シャーロットが素早く魔法攻撃に切り替えてきたことで、リアナも魔法陣を出現させて魔法攻撃を放つ。


「ジェットストリーム!」


リアナが展開した魔法陣から魔力による巨大な竜巻が放たれる。風属性の魔法は地属性の魔法には相性が良いため、リアナの放った竜巻はシャーロットが出現させた岩を一つ残らず粉砕していく。それを見たシャーロットは横へ華麗に跳躍してリアナの魔法攻撃を避けた。


「あちゃあ~。地属性と相性が良い風属性の魔法で対処されると弱いんだよね~。さすがは全属性の魔法を使えるだけあるなぁ」


「それはどうも。全属性の魔法を使えるだけじゃなくて、こんなこともできるのよ」


リアナは再び魔法陣を自分の前に出すと、そこから炎と水、風と雷の4つの属性の魔法攻撃を放った。


「っ!?」


リアナが放った魔法攻撃はかなり強力な威力だったために着弾点であるシャーロットがいる場所では爆発が起こった。


「4つの属性の魔法を同時に放つ…全属性の魔法を扱えるリアナさんならではの戦い方ですね!」


「それに相手が接近戦に持ち込もうとしてきても魔力を上手く展開させて攻撃を完璧に防げる。私は接近戦の相手が苦手だから、あのやり方を今度、リアナに教えてもらおうっと」


ミネルバとアオラはシャーロットとリアナの手合わせもちゃんと見ているため、そこから解説や感想を言っていた。


「あら、少しやりすぎちゃったかしら」


シャーロットは今のリアナの一撃で戦闘不能になってしまったようで、すっかりのびてしまっていた。


「ザルト、悪ぃが今回はここまでにするぜ。シャロ!」


シャーロットが戦闘不能になってのびてしまっていることに気付いたオルクがザルトとの模擬戦を中止させて、シャーロットのところに駆け寄り、彼女を部屋まで運ぶのだった。それから意識を取り戻すまではしばらくの時間がかかったのだった。


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