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蒼色のラクガキ  作者: 木下正裕
3/5

#3

大雨だ。





眠たいことしか頭になかった6限目の国語。今日の日付のせいで「羅生門」を右斜め前の友達が音読している最中に降り始めた。ここ数ヶ月でトップクラスの豪雨。





ママの嘘つき。今になってあの一言に腹が立つ。


・・・



「夜までは持ちそうやけど。」


・・・


...夜からって言ったやん!





誰にも気づかれないように静かに激怒していたワタシ。下駄箱でローファーに履き替えている途中のとある出来事のせいで、その真っ赤な耳が肌色に溶けていくことはなかった。





[おい、帰るぞ〜。雨ヤバイな。]


『それな。ママが嘘ついた。』


[嘘ついたのはおかんやなくて天気予報士やろ。]


『もう、二人ともやわ。』





(はあ、なんてゆるい会話。ずっと続けばいいのに。)


そして、ワタシが最も気にしていたことをアイツが先に口を出す。





[てか、二人とも傘ないな。]


『マジで!もうチョーめんどくさい...』











ポワン。





『???』


雨が地面に打ちつける音が鳴り止まない中、かすかになにか聞こえた。





『ね、今変な音聞こえんかった?』


[なんも。]


『そっか。ならいいや。』








『...え。』





謎の人形がワタシの右側に立っている。背丈は膝下くらい。両手足は、ヒモ?みたいかな。全身薄青くて、顔に大きな黒色のバッテンが書かれている。そして、なにも言わずただワタシを見つめている。





『なんか変なんおるんやけど。』


[どこに?とうとうおかしくなったか、頭。]





(笑い事じゃないってば。え、霊的なもの?ワタシそんな力あったの?え、怖い。)





大焦りのワタシなんか気にも留めず、雨の中走って帰ろうなんていう小学校低学年の提案をふんわり笑いながらしてきたアイツ。





『それどころじゃない!忘れもんしたから先帰ってて!』





気持ちが交錯したワタシは、アイツの返事を待たずに誰もいない教室に走り出した。




・・・





『あんた、何者!』


人形にそう怒鳴ると小さな紙切れに青い文字を書いて、両手で優しく持ちながらワタシに渡した。





メモメモ...





「いい天気とは誰にとってのいい天気か。視点は一つとは限らない。」








そのメモを渡した人形は間もなくして消えてしまった。





頭の整理が追いつかない。なにも分からない。

呆然と立ち尽くして2分後、ふとそのメモ書きに目をやり、ワタシは考えた。





この雨を喜ぶ人がいる。虫や魚や、動物だって。雨が単に悪い天気だなんて言えないのかも。





どうやら夕立だった雨は、まるでさっきとは別世界のように消え去り、水溜りではしゃぐ幼稚園児の眩しい笑い声が教室に響いた。





『あ。』


なにか言いたそうな顔をしたセンセーが、ワタシと目が合ったのと同時に黙ってその場を立ち去った。





・・・





家に帰ったワタシは、今朝の天気予報事件について一通りママに文句を吐いた後、部屋に戻った。

青い人形のことについて調べることにしたワタシは、予想に反して早くGWメモ帳を使うことになった。人形に渡された紙切れをメモ帳に貼り付け、こう書いた。








「5月12日(火)

今日からワタシは謎の人形について調べることにした。

まだなにもわからないけど、ワタシはその人形をAと名付ける。」








→→→ #4

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