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カラメル色の青春  作者: 武島 睦月
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第三話

「今日の授業はここまで、よく復習しとくように」


起立ー!礼!


学級委員長の号令が終わって例をした瞬間、男子の一部が購買で売っているパンを一つでも多く確保するために教室から駆け出していた。

「こら~廊下は走るな~」と注意をする先生もすでにあきらめているようで声に覇気がない。

そうこうしていると、机の上の片づけを終わらせた人たちもおのおの昼食をとり始めた。


「ゆっこ、今日もお弁当?だったらいっしょ食べよ?」

「うん、いーよ」

「わたしも食べる~この机借りちゃっても大丈夫だよね?」

「そこは前崎だっけ?いいんじゃない?」

「前崎ならいっか、じゃ、机くっつけて食べよ~」


私は高校二年生になっていた。残念ながらクラス替えで真理と違うクラスになってしまったので去年のように一日中二人でいることは少なくなってしまったが、もちろん今でも私たちは部活や放課後に仲良くしている。

それに、この真理のつけてくれた『ゆっこ』というニックネームにはまだ助けられている。

新しいクラスに変わって最初の授業で担任の先生の指示の元自己紹介を行ったのだが、その授業の前から同じ部活の人たちが私を『ゆっこ』と呼んでくれていたこともあって、すぐにこのクラスの人たちにも『ゆっこ』と呼ばれるようになった。


新しい友達も増えた。

今声をかけてきてくれたのがひとつ前の席に座っている子であり、チームメンバーでもある高畑みのりだ。

彼女とは去年から仲良かったが、同じクラスになったのがきっかけで放課後に遊びに行く頻度なども増えた。


一方、先程クラスメイトから無断で机を拝借していた少し小柄な少女、彩夏(あやか)などはこのクラスになって初めて会ったが、今ではみのりと同じくらい親しくなっている。


「はぁ…」


駅前に新しくできたケーキ屋に今度いく約束を彩夏としていたところ、みのりが大きいなため息をついた。


「どしたの?」

「実は最近うまくいってなくて…」


うまくいってない、というのはきっと彼氏のことだろう。

実は、皆から真理の恋愛話で私が攻められたあの日以降、みのりは皆から勧められ細川くんと付き合っているのだ。


最初は試しに付き合ってみる、という形で付き合い始めたのもあってみのりも乗り気でなかったのだが、みのりに楽しんでもらおうと空回りしてしまうくらい一生懸命にデートプランなどを考えてくれる細川くんに段々と惹かれ、今ではクラスでも有名なラブラブカップルになっている。

春休みにも二人で某夢の国に行ったりして仲がよかったはずだがいったいどうしたのだろう?


「細川くんさ、すごいカッコよくなってるじゃん?」

「う、うん」


確かに細川くんはみのりと付き合うまで少しもっさりとした髪型に眼鏡といういわゆる陰キャのような格好をしていたが、みのりに似合う男になろうと髪を整え、コンタクトに変え、運動をするようになり体つきも男の子らしくなっている。

が、それがどうしたのだろうか。


「それで…その、細川くんが同じクラスの人と楽しそうに廊下で話してるのを見かけるのが増えて、ちょっと嫉妬?みたいな?」

「ノロケかよ~」

「彩夏、そんなこと言わないの。みのりは悩んでるんだから」

「でもさ~、細川がみのりのこと好きなのは見てればまるわかりなんだしそんなに深く考えなくてもよくね」


たしかにその通りだ。それはみのり自身もわかっているはず、それでもつい考えてしまうのだろうか?

私は恋愛経験がない。好きな人がいることはあったけどそれも小学生のころだからだれかと付き合ったことなんてもちろんない。

最近、すこし気になる人はいるけれど、その程度だ。


「ん~、あ!呼び方変えてみるとかは!?」

「え?呼び方?」

「そう、だってみのり今細川くんのことくん付けで呼んでるでしょ?」

「あ、それいいじゃん。さすがゆっこ!」

「わ、わかった。頑張ってみる。ふたりともありがと」

「これくらいいいって。それより、来週どこ遊びに行くか決めよ!」


みのりの相談を片付けた後も私たちは弁当をたべながら休み時間いっぱい話した。

真理と過ごす時間は減ってしまったけど、それでも学校生活を楽しめている。

これも真理のおかげだ。




放課後、体育館で模擬戦をしている時のことだった。


「真理!」

「え?あ、」


真理の反応が遅れボールが床で跳ねた。


「ドンマイ!」

「次いこ!次!」


メンバーたちがミスをしてしまった真理にそう声をかけるなか、隅のほうで休憩をとっていた私は真理を見つめていた。

この試合だけでも三回目だ。そりゃ真理だってうまいとはいえミスしないわけではない。

でも、今のは明らかに普段のミスとは違っていた。ボーっとしていたように見えたのだ。


「…なにかあったのかな?」




「「「「「ありがとうございました!!!」」」」」


試合が終わり水を飲もうと近づいてきた真理はやっぱり普段と違った。

いつもなら、メンバーにミスしたことを軽く謝ったり楽しそうに話しているのに今日は一人でスタスタと歩いて戻ってきたのだ。


「真理、おつかれさま」

「ありがと、ゆっこ」


ボトルとタオルを渡すと真理は勢いよく飲みだした。

のどがこくこくと動いているのが、なんだかなまめかしい。


「ぷはぁ!あ~いきかえるー」

「おおげさだなぁ」

「え~そうー?」


ふふ、と笑いがこぼれる。


「真理、もしかしてなんか悩み事とかあったりする?」

「どーしたの?急に」

「なんとなく、かな」

「まぁ、たしかにちょっと悩んでるっていうか困ってることはあるけど、大丈夫だよ」

「そ、そう?」

「うん、心配してくれてありがと」


そう言うがはやいか真理は私に抱き着いてきた。

練習でたくさん汗をかいているというのに真理からはいい匂いがした。


「ちょ、ちょっと!」

「まぁまぁ、そう照れなさんな」

「でも、ほんとに困ったことになったらいってね。私に何ができるのかわからないけど話くらいは聞いてあげられるから」

「わかった!そうさせてもらうね」


そのあとの試合では全くミスをせず相手がかわいそうになるほど得点を取り続けてみんなと楽しそうにしていた。


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