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【完結】孤城の夜想曲 -伝承の復讐者-  作者: 茶ひよ
第3楽章 伝承の再現
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-2nd intro- ある罪者の口伝

 私は見ていた。ゆっくりと閉ざされていく外界への扉。私を阻むことになる、結界を呆然と眺めていた。


 出してくれ、私をここに閉じ込めないでくれ、そう私は願った。私に魔力が残っていさえすれば、結界を解くことも出来ただろう。


 しかし、彼の消滅とともに、私も希望というものを失った。


 どうして、皆は私を怖がるのだろう? 

 どうして、私を受け入れてくれないのだろう?


 何度も考えたが、私はその問題を解くことが出来なかった。


 空が見たかった。外に出たかった。

 皆と一緒になりたかった。


 でも、なれなかった。


 結界に映る赤い目が憎たらしい。

 これさえ無ければ、愛されたのに。


 私は、機会さえ許されない。街を壊した罪も、名も知らぬ誰かを殺した罪も、何も償えない。


 私に残されたのは、力と――。


「……良かった。魔力に余裕があるうちに術をかけれて。何とか無事か」


 革袋に包まれたものを取り出す。

 中に入っていたのは、二本の真っ白な骨。


 それを暫く見つめてから、小さく術式を唱える。

 指先に仄かにともった光を、優しく当てた。


 段々と光が集まり、一丁の楽器に変化し。

 私の目の前に、純白の輝きを放つバイオリンが現れたのだった。


 業火にのまれたあの闇夜を想い、始めた演奏はいつしか日課になった。


「私は救う。過ちを正す」


 荒野の砂を踏みしめながら、私は高らかに宣言する。


「そのためには、どんな犠牲も厭わない」

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