-2nd intro- ある罪者の口伝
私は見ていた。ゆっくりと閉ざされていく外界への扉。私を阻むことになる、結界を呆然と眺めていた。
出してくれ、私をここに閉じ込めないでくれ、そう私は願った。私に魔力が残っていさえすれば、結界を解くことも出来ただろう。
しかし、彼の消滅とともに、私も希望というものを失った。
どうして、皆は私を怖がるのだろう?
どうして、私を受け入れてくれないのだろう?
何度も考えたが、私はその問題を解くことが出来なかった。
空が見たかった。外に出たかった。
皆と一緒になりたかった。
でも、なれなかった。
結界に映る赤い目が憎たらしい。
これさえ無ければ、愛されたのに。
私は、機会さえ許されない。街を壊した罪も、名も知らぬ誰かを殺した罪も、何も償えない。
私に残されたのは、力と――。
「……良かった。魔力に余裕があるうちに術をかけれて。何とか無事か」
革袋に包まれたものを取り出す。
中に入っていたのは、二本の真っ白な骨。
それを暫く見つめてから、小さく術式を唱える。
指先に仄かにともった光を、優しく当てた。
段々と光が集まり、一丁の楽器に変化し。
私の目の前に、純白の輝きを放つバイオリンが現れたのだった。
業火にのまれたあの闇夜を想い、始めた演奏はいつしか日課になった。
「私は救う。過ちを正す」
荒野の砂を踏みしめながら、私は高らかに宣言する。
「そのためには、どんな犠牲も厭わない」




