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第2陣青髪の女性と徳川の動き

 私は今ものすごく後悔している。目的の人物を見つけたからって、ハンマーを振り下ろすなんてあまりにも無礼すぎた。


「ちょっと、どうして刀を向けるの? 私は別に戦うつもりは」


「こっちには戦う理由がある」


 そしてそれが、相手に刀を向けられる事態にまでなってしまった。私は戦う気がないというのに、向こうは私の言葉を聞こうとしない。


「はぁ!」


「っ!?」


 その代わりに私に容赦なく太刀を用いた攻撃を仕掛けてくる。その動きに一瞬彼の姿を思い出した私は、隙を見せてしまう。


 ーー避けられない


 そう直感した私は目を瞑ってしまう。だけど私の体には痛みが走らない。その代わりにどこかで聞いたことがあるような音ともに、私の横を火の塊が通り過ぎて、フードの人に直撃。


「この魔法、どうして貴方が」


「……」


 私は魔法が飛んできた方向に顔を向ける。ありえないと思いながらも期待しながら。


「ヒッ……シー?」


 だけど振り返った先には誰もいなかった。


「もう居なくなったよ」


 再び声がしたので顔を元に戻す。

 するとそこには、フードを被っていた人ではなく、先程の魔法でマントが燃えてしまった一人の女性が立っていた。


 水色のショートヘアーとと左右色の違う目。確実に私達の時代には生きていない人物。


「貴方もヒッシーと同じで、別のところから来た人?」


「ヒッシーという人が誰だかは知らないけど、別のところから来たのは合ってる」


 淡々と答える女性。その声には感情がこもっておらず、まるで人形がしゃべっているように感じた。


「えっとヒッシーていうのは、少し前までこの世界にいた人のあだ名で」


「知ってる」


「え?」


「その人は多分知り合いだから。私の」


「じゃあ、どうして……」


「どうしてその知り合いの貴方を狙ったかって?」


 私が一番聞きたかった事をまたもや無表情で喋る女性。そしてその私の疑問に対しての答えは、


「私がそいつを世界で一番憎んでいるから」


 とても残酷なものだった。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 結局その後彼女は名前も告げずにその場を去り、残った私も大人しく安土城に戻った。


「ヒスイさんを恨んでいる人ですかぁ?」


「うん。私が魔法を使えると知ったら、突然襲ってきたの」


 私は戻ったその足でリキュウさんの離れに立ち寄り、彼女に先程の事を話してみた。こういう時一番頼れるのは彼女以外にはおらず、他に意見を求めようにもネネじゃまともな話にはならない。


「それってヒスイさんというより、魔法使いを恨んでいるとかではないのですかぁ?」


「ううん、それも違うみたい。ヒッシーを恨んでいるって直接言っていたから」


「なるほどぉ」


 そう言いながらリキュウさんはお茶と茶菓子を出してくれる。私はお茶を一杯啜った後、一つため息を吐いた。


「ねえリキュウさん、死者が蘇ることってあるのかな」


「どうしたんですかぁ、いきなり」


「実は今日、ヒッシーに会ったの」


 正確には彼が使う魔法で私が助けられただけで、その姿は見ていない。ましてやその魔法を使ったのがヒッシーだという確証もない。


 というかその事がまずあり得ない話なのだ。


「もしかしてヒデヨシ様、寝起きですかぁ?」


「別に寝ぼけてないよ! でもあれは間違いなくヒッシーだったし、ヒッシーは私を助けてくれたの」


「それは幽霊とかの話でしょうかぁ? それなら別の専門の方を」


「だから違うんだって! というか専門の方って何?!」


 リキュウさんはまともに取り合ってくれない。当たり前の反応は分かっているし、私がおかしいのも自覚している。

 それでも、どうしても私はヒッシーの事を忘れられずにいた。特に魔法使いの噂を聞いたあの瞬間から。


「真面目な話になりますけど、そんな事を気にしていて大丈夫なんですか?」


「大丈夫って何が?」


「ヒデヨシ様も耳にしていますよね、近頃徳川が大きな動きを見せ始めている事を」


 いつもの緩い口調がしっかりとした口調になる時は、リキュウさんが真面目な話をしている時。どうやら彼女もその動きが気になっているようだ。

 私も将軍として真面目に彼女の話を聞く事にした。


「具体的にはどんな動きをしているの? 徳川は」


「実は最近江戸の方で何かを建てているという噂が広がっているんです。それが何なのか、そして目的が何なのかは分かっていません」


「徳川が江戸に?」


 何かを建てていると言われれば、思い当たるものとしては城なのだろうけど、何故私が天下を統一したこの時に、城を建てる必要があるのか。


 確かに気になる。


「江戸に建てている城、確かに気になるかも」


「偵察を向かわせますか?」


「ううん、私が確認しに行く」


「それは本気ですか? ここから江戸までかなり距離がありますよ?」


「それでも確認しなくちゃ。これから豊臣軍は江戸に遠征するよ」


 特に何事もなければそれでいい。だけど同盟を組んでいた者同士なので、もし何かあるのならば調べなければならない。


 誰かに頼るのではなく、自分の足で。


「二日後に発つ予定だから、リキュウさんは調べられる限り調べておいて。もし遠征先で何かあったら遅いから」


「分かりました。ヒデヨシ様もお気をつけて」


「うん!」


 この二日後、私は兵とネネを連れて江戸へ向けて東を進む事になる。ただその遠征先で私を待っていたのは、再びこの世に戦乱を巻き起こす事になる出来事だった。

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