9話 初めての就職試験
筆記試験は終わった。
結論を言えばテストの出来具合は中の下ってところか。
いや、中の下じゃあ駄目だろ。落ちているか受かっているか微妙なラインってところだよな。
まぁ受験勉強もしてたし、今の知識でも全然できない状態でもなかったから……よしとしよう。
控え室に集められ、次は面接だ。面接官二人と試験者一人で行う面接方であった。控え室には自分を含め3人。
ここでも『磯貝』という苗字であるため50音順で1番最初に面接をすることになった。
体が緊張で震えている。高校の受験でもだったな。あの時はまだ面接対策はしていたが、今回はあまりしていない。
だから今回は高校受験よりもっと緊張している。
「高校受験の対策もしてたし、なんとかなるだろう」と軽い気持ちで就職試験を受けたが、ここにきて緊張度がMAXだ。
正直舐めていたのかもしれない。どうにかなるだろうと考えた自分が甘かった。もっと対策をしていれば今の状態が少しは軽減されていたかもしれない。
今になって後悔をした。
「コンコン」
とノックがされ眼鏡をかけた、スーツ姿の男性が入室してきて、
「ではこれから面接を始めようと思います。では、磯貝さんからよろしくお願いします。」
名前が呼ばれ、返事をして起立をした。
椅子から立ち上がっても震えは止まらず、歩き始めても震えは止まらなかった。
「コンコン」
次は俺がノックをして面接会場に入室した。
「失礼します」
大丈夫。高校受験対策の面接練習がまだ身に染み付いている。次に椅子の横に立ち、
「15歳の磯貝誠司と言います。よろしくお願いします。」
大丈夫。大丈夫。
「それでは磯貝さん。腰を下ろしてください。」
「失礼します」
一礼して椅子に座った。
大丈夫。大丈夫。ここまでは順調だ。落ち着け。落ち着け。
面接官は顎に手を当て、紙を眺めている。何の紙を眺めているんだろうか。そして、
「なぜ高校に入学して、すぐに辞めたんですか?」
いきなり痛いところに質問が来た。
冷や汗が一気に出てきた。これはまずい。何か言わないと。
「お金を稼ぎたいとも思ったからです。」
「どうしてですか?」
「……」
黙り込んでしまった。空気が重い。
「カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ」
面接官がボールペンカチカチをする音が響いている。前を向くことができないが、こっちを睨んでいる面接官がいることは予想がつく。
「あのー。どうしてですか?」
「それはッ…その……」
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。何か言わないと。でも、何も言えない!前を向くことができない!
「そうですか…。まぁ正直あなたを合格にさせる気はありませんけど。」
……今なんと言われたか理解するのに時間がかかった。
「こんな早くに高校を辞めた人が続くわけないでしょうし。」
何を言っているんだこの人は。
俺は疑問に思い顔を上げた。
「履歴書を見ただけで不合格ですよあなた。少しでも特徴があるのかなと思いきや、頭もよくないしコミュニケーション力も高くない。受かる要素は1つもありませんね。」
俺の目を見て面接官は言っていた。
「何か言いたいことはありますか?」
面接官が質問してきた。
「いえ……ありません」
「それでは以上で面接を終わりたいと思います。お疲れ様でした。」
そして面接は終わった。