7話 お許し
目を逸らし、頭を抱えている母に対して俺は目を逸らさなかった。
「……本当に諦めない?」
「うん。」
しばし沈黙が続く。
次に母は頭を掻きながら
「んー!………わかった。ここで否定したら私の育成方針に反するもんね。」
「育成方針?」
「そっ。私は誠司になるべく自由に、後悔がないように生きて欲しいから。」
「……」
母の言葉に対して、少し胸が痛んだ。いや、胸を痛めるのはおかしいか。俺がやりたいことをやるんだから。
「ありがとう」
「でも、本当に諦めないでね。それだけは約束して。もし、思ってたのと違った〜みたいなこと言って諦めたらさすがに怒るからね!」
勢い良く母は言ったが、怒気はなく、優しい声だった。
ドサッっとベッドへ横たわる。ある程度覚悟はしていたが、淡々とことが進んでしまった。
まず、親が有休をもらう日に学校へ行き、先生方へ辞めることを伝える。そして学校を辞める。……それだけか。
ちょっとあれだ。やっぱり行きたくないものだ。高校のクラスメイトや先生達にどんなことを思われるんだろうか。「もう辞めるのか」「これだからゆとりは」「人間のクズ」などと思われるだろう。まぁどうせ死ぬからなんと思われようが関係ないけど。
あまり昼間に考えてたこと活かせてなかったな。お母さんが案外簡単に受け入れてくれたのが意外だった。ていうか辞めさせてくれないかと思ってた。それでも俺は絶対に喰い下がらないつもりだったけど。
さて、次にやることとしたら就職先だ。バイトでもいいんだろうけど…。
何しようかなぁ〜。馬主?総理大臣?もしくは石油王?
そんなもんに就職できたら人生勝ち組だろうし、死にたいなんて思わないだろう。まぁ俺にはそんな立派なものには絶対になれないだろうが。石油王に関しては職業と言えるのか?
0時を回ったのに何も眠くない。すっかり昼夜逆転してしまったのかもしれない。ベッドに横になりながら携帯をいじっていた。
明日も何もしなくていい。と考えてしまった。この発想はいかんな。とりあえず明日は何をするか決めよう。
最優先としては就職先を探すことだ。お金を貯めることに専念したいから学校を辞めたんだ。だったら早く見つけて稼ごう。だらだらしていたら就職先を探すのさえ面倒になってしまいそうだ。いや、絶対になってしまう。そして引きこもって何もしなくなる。絶対に。
それは避けないと。早く稼いで早く死のう。今も生きたくて生きられない、臓器を必要としている人がいるんだ。
そして夜中しばらくの間携帯をいじって時間を潰していた。
就職先を探しつつ学校を辞める日まで近づいてきた。
結論を言おう。よくわからない。今まで働いてお金を稼いだことがないからなぁ。何を調べたらいいんだ?そもそも雇ってくれるのだろうか。まぁちょっとずつ調べていこう。
そして、あっという間に学校を正式に辞める日がきた。
案外あっさり終わった。母を説得したことで先生との会話も母が参戦してくれた。親の許しが出ているのなら先生も何も言えないだろう。
だから俺はあまり喋らなかった。やはりコミュ障だよな。テンパると何も喋れなくなる。顔すらあげることができなかった。『死ぬために辞める』というのはもちろん言えないところがコミュ障の俺をさらに苦しめた。嘘をつく技術がないから挙動不振だっただろうな。
さてと。気持ちを切り替えよう。もう学校は辞めたんだ。
俺の野望への第1歩だ。
☆おまけ
プロフィール
①名前:磯貝 誠司
②趣味:ゲーム
③特技:無し
④フリースペース:特に無し
カワセミです。
主人公のプロフィールを載せました。主人公が書きそうなことを書いたのでつまらないですが…。
一応ここで一区切りという感じです。今後の内容はあまり決まっていないので、もしかしたら来週は更新できないかもです。その時はスミマセンm(_ _)m