6話 リベンジ
「ガチャ」
21時に母は帰ってきた。なんだかんだ今朝怒ってしまったのが気まずい。お母さんに会いたくないけど…このまま逃げたら多分どんどん会いづらくなって最終的には引きこもりになってしまう。それは嫌だ。もう高校生にもなって同じ年で働いているやつだっているんだ。社会人として頑張っていかないと。まぁ最終的には死ぬんだけど…。
「ご飯できたよ」
いつもの調子で声が聞こえた。「行くか」と重い腰を上げて立ち上がり部屋を出た。
「……おかえり。」
「ただいま。」
母はいつもと変わらない声と態度だった。つくづく甘いと思う。もっと厳しくしないと今までと同じように甘えてしまいそうだ。だけど言う。
椅子に座りまっすぐ母を見て
「昨日の話なんだけどさ――」
早速話に入ろうとしたがまず先にすることがあった。
「その前に…あの……今朝はごめんなさい。」
「もう。今日は仕事が何も進まないどころかミスばっかりしちゃったんだから。……いいよ。後、お母さんもごめんなさい。」
……なんでお母さんが謝るのか意味がわからなかった。
「なんで謝るの?」
「だって怒らせてちゃったし、後は…」
怒らせたと言うより俺が勝手にキレただけだ。お母さんは何も悪くない。…後はなんだ?
「後は昨日私が話を終わらせようとしたから。」
「……」
なんとなくだが違和感はあった。何故俺がお母さんに対して『嫌われる』と感じてしまったのか。
それは母が話を終わらせようとしていたからだ。母は俺が学校を辞めたいと言った時、2回も寝ることを促した。それに対して俺はお母さんが話をする気がないと思い『嫌われる』と感じてしまった。だから話を終わらせて逃げてしまった。
「誠司が今まで学校を辞めたいって言ったことなかったから寝れば気持ちが変わるかなって思って。」
まぁ正直に言えば自分の息子が「学校辞めたい」ってなったら俺はマジギレしてるかもなぁ〜…。マジで矛盾してるからなお前。でも、死にたい気持ちは変わらない。
沈黙が続く。俺から切り出さないと。言わないと。
「俺は…それでも学校を辞めたい。」
「……気持ちは変わらないの?」
「うん」
「ならせめてやりたいことを教えてくれない?」
やっぱりそうなるよな。今後の未来だったり、相手の気持ちだったり『知らない』というのはすごく怖いことだ。しかし、臓器を売ることを正直に言ったところでお母さんはもちろん許すわけがない。
「言えない」
「どうして?」
「……」
返答できない。そこに母は畳み掛けるように
「やりたいことっていうのを言わなければお母さんは学校を辞めるのは反対よ。」
今の発言に関してはいつもの優しい母とは違って、声に冷たさがあった。言うしかない…嘘を。
「……お金が欲しいから」
「なら学校行きながらバイトをやればいいじゃない」
…論破された。ごもっともです。
「そんな浅い内容なら辞めさせないよ」
それはそうだ。でも…
「本当にやりたいことをやるにはお金がいる。」
「……」
母の目を真っ直ぐ見て言った。
「母子家庭だからって気を使っているわけじゃないよね?」
「それはない」
「そこは即答なのね」
母は笑いながら言った。
「じゃあ約束して。ここで学校辞めるんだったら一生そのやりたいことをやること。そうしないと今後就職なんてできないよ。」
「……わかった。」
「本当かなぁ〜。正直に言って誠司は社会を舐めていると思う。」
まぁそうだよな。正直舐めているのかもしれない。怒られてメンタルズタボロにされるかも。でも……死ぬために頑張りたい。
「それでも頑張りたい」
しっかり母の目を見て言った。しばらく沈黙が続き、母から目を逸らし、頭を抱えた。
カワセミです。
最近すごく寒くなってきたので体調管理には気をつけてください。
私は早速出したこたつに寝てしまい、すぐ喉を痛めてしまいました(T-T)