表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は死ぬために生きる  作者: カワセミ
4/12

4話 眠れない夜

 顔を背けているから母の表情は見えないが、言った。言ったぞ!

 ……沈黙が続く。なんだろう。実際は数秒ぐらいの間だろうが、俺にとっては数分に感じられた。息がしづらい。そして母は、

「………どうして?」

 と言った。

 他の親はどんな表情をしてどんなことを言うのだろうか。「何バカなこと言ってるのっ!」などドスの効いた声で言うのだろうか。しかし母は微笑んで柔らかい声で言った。

「やりたいことが見つかった」

「へぇ〜。どんなこと?」

「それは、言えない」

 臓器を売りたいなんて言えるわけがない。言ったら絶対に反対されるだろう。

「そっか…。」

 母は頭を掻きながら言った。

「それは高校を卒業してからじゃダメなの?」

 模範的な回答だ。確かに今後『生きる』というのだったらその方がいい、というか一番正しいのだろう。しかし俺は違う。『死ぬ』のだから。

「それにそのやりたいことが途中で嫌になって辞める時がきたら学歴が重要になるでしょ?」

 それも『生きる』というのだったらだ。だから俺には関係ない。ごめんお母さん。

「それでも学校を辞めたい。」

「んー…。学校で何かあった?」

「いや、何も」

「今日は慣れない生活で疲れたんだよ。ご飯食べて早く寝なさいよ。明日も学校なんだから」

「学校はもう行かない。」

「………」

 学校に行く気がないことを伝える。

 沈黙が痛い。心が痛い。それはそうだよな。こんなロクでもない息子流石に呆れるだろう。俺から見た親の表情は少し悲しそうな顔だった。

「そっか…。きっと疲れたんだよ。今日はとりあえず早く寝なさいよ。」

「……わかった。」

 そこで会話が終わった。俺は晩御飯を食べ終わってすぐに風呂に入って、歯磨きをした。そして母に

「おやすみ」

 と言った。母も

「おやすみ」

 と言った。ここまでのやりとり母はずっと優しい声だった。


 部屋に戻ってすぐ明かりを消してベットに横になった。ヤバイ。すごく疲れた。もう数秒目を瞑ればすぐに寝付ける。でも寝たくない。明日になるのが嫌だ。結局明日はどうすればいいんだ?母さんは早く寝ろって言ったけど、学校に行かないとダメなのか?

 でもここで明日学校に行くとなれば自分自身の決意に対して早速裏切ることになる。だから明日は行く気はない。行く気はないがやはり申し訳ない気持ちは強い。

 しかし、碌に何もしてこなかった奴がやっていけるのだろうか。1人で海外いけるのか?働いてお金をもらうことができるのか?そもそも学校の授業が始まる前に登校拒否したクズが就職できるのか?どんどん自信がなくなってくる。

 色々な感情が葛藤し、結局眠ることができなかった。


 「6時30分か…」

カーテン越しに外が明るくなっていることがわかる。そして母が台所で料理を作っている音が聞こえる。

 学校に行くのであれば7時に起きれば充分に間に合う。あと30分は眠れる。しかし今寝たらなんか起きれない気がする。

 そんなことをうじうじ考えているとあっという間に7時になった。馬鹿だな。そして階段を上がってくる音が聞こえる。

「ご飯できたよ。早く準備しなさいよ」

 ノックをして扉越しに母が言った。

「……行かない」

 と小声で言った。当然母には聞こえず、

「誠司。早く起きないと遅刻するよ」

 繰り返し学校に行くように促す母に対し俺は苛々して、

「行かねぇよ!」

 と強く言った。

 最低だ。クソ野郎だ。なんで俺がキレてんだよ!お母さんは何にも悪くねぇだろ!

「……わかった。学校に連絡するね。」

 歯を食いしばり強く握り拳を作る自分に対して、それでも母は優しい声で言った。

カワセミです。


 今月は今までの人生の中で一番忙しく、5話の更新が遅れるかもしれません。その時は誠に申し訳ありませんm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ