4(by J.H)
タケシは溜息をつき、
グラスを置いた。
「お前はそこも変わらないんだな。そうやって、男を誘うから、軽い女だと思われるんだよ。だし、俺、明日早いし」
タケシはマッカランを飲み干した。真里はムッとし
「別に変な意味はないし。久しぶりに会ったから飲み直そうって言っただけなのに。相変わらず、女心分かってないね。明日早いから?アナタ、DJでしょ??翌日なんか気にして生きてんじゃないわよ!」
真里はマティーニのグラスを勢いよく口につけたが、もう既に飲み干していた。
と、タイミングよく、新しいマティーニが真里の前に出てきた。
入って4日の新人バーテンは
「あちらのお客様からです」と微笑んだ。
真里は顔を向けると
60代ぐらいだろうか、ハンチング帽にサングラス、黒のジャケットにスカーフをした男性が笑顔でグラスを傾けている。
真里は、すぐにコクっと会釈をした。
真里はまた、ゆっくりと
マティーニを飲み始めた。
ほんの数秒だったが、真里とタケシの間に沈黙の時間が流れた。
ふてくされながらも、真里は、「お代わりすれば?」
とタケシに言った。
「そうだな。
じゃあ、シャンパンを」
バーテンは「モエ・エ シャンドンのロゼはいかがですか?」と勧めてくれた。
タケシも「任せます」と頷いた。
「アタシも明日仕事だけど、彼女に相手にしてもらえない可哀想なアナタにもう少し付き合ってあげる」
真里はマティーニのグラスを傾けた。
タケシの前にはシャンパングラスが置かれた。
二人は自然に、再度、
グラスを合わせた。
と、
スピーカーから聞き覚えのある4つ打ちのビートが流れ出した。
真里とタケシは
顔を見合わす。
それは、二人でよく聴いていたDJ KAWASAKIの「Beautiful」だった。