1(by Meu)
30歳、OL、彼氏なし。
これが真里のプロフィールだ。
彼女にだって恋人がいたことはあるにはあるが、もう何年前のことだろう。忘れてしまった(ことにしていた)。
彼女には、行きつけのバーがある。それは、新宿東口の、とあるところ。知る人ぞ知る店だった。彼女は、金曜の夜の仕事帰りには、毎週、そこに寄る習慣があった。
「いらっしゃいませ」
今日も、バーのイケメン店員が出迎えてくれた。他の店員やバーテンダーも、イケメンが揃っている。と言っても、ここは女性客ばかりというわけではなく、そんな女性客と話したい男性客もやって来る。
彼女は、店員と客、そのどちらとも、会話するのが好きだった。
「今日は、お一人ですか」
バーテンダーに声をかけられた。この常連の私を知らない。ということはつまり、彼は新入りということだ。
「そうね。いつもこのお店には、一人で来るの」
「さようですか。いつもありがとうございます」
と、そのバーテンダーは、笑顔で言った。彼もまた、なかなかのイケメンだ。
「このお店には、いつから入ったの?」
「四日前からになります」
「そう、頑張ってね」
真里は、笑顔で語りかけた。こうやって、イケメン店員と会話することが、彼女の、何よりの癒しになる。
「お客様、一杯目は何になさいますか」
別のバーテンダーが、声をかけてきた。
「じゃあ、マティーニをお願い」
マティーニは、ジンとベルモットで作る、なかなかに強いカクテルだ。
「どうぞ、マティーニです」
真里が、マティーニに口をつけた瞬間、とある男が声をかけてきた。