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失恋インフェルノ

感想、できればおねがいします。

「ざまぁ」

 そんな三文字。

 そんな三文字が、公園にて僕の失恋報告を聞いた友人――紀田健きだ たけるによる返答だった。

「……もうちょっと、なんかこう、友人を気遣ったセリフとか言えない?」

「自分の想定した言葉しか聞きたくない、ってんなら合成音声ソフトでも買ってろ」

 想像以上に辛辣なボディーブロー(比喩)が帰ってきた。

「合成音声ソフトを馬鹿にする、って言うんだったら全力で殴るけど良いのかな良いんだよね!」

 想像以上に素早いボディーブロー(物理)が帰ってきた。

「良いワケないだろうが。後、音声合成ソフトを馬鹿にしたつもりはない」

「なら良いや」

「お前に音声合成ソフトは勿体なかったな。音声合成ソフトの製作会社に謝らないとごめんなさい」

「いやそこまで音声合成ソフトを崇め奉れと言った覚えは無いんだけどなぁ!?」

「なら良い、んじゃなかったのか?」

「そこまで華麗な罵倒のジャブが繰り出されるとは全く思ってなかったのでねぇ!」

「ありがとう」

「1ミリも褒めてねぇよ!?」

「で、本題に戻るんだが。音声合成ソフトってな、意外に操作が難しいんだぞ」

「本題そこなの!?」

「ちょっとエロいセリフを喋らせようとしたんだが……、心が折れた」

「音声合成ソフトを馬鹿にしているのは一体どっちだよ!」

「お前だ」

「そこは即答なのな!」

 と、馬鹿みたいなマシンガントークで流されかけているけれども。

「……僕の失恋に関するクエスチョンとかはナッシングなの?」

「いや、分かりきってた事だし」

 ぐっさり。

「人はここまで的確に心を抉れる生物だったんだね知らなかったよ!」

「……ガチ泣きするなよ気持ち悪い」

「全身複雑骨折で大量出血しているのに、そんな傷口にタバスコをダバタバとかけられた気分だよ!」

「タバスコかけるまでもなく瀕死じゃねぇか」

「じゃあもう良いよ! 勝手に愚痴るから聞いててよ!」

「じゃあな」

「カバンを持つなベンチを立つなゴミを置いていくな!」

「なんだ。わがまままだな」

「もうそれで良いから本題に入らせてはくれませんかねぇ!?」

 良いのかよ、とか呟きながらベンチに着いたところを見届けてから、僕は口を開く。

「失恋の傷を癒すためにはどうすれば良いのか、モテモテなのにフラれる紀田君から聞きたくて」

「喧嘩売ってるだろ」

-------------------------------------------------------------------------------------

「で? 頬を腫らしたブサイク顔が、失恋からの立ち直り方を知りたいと?」

「うん」

「まず、その腫れまくった顔をどうにかしろ」

「うん。フラれた理由は君のせいで腫れたこの顔ではないと思うんだけどね」

「そうか。腫れのせいにしちゃいけなかったな。悪い事を言った」

「元が酷い、みたいな事を言わないでようっかり死にたくなっちゃうでしょ」

「まぁ、顔が云々は知らないが、お前は醜いよ」

「……この至近距離で僕を見にくい、って大丈夫? メガネ買ったら?」

「お前は俺に相談してんの? コントの相方として誘ってんの?」

「前者です」

「……で、だ」

 こほん、と咳払いを一つしてから、

「お前、心が醜いんだよ」

 今日一番のボディーブロー(比喩)を、僕に放つ。

「自分から行動も起こせないクセに、何が『フラれた』だか」

 紀田は、腕を『V』の形に肩を上げ肘を下げ手を上げる――そんな、分かりやすいオーバーリアクションで肩をすくめる。

「告白もしていないのに、ちょっとすれ違っただけでその落ち込みだろ?」

 はぁ、とその体勢のまま分かりやすい溜め息を吐き出す。

「そんなネクラがモテる、なんて相手が余程のゲテモノ趣味じゃないとありえねぇな」

 がたんっ、

「……自分から行動も起こせないクセに、人の胸倉をいきなり掴む事はできるんだな」

「悪い。図星すぎて腹が立った」

「悪い、と思うんなら手を離してくれ」

「イヤだ」

「即答かよ」

「あぁ」

「その勇気を、その女子にぶつける気にはならなかったのか?」

「女子の胸倉を掴む、とかちょっと想像したらいやらしいな」

「……」

 ぱっ、と胸倉から手を離す。

「その女子とは、どれ位仲が良かったんだ?」

「一度だけだけど、休日に二人きりで出かけた」

「なんだ、デートか」

「……だったら、良かったんだけどねぇ」

 ポケットから携帯を取り出し、080――

「ん?」

「今から、電話してみる」

「お前、行動が極端だなぁ」

 ぴっ。

 トゥルルルルルル……

「あ、もしもし、松山まつやま君?」

 松山、僕の苗字だ。

「今、ちょっと良いかな?」

「『? うん、良いよ?」』

「え?」

 今、声がダブって聞こえたような……。

「あれ、健君と一緒にいたの?」

「……あれ?」

 振り返って、果たして。

 そこに、彼女がいた。

「なんだ。お前の好きな奴ってコイツだったのか」

「コイツ?」

「? 変な話じゃないだろ?」

 だらん、とケータイごと手を垂らす。

「付き合ってるなら、大した問題じゃないだろ?」

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