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21話

深夜の公園はもうすぐ夏だというのに妙に寒々しく感じる。


 暑い夜なら一服の涼気を感じさせてくれる鈴虫の合唱も緊張感を高めるだけの不愉快な雑音にしか感じられなかった。


 時刻は深夜一時……。 


普段なら風呂に入ってダラダラテレビを見ている時間なんだが、何故だか俺はここに立っている。 


 あの黒く無駄に広い駒墨の部屋で、話があると言った駒墨は『実は……』と躊躇するように口を開いた後に、ただこの時間に公園へ来てくれとしか言わなかった。 


 あれだけもったいぶったことをしておいて、ただ何も答えずに来てくれと言われて素直にはいそうですかと納得はしなかった。


しかし頑強にとにかく深夜一時にこの公園へ来てくれとしか言わず、それ以上追求するならもう一度私と戦ってもらうことになるぞ。


 一戦すら口にするので、しょうがなく諦めてその場は帰ることにした。


 もう一度戦闘になったところで今度は俺が勝つからなという捨て台詞だけはエレベータの扉が閉まる前に吐いておいたけどな……。


 とにかく駒墨はここに来いと時間を指定して呼び出した。


 いずれにしても何かがわかるかも知れない以上、断る理由は無かった。



「それにしても遅いな……自分から来いと指定してきたくせに」


 チラリと携帯の時計を確認すると言われた時間から十分程経っていた。

 

 手持ち無沙汰の俺はゆっくりと周囲を見渡す。


 そういえばあの謎の襲撃者と出くわしたのもこの公園だったな。


 あいつの正体もいずれ探っておかないと……。 


 まったく調べることばかり増えていくので嫌になるぜ。


 しかもそのヒントすら見つからないしな。


 溜息をついてもう一度時間を確認すると、ちょうど液晶は一時十五分を指している。


 いい加減眠くなってきたな、もう帰っちまおうか。


 もしかしてわざわざ俺を呼び出しといてやってこないところを見ると何かあったのか? 


 そこまで考えたところで頭を振って否定する。


 あの女を殺れそうな存在にはこの街にはいない、能力に目覚めた奴はすぐに街中に張り巡らされた網にひっかかってすぐに捕捉される。


 そして俺にぶっ倒されて宗家の本山に送り込まれていく、今までだって取り逃がしたこともないし、網にひっかからずに生活していくなんてのは俺達のような化け物では不可能のことだ。


 どんなにそいつが潜んで生活しようとしても、血に目覚めた化け物達は自身の本能に抵抗することは出来ない。


 例外は一つも無かった。


 せいぜい大人しくしようとしてもせいぜいニ日か三日が限度だろう。 


 限界? そこまで思い至ったところで気づいた。


 市内で死体が見つかって今日で何日目だ?


 恭介が俺に知らせてきたのは?


 俺がこの公園で襲撃を受けた日、それは二日前だ。 


だとしたら例の死体を作った奴が行動を起こすとしてもおかしくない!


 くそっ!自分の馬鹿さにまたあきれてしまう。


 慌てて走り出そうとしたところで公園内の雰囲気が変わっていることに気づいた。


 硬質化した空気を通じて何かがぶつかる音がする。


 金属のような何かがぶつかり合うような……どっちの方向からするんだ?


 姿勢を低くして周囲に注意深く聞き耳を立てるその刹那、俺の目の前に見覚えのある物が地面に刺される。


 夜の闇の中でもきらりと光り、まるで自身を誇示しているようなそれは間違いなく数十メートル先から投射されたものだが、その場所は星明りでさえ照らせないような暗闇だけがある。


 うん? 暗闇だけ?


 何故あそこだけが『見えない闇』に飲み込まれているんだ? 



俺はここで数十分立ちつくしていた。


 おかげですっかり暗闇に目が慣れているはずなのに、何故かそれが投げられて来た一画だけがどうしても見えない。


まるで黒い壁があるようにあるいは闇色の霧がたちこめているようにそこだけは塗りつぶされたように何も見えなかった。


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