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十二話

 不思議そうに顔をかしげながら駒墨は静かに、


「そうか……」


 また前を向いて黙って歩き始める。


 一体何だってんだ……?


 しばらく歩き続けて、駒墨が駅の方角に向かって歩いていることに気づいた。 


 何故なら消費者金融の看板がちらほらと増え続けていたからだ。


 どこの地方都市でも見られるように元気なのは消費者金融くらいなもので、空き地があれば立つのは風俗か派遣会社か消費者金融……だいたいその三種類が多い。 


 逆に地方独特の店というのはまるでピンポイント空爆でもされたかのように街中から消えている。


 それこそ一ヶ月前には立ってたはずの店が消えて、前述の店のどれかになっているのだ。


「あれはなんの看板だ?」


 駒墨がまた立ち止まって指差す。


 そこにはテレビに最近良く出ている女性タレントが笑顔で映っていて、その下には『ご利用は計画的にしよう』という大嘘が書かれていた。


「毎朝通るときに疑問に思っていたんだが、ふむ……笑顔でご利用は計画的にとは一体なんなんだろうか……」


 腕を組んで看板の前に立っている女子高校生はなかなか不気味で、道を歩いている人から奇異な目で見られている。


「ああそれはですね、若い男の子達は私を利用するときは計画的にしないと成績が下がって後悔するんだぞって意味でしてね、要するに注意表示です」


 とりあえず大嘘を言っておいた。 


「私を利用ってどういうことだ?」


「それは男にしか知らされていない国家機密がありまして、女に話したら殺される法律なんで答えられないんですよ」


 さらに嘘を重ねると、少し残念そうに、


「そうか……世の中のことはどうも疎くてな、そういうものがあるということは知らなかった。わかった!このことはもう聞かん」


 真面目な顔でそう言い放つ駒墨の顔に危うく噴出しそうになってしまった。


 どうやら駒墨は大分世間から離されて生活をしていたようだ。


 いわゆる箱入り娘か? 


もっとも能力のことを考えていると檻に入れられた獣といっったところだろうか……。


「それでは帰るとするか」


 看板の前を右に曲がって駒墨が駅の方へと歩いていく。 


何か買い物でもするんだろうか?


 駅の周辺はデパートから本屋、コンビニなどが立ち並んでいて、唯一この街で活気があるところなのだ。


当然ながらその周辺のマンションなどは俺の住んでいる地区などと比べればそれこそ天と地ほどに差がある。


 いくら宗家の使者とはいえ、そんなに金があるとは思えんのだが……。


「どうした……早く来なさい」


 促す駒墨に俺は返事ともうめきともつかない声を発して後をついていく。


駒墨は駅近くにあるデパートへと入っていった。


 なんだ、やはり帰る前に買い物をするつもりだったのか……。


 俺達は入り口を通り、やってきたエレベーターに乗りこむ。


中に入るとと駒墨が階を指定する前にポケットの中から財布を取り出す。


「それは払うときに出せばいいでしょう……だいいち俺は送るだけで買い物に付き合うとは……」


 俺の言葉は途中で止まる。


 駒墨が財布の中から取り出したのは鍵だった。 銀色にではなく黒く光るその鍵を右手に持って、左手を壁につける。


 瞬間、手がついた場所からじわりと黒いシミが広がって壁に穴を開けた。 いや穴というより最初からその行為自体が鍵であったかのように穴の開いた先には鍵穴が一つあり、その鍵穴に黒い鍵を差し込んで回す。


不意にモーター音がして、エレベーターが止まった。


「一体何なんですか?これは……」


「うん?この街の市長やら政治家達が色々するために秘密裏に作った場所だよ。数部屋あるらしいんだが、その部屋の一つを借りているのさ」

 とんでもないことを、何でもないことのように言いやがる。


先程消費者金融の看板の意味がわからないと首をひねっていたやつとは思えない。


「しかし……こんなもんを作っていたなんてね、今度恭介にでも聞いてみるかな?」


「何であいつに聞くのだ?」


「一応……この街の警察署の幹部なんでね、ああ見えて一応キャリア組らしいですよ」


「ああ……そういえば、そんなことを言っていたな」


 何の興味も無いような口調で返すと、駒墨は黙り込んでしまう。


 俺も何となく黙り込む。


 モーター音は相変わらず響いていて、エレベーターはがたがたと上に横にと動き続けていて、何か方向感覚が狂いそうだ。 


そもそも横にも動くなんて、どういう構造になっているんだ? この建物は……。


 やがてチーンという馴染みのある音を立ててエレベーターのドアが開く。


 開いた先はがらんとした空間で、教室三つくらいの広さに高い天井の上には照明がいくつもついてある。


家具やらを置いたらまるでドラマや漫画に出てくるような豪華な住居だ。


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