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0 かくして氷河期は来たれり
コラリウム王国暦335年、一人の女が後宮に入る。
美しい金の髪と紫の瞳を持つ彼女は瞬く間に国王の心を捉え、虜にした。
彼女は国王と互いに支え合い、後に黄金時代と呼ばれる平和な時代を作り上げる。
コラリウム王国暦342年、国が大きく傾く。
美しい金の髪と紫の瞳を持つ女との享楽に耽り、国王は政を疎かにした。
多くの民が飢餓に苦しむ中、二人は国費をいたずらに浪費し、贅の限りを尽くす。
コラリウム王国暦346年、女が捕らわれる。
国王を惑わし国を傾けたとして、女は国外へと追放された。
それを期に新たな王が立ち、国は再び栄えてゆく事になる。
この十一年が、「魔女の悪夢」と呼ばれる王国最大の危機である。
「傾国の魔女」と呼ばれたその女の名は、ヴィオレッタ・レオナルディ。
国を傾ける前は宮廷魔術師として絶大な信頼を得た「魔女」であった。
彼女の出現により、人に紛れて暮らしていた魔術師達は、人から遠ざけられるようになる。
かくして、魔術師達に就職氷河期が訪れたのだった――。
『コラリウム王国史24巻』より抜粋