第3話『ひとり』
はぁ‥‥はぁ‥‥‥。
俺は今工業地区に向かっている。龍との電話が途絶えたからだ。突然声が途絶え、そのあとに聞こえた不気味な声。なにか嫌な予感がした。これだけじゃない、もっとすごい‥‥‥。
「ったく、あいつどうしちまったんだ!!」
そうぼやいて龍にまた電話をかけようと携帯電話を手に取った瞬間だった。
きゃぁぁぁっっ‥‥!!!
突然の女性の悲鳴。その声に驚き足が止まってしまった。
「こっちか!?」
声の方向に行くとカバンが落ちていた。しかし誰もいない。いったい何が起きているのかわからなくなっていた。その時、悲鳴を聞きつけたのか男がやってきた。
「どうしたんだ!?」
「今悲鳴が聞こえて駆けつけたんですが、誰もいなくて‥‥。」
「じゃあ手分けして探そう。」
「えっあの‥‥!」
声をかけようとしたがすぐに男は角を曲がって行ってしまった。ちょっと話を聞こうと思ったのに‥‥。くっ やめろ!!
大きな声がすぐそこでした。さっきの男の人か?しかし角を曲がるとそこにはもう誰もいなかった。
「あれ‥‥今の人は?」
まさかこれがあの‥‥。とにかく今は龍を‥‥工業地域に向かった。
【ここからは2つの視点(つまり涼と龍)でお送りいたします。話が進むにつれ視点キャラクターは増えていきます。】
【龍】
涼と別れて少したったかな。
今工業地区の倉庫街にいる。
さっきやっと会えた人に話を聞いたら、倉庫街で不審な音がしたらしい。
それでここに急行。
‥‥しかしまあ相変わらずなんもない平凡な街で、夜になるとなんもないもんな。ここに来るまで、音がしたと思えばそこには猫がいたり、どこにでもある風景。俺は大人になったら絶対都会に行って大出世してみせる!‥‥なんて、ヤクやってるやつの言葉じゃないよな。俺、やめようかな、薬なんて‥‥。
この倉庫街は町の外に生産物を輸送するため、橋に繋がる大通り沿いにある。だから夜遅くてもそれなりに人はいるはずなんだが‥‥。
「‥‥‥静かだ」
誰もいない。俺を取り囲む不気味な静けさ、そして緊張。
時計を見ると既に11時。涼はどうなったかな?電話をかけてみる。
「涼か?何か見つかった?」
涼も何も見つけてなく、俺もなにも無かったことを伝えた。
《もう11時だからそろそろ帰らないか?》
「そうだな…よしっかえ………………」
急に頭がくらっとした。すると目の前が急に白くなった。貧血?いや、それとは別の感覚。ヤクの効果でも切れたのか‥‥?
そして、俺は聞いてはいけない声が聞こえた。
うぉぉぉ‥‥ぉぉっ!
【涼】
工業地域に着いた。見回しても誰もいない。
「龍!どこだ!!」
大声を出しても返事がない。もの静かで、それが不気味さを増していた。歩いても歩いても誰もいない。龍は一体どこに‥‥?
着いてから数分、人は誰もいなくて龍の姿も見えない。物音ひとつしない。おかしい‥‥いくら11時過ぎたからって誰もいないなんて。
誰も‥‥いない?
俺は嫌な予感がした。
もうすでにこの町には俺と龍‥‥いや、下手したら俺だけしかいないんじゃないか?
すると孤独の恐怖が全身に襲った。頭の中で1人パニクってた。
誰もいない。
いない。
どこにも。
ねえ、返事してよ。
誰か‥‥。
気がつくと住宅街で叫んでいた。誰かぁ!って。しかしその言葉に1人も返事をくれなかった。
その時だったかな、希望の光が見えたのは‥‥。
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