第1話『噂』
人の狂暴性。
パニック状態になるとその一面が露になることがある。
この物語は、ある町でおきた事件である。
今年で高2になった。もうすぐ受験の年を向かえるけど実感が湧かない。
やっと2年のクラスに慣れてきて、友人も増えてきた。
どちらかと言えば俺は社交的ではないほうで、今回は早く仲良くなれたほうだった。
これといって障害はなく、いい一学期だった。もうすぐ夏休み、今年は良い夏休みを過ごせそうだった。
夏休みに入って、既に半分以上が過ぎていた。
少しだけ宿題に追われる生活を送っていた。
「はぁ…もう。初めのうちに終わらせておけばよかった。」
まだ小学生と同じパターンだ。高校生として情けない。
ピロピロピロ……
携帯電話がなっている。
「はぃ、もしもし…」
《おう涼、俺だ。神乃木だ。》
「龍か、どうした?宿題なら…」
《実はさ、新しい合法ドラッグ手に入れたんだよ。》
「はっ?おまえまだ薬なんかを…」
神乃木 龍。
俺の幼馴染であり、親友だ。
いつからかドラッグに手を染めている。
ったく、いつからあんなバカになっちまったのか…。もちろん俺は薬なんてやってない。
《とにかくさ、今から家来いよ!》
「…薬はやんないぞ」
《わかってるから!ただ遊ぶだけだよ》
と、言うわけで俺は神乃木の家に向かった。
この町は鳥見町といって、比較的犯罪の少ない町ではある。
周りは川が囲んでいて、空からみれば孤島にしか見えない。
交通手段は橋の道路だけ。だから川が氾濫した時は出入りすることができなくなる。
神乃木の家は俺の家から数歩のところにあり、すんなり行ける。だから電話なんて本来必要ないのだ。
「今日はどうしたんだ?呼ぶなんて珍しいじゃないか。」
「実はさ、最近こんな噂を聞いたんだ。」
「唐突だな」
「いいから聞けって」
龍が言うことは次のことだ。
真夜中に町を叫びながら歩く男がいて、そいつに会うと、会った人は行方不明になってしまう。
しかし、次の日の真夜中に、その男の声と同時に行方不明になった人の声も聞こえるという。
しかし、その叫び声をあげている人に会うことが難しく、ただ声が聞こえるだけだそうだ。
「なっ?気にならないか?」
「気になるって…そんなのただの噂だろ?
そんなのがこの町に…」
「この町の話だから言ってるんじゃないか。」
「だけどさ、そんな叫び声なんて一度も聞いたことないぞ?」
「あぁ、俺も実際は聞いたことがない。」
「………は?」
「だからこれから探しに行くんだよ!」
「…おまえなぁ…もう俺ら高2だぞ?そんな幼稚なこと…」
「もしかしたら犯罪かもしれないんだぜ?犯人捕まえたらこの町のヒーローに…」
「あぁ、バカには付き合ってられん。帰る」
「ち、ちょっと待てよ!」
話を聞いていたがバカバカしくなってきたので帰ってきてしまった。
しかし、あの話は本当なのだろうか?第一声なんて聞いたことないし。
この時は別に気にしていなかった。この時は…。
第2話へ
今回小説を書いたのが初めてです。何か不備がありましたら評価のほうで報告よろしくお願いします。