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【幻想譚】彼岸花の池|雪の日、神社で見つけた赤い花

作者: 霧子ノア
掲載日:2026/06/21

雪が積もった通りを歩いていた。

今日も主人と神社で待ち合わせ。


その神社は石段がたくさんある高ーい場所。

彼女はいつも通り上の方に見える鳥居をジトリと見つめる。


(はー。毎回毎回、どうしてこんなに石段があるんだよ〜。

まぁ、登る度に石段の数変わってたら怖いんだけど)


せっせと足元だけ見ながら一段一段と登ってゆく。

途中でちらりと見上げるが、石段はまだまだ続く。


「はぁ〜、あと半分くらいかな……」


そう呟きながら、いつもは見ない横の竹藪に、ふと目を止める。

そこには、1本の赤い花。

「……花?」


鳥居を見上げ少し悩む。

「……少し待たせちゃえ」

右の人差し指を曲げて唇に添えくすりと笑う。


赤い花が見える竹藪に、そっと分け入る。

「あっ……」

彼女はびくりと止まり、視線を落とす。

「やっちゃった……」

足元を見て、ぺろっと舌を出す。


水たまりか、足元は水浸し。

足をそっと抜こうと右足を水から上げる。


「うわっ」

体がよろめき前のめり。

「あっぶなぁ」

左手を胸に当て、息を吐きながら、前を見る。

そこには見渡す限りの彼岸花。


「わ……ぁ……」

(ここ、池?)


つま先で何度かつんつんと、池の底をつついてみる。

どうやら池はかなり浅い。

「大丈夫そう、だね……」

水の中に足を入れたまま、ゆっくりと足を進める。


池の真ん中近くまでそっと歩くと、足を止める。

その花たちは小さなまぁるい池を囲んでいた。

自分を囲むような一面の彼岸花。

「きれい……」

しばらくその光景にうっとりする。


「あっ、主人待たせてるんだった!」

ハッとし、腕時計をちらりと見つめ、もと来た道に振り返る。


その時、ぐにゃりと視界が歪み、体がふわりと傾きかける。

「えっ?」

一面の彼岸花が斜めに見え、思わず池の中でしゃがみ込む。


しかし、視界は斜めになってゆく。

池は、彼岸花とともに傾いてゆく。

彼女は目を強くつぶったまま肩を震わせる。


しばらくして、そっと目を開くと、左右には座席が並んでいた。


「……え?」

彼女はゆっくりと立ち上がり、周りを見つめる。

そこには、何かを待つかのように、何人かの人が無言のまままっすぐ前を見つめていた。

彼らは一言も喋ることなく、膝の上に握った拳を置いている。


彼女は他人事のようにぼやりと見つめ続ける。


「あ……帰ら、なきゃ……」


座席の前を見つめると、カーテンのかかった出入り口のようなものがあった。

彼女は吸い寄せられるかのように、そこへ進む。

「……帰らな、きゃ……」

呟きながら、カーテンをそっと上げる。


そこには、いつもの石段が続いていた。


彼女は石段の上の鳥居を見上げる。

そして、そっと後ろを、振り向いた。


竹藪には、一本の赤い花が、ひっそりと咲いていた。



本文:霧子ノア本人作


※本作は、noteにも掲載しています。


主掲載先はアルファポリスです。

『静かな悪戯』本編は、2026年8月1日よりアルファポリスにて掲載開始予定です。


アルファポリス作者ページ:

https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/753708856


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