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わたくしだって泣くふりくらいできますわ 〜婚約破棄された転生令嬢は人目を味方につける〜  作者: 紡里


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3/3

めげない――でも、へこむ

 さて、この世界はまだ女性が独り立ちできない仕組みなので、新たなご縁が必要だ。

 女性に免疫がない理系男子ならぬ、魔術オタクのご令息にターゲットを絞ってみようか。

 もしかしたら、溺愛生活が待っているかもしれない。


 実は、ご縁に心当たりがあるのよね。

 お友達が「お兄様が研究にのめり込んで困ってしまう」と言っていたから、近いうちに紹介してもらおう。

 こだわりが強すぎたり、常識が違いすぎたりして気が合わない可能性もあるけれど、それは普通のお見合いも同じことだし。



 社交界で理想的な淑女であることに拘らず、「それなりに幸せ」を目指すなら、いくらでも道は開けるのだ。

 逞しく、生き抜いてやる。




 とはいえ、二回も婚約破棄された私。

 前世で言うところの、バツ二の扱いになる。気にしない人は気にしないけど、それだけでシャットアウトされることもある。


 オタク君が潔癖症でないことを祈ろう。



 だいたいさぁ、役に立たない前世の記憶なんか、どうしろっていうのよ。


 夫唱婦随の世界で、独立独歩の女なんか浮きまくる。

 昔の女傑みたいに、「戦って権利を獲得する」なんて声高に言えるほど、志が高いわけじゃない。


 本当に、自分らしく生きたいだけなんだよ。

 まあ、前世でも自分らしく生きるというのは難しくて、実現している人なんて滅多にいなかったけど。

 それでも納得できる生き方を見つけたいよね。




 夕食の場で、父にため息を吐かれた。

 前回の婚約者は、選んだ父の目が節穴だった。だけど今回は思春期で、彼がおかしくなってしまったのだ。仕方ない。

 可愛い泣き虫が、いきがって浮気三昧になるなんて予想できないよ。


「父上のせいじゃありませんよ?」

 私は優しく言ってあげた。


「そんなことは考えていない」


 そう言われると腹が立つな。

 父の人脈がろくでもないんじゃないですか、と憎まれ口を叩きたいところをぐっと飲み込む。


「お前の性格と将来のことで頭が痛いのだ」


 あら、怒られた。


「二十二歳までに相手を見つけますので、それまでお待ちいただけませんか。

 父上もまだまだお元気ですし。

 見つからなかったら修道院に参りますので、養子でも取ってください」


 こちらの世界では、安全に出産できる期間が短い。だから、結婚適齢期が早いのだ。


「お前はまた薄情なことを言う」

 父がワインに手を伸ばした。


 母は、我関せずで食事を進めている。

 同性だからこそ、私がどうしようもないことを悟っているようだ。

 というか……一度大げんかをして、「分かりあえない」と分かりあった。それ以来、母は何も言わない。

 受け入れてくれたのか、説得を諦めたのか――。



 だって、家門が大事とか言われてもピンと来ないんだもん。

 自分を犠牲にしてまで守りたいとは……って、思っちゃうの。本当に、それはごめん。

 貴族として領民の税金で生活しているのに、貴族に馴染めてなくて。


 でも領地返還したら国が預かってくれる。領民にはあまり影響ないはず。


 だから、あとは名誉とかご先祖様がとか、そういう話なんだよね。

 前世が先祖代々の大金持ちだったら、理解できたのだろうか。


 ちょっと待って。

 家臣は……再就職頑張ってと、応援する?

 転職は前世の日本より厳しいのかな。厳しいよね、路頭に迷っちゃうよね。

 じゃあ、そうならないよう養子を頑張って探すか。


 いやいや、その前に婿を探せってば。――いつまでも現実逃避していちゃ駄目よね。



 はぁ~、ちょっと疲れた。


 私は、この世界にいまいち馴染めていない。

 もう、この年まで来たら、一生違和感を抱えたままなのだろう。


 私の変わったところも、目をキラキラさせて見ていた少年――元婚約者なら、呆れながらも受け入れてくれていたんだけどな。

 都会の寮生活ですれちゃったね。ぐすん。


 どこかに同じような転生者がいれば、話が早いのに。

 探しに行こうかな。

 婿を探して三千里……なんてね。


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