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二度目の恋は幸せに  作者: 木蓮


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 シェリルは悩んでいた。

 ここ1週間、研究所で新しい魔道具の仕上げにとりかかっているらしいアーノルドからまったく連絡がこない。

 まめな彼は仕事が忙しくても2日に1回は短い走り書きを送ってきていたのにどうしたのだろうか。母やアナベルは「そのうち連絡がくるわよ」と言うけれども何となく嫌な予感がしてそわそわする。

 シェリルは18歳になり、1ヶ月後にアーノルドと結婚する。

 アーノルドは結婚後ラスカ伯爵が持つ男爵位を継ぐ。彼は爵位は下がるが今までと変わらない生活を送れると約束してくれたが、シェリルとしてはアーノルドの奥さんになって同じ家に住んで毎日会えるのがうれしい。もちろん夢見るだけでなく、魔導具研究者で男爵の妻としてアーノルドを支えるべく、伯母のラスカ夫人や母にいろいろと教わっている。

 これまでが順調すぎてちょっとのことが不安になっているのだろう。そう自分を抑えていたが1週間が限界で。研究所に手紙を出そうとするとメッセージカードが送られてきた。差出人は副所長ことコーディだった。アーノルド以上に忙しいだろう彼女がなぜ自分に? と不思議に思ったシェリルは目をくわっと見開いた。

『ラスカのことでシェリル嬢の力を借りたい』


 *****


「やあ、シェリル嬢。急に呼び出してすまないな」

「お久しぶりですコーディ様。アーノルドがいつもお世話になっています」


 王城でも銀の仮面を着けたコーディは、今日はローブの代わりに乗馬服のようなジャケットとフリル付きのブラウスにズボン、大きなリボンがついた帽子を被っている。気品と威厳がある彼女が着るとまるで王妃つきの女性騎士のようでかっこいい。

 シェリルが挨拶を述べるとコーディは口元をほころばせた。


「ふふっ、しばらく会わないうちにシェリル嬢も夫に寄り添う夫人の顔になったな。結婚式は来月だったか」

「はい、そうです」

「そうか、それは楽しみだな。私としてはぜひ君たちの結婚式を祝いたかったんだが、非常に残念なことに猛反対されて参加できないんだ。ラスカには結婚祝いに1月の休暇を与えてあるから、気が向いた時に顔を見せに来てくれ」

「はいっ。ありがとうございます、コーディ様!! 楽しみにしていますねっ」

「うんうん、いつでも何度でも楽しみに待っているぞ。……さて、本題に入ろうか」


 機嫌よくうなずいたコーディが真剣な声音を出す。一転して緊迫した空気にシェリルはごくりと息を呑んだ。


「実は、夫に頼まれて作っていた触れているだけで疲れがとれる魔道具”いやしてくん”の試作品が完成したのだが。

 これが効果はあるんだが、時々深刻な動作不良が出ることがあって困っているんだ。

 というのも、協力者の97%と私の夫とエマリー伯爵は付与している効果のとおり『疲れや身体の痛みがとれた、これで帰って我が子と孫娘と遊べる!!』と喜んでいるのだが。

 効果が出すぎたのか一部で妙なことを言い出す者が出てなあ。

『この子のおかげで理想の恋人ができました、夢の中で!』とか『この子のおかげでまともな人間生活を送れるようになりました、恩人です!』と”いやしてくん”の効果とはまったく関係のないことを言い出して『実験が終わったらこの子を我が家に養子にください!!!』とそれは熱心に欲しがっているんだ」

「そ、それは大変ですね……」

「ああ、大変だ。で、そんな精神に深刻な悪影響をおよぼす魔道具を作るわけにはいかないと表向きは廃棄したことにしたんだが、ちょうど良いことを思いついてな。ここ1週間ほどラスカを含めた口の堅い者たちに密かに試してもらっているんだ。ラスカの帰りを待つシェリル嬢には心配をかけてすまないな」

「なるほど。……あ、いえ。私こそ忙しい中、お気遣いのメッセージをいただきありがとうございます」


 それでアーノルドは連絡してこなかったのか。母と姉の言う通り待っていれば良かったのに、1人でやきもきして上司のコーディにまで心配をかけて恥ずかしくて申し訳なくなる。コーディは姉のようににこにこと笑う。


「ふふふ、そんなことないよ。愛する夫が気になるのは当然さ。……ということでラスカのところへ行って、ついでに”いやしてくん”を使ってみないか?」

「もちろんですっ、ぜひ連れて行ってください!! アルったらそんなすごい魔道具を1人占めするなんてずるい!! 私も見に行って使いたいですっ!!!」


 コーディは桜色の唇をにんまりと歪めた。そうするといつもは凛とした彼女がいたずらっ子のように見える。


「くふふふ、シェリル嬢は研究熱心だな。その才能は実に素晴らしい、結婚後もそのままでいてくれ。……では、行こうか」


 どこか含みのあるコーディの言葉に内心首を傾げつつも、彼女に案内されてシェリルは研究所の奥深くに入って行った。


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