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ランダムワールド  作者: チャーキー&ニオブ
イニティウム編
3/3

登竜門 壱

登竜門シリーズはランダムワールドに登場する「とあるキャラ」の外伝です。

「君には無理だよ。」


 いつも否定されていた。ずっと西にある大陸の魔法学校に行ってみたいと思っていた。俺がまだ小さかった頃、世界中を昔旅した母親がその存在を俺に教えてくれた。その学校では魔法だけではなく剣術やこの世界の理についても知ることができる。俺の名は桐乃瀬 竜といった。「竜のように力強く賢い立派な武士になってほしい」という願いから付けられたそうだ。だがそんな親の期待、今はどうだっていい。母親はもう変わってしまったんだ。

 師範に否定された。才能に恵まれなかった。剣術道場に数年通っていたが、他のやつに勝てたことがなかった。そして「才能がない」と言われ見放された。そして俺の夢を語ると馬鹿馬鹿しいと言われた。

 友に否定された。彼は優しくて間違いなく「善人」だ。だからこそ俺に言った。「やめといたほうがいい」と。彼ははっきりとは言わなかったが、俺にそこまで行動力がないと分かっていたのだろう。

 親からも否定された。非現実的なことなんか追わずに武士としての仕事を全うしろと言われた。家はそこそこ名のある家系でもあり、それと同時に古臭いしきたりに従っていた。

 そして幕府に否定された。数年前、幕府は「自国の文化を保護する」という名目で鎖国を始めた。庶民たちは外の世界に出ることを制限され、幕府の檻の中に入れられた。

 それでも諦めなかった。必ず俺を否定した奴ら全員を見返してやると心に誓った。それが俺の旅の始まりだ。


 いよいよ十五歳になり、決心した。藩校に毎日通いながらこんなとこすぐにでも抜け出してやると思っていた。置き手紙を書き、家を後にした。そして少々の数枚の銭・おにぎりなどの食べ物・竹筒の水筒・火おこしのための火打石・火打金・着替え・薬・そして日記などの一式を風呂敷に包んだ。打刀と脇差は少々長く邪魔になりそうだったが、護身用として持って行った。

 出島を日々観察していたが、大晦日の今日は警備が手薄になる。時は亥の下刻。誰も彼も寝静まり、出島の門番もうとうとしていた。俺は出島に架かる橋をゆっくり渡った。この暗さなら俺みたいな小柄なやつを見つけて追うのは至難の業だ。だが念のために門番は気絶させておくことにした。俺はこの日のために暗闇で眼を慣らす練習をしていた。持っていた刀のみねを門番の首にすばやく当てた。普通はこれは手刀でやるらしいが、できる気がしなかったため、峰打ちでやった。が、うまくいかなかった。門番は我に返り、刀を構えた。

「誰だっ!曲者かっ!」

  門番はまだ目が慣れていないようで、きょろきょろしていた。どうするか。増援を呼ばれる前に仕留めなければならない。といっても無駄な殺生は絶対にだめだ。というか、最近刀を研いでいないためだいぶ切れ味は悪い。そう考えている内に、門番も目が慣れてきたようでこちらに切り掛かってきた。

「ただの餓鬼が!容赦はせんぞ!」

「うわっ!」

 道場の時とは違う。失敗したら死ぬ。まさに真剣勝負だ。咄嗟に避けたが、遅れていたら斬られていた。本当に子供に向かっての容赦がない。俺は刀の柄を門番に向け、体全体でぶつかっていった。思いついた方法がこれしかなかった。柄は木でできているため非常に堅い。体格差がちょうどよかったのか、柄はちょうど門番の腹にぶつかった。また、運の良いことにこの門番はまともな鎧を身につけていなかったため、門番はよろけて倒れた。流石にこれは痛手だったようで、気を失っていた。


 出島の門をくぐった。波は石垣に静かに打ちつけていた。奥の方を見ると異国の帆船が止まっていた。夜な夜な荷物を積んでいる異人も一緒にいた。恐らくこれが大陸へ向かう船で間違いないだろう。船から持ち出された特産品や異人の顔の特徴からそう確信した。そうじゃないにしろ外の世界に出られるのは変わりない。東の方に向かってもそこから別の船に乗り換えればいい。幕府の檻から脱出するよりかはよっぽど簡単だ。あとはどうやって忍び込むか。

 近くにちょうどいい大きさの樽があった。恐らく船に運び込まれるものだろう。中には茶葉が入っていたが、小柄な俺なら余裕で入れる大きさだ。ただし出た時に茶葉の匂いが凄そうだが。人が来る気配を感じたため、すばやく樽の中に入り込んだ。刀は斜めにしたらぎりぎり入った。蓋を開けられたらおしまいだがそうじゃなければ大成功だ。

「この樽なんか重いな。」

「茶葉だよ茶葉。気にすんな。」

 異人の会話が聞こえた。母親の部屋の本棚にあった本で大陸の言語については勉強済みだ。そして突然ふわっとした感じがした。恐らく持ち上げられたのだろう。まもなく樽に衝撃が加わった。船に積まれたのだろうか。それにしても船の上はかなり揺れていた。やがて人の足音がなくなったため、蓋を少し開けて外を見た。どうやら船の倉庫に入れられたようだ。他に人もいない。俺は完全に樽から出て、倉庫の外に耳を澄ませた。

「なんでわざわざこんな頑丈な鍵をかけるんだよ?」

「泥棒が入ったらどうするんだよ!船が港に到着するまで絶対に開けるな。」

 倉庫は船が港に着くまでずっと鍵をかけられるということだ。牢屋に入れられているようだが、そっちの方が案外好都合かもしれない。そして船は出発した。結構待ったが外が薄明るくなってきた頃合いだっため、明け六つぐらいだろう。倉庫の中の乾いた茶の匂いには少し潮の香りも混じっていた。


 もう後戻りはできないのだろう。だが幕府の支配から脱出することができるのだからいいだろう。いよいよ俺の大陸への旅が始まった。

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― 新着の感想 ―
一章と二章のよりこっちのほうがなんかうまくね?
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