第一章 冒険者になった
草原を少し歩くとポツンと家が建っていた。その家の庭に水色の髪の少女と青い髪の花壇の花に水をやっている青年がいた。
レジガーはその二人に話しかける。
「すみません」
二人はこちらを向き、少し沈黙した。が、数秒経って少女が「なんですか?」と聞いた。レジガーは自分達の名前を言うと、二人の名前とどんなモンスターがいるか、この辺りに街があるかを聞き、何があったかをありのままに話した。
「私の名前はシャン。こっちは兄のサトル。ここから一番近い街は…」
シャンは家に戻ると少し古い地図を持って出てきた。その少し黄色くなった紙の地図を広げ、指をさした。
「ここの首都アレスっていう街だけかな。そうそう、二人ともここのお金は持ってないでしょ?お金稼ぎなら冒険者がいいよ。私もやってるから」
「兄としては常に死と隣り合わせな仕事はやめてほしいんだけどね」
シャンはライトと同じくらいの年齢と思われる。そんな十数歳の子がモンスターを討伐するのか?とレジガーは思った。
「安心して!薬草採取とかあるし、ランダムワールドランクによってオススメのレベルのモンスターが出るし」
「ランダムワールドランクって何?」
ライトは不思議そうに首を傾ける。
「ランダムワールドランクっていうのはね、自分の実力をEからSSSまでで決めるの。RWRって呼ばれてるよ」
とりあえずレジガーはライトに冒険者登録させることにした。レジガーとライトはシャンとサトルに感謝し、街に向かおうとした。
「ちょっと待ったァ!」
シャンが大声で叫ぶ。
「冒険者になるなら私もついていくよ。先輩として後輩に色々教えないといけないからね」
レジガーはそれに反応するように言う。
「なら俺はいらないな」
こうして2人で首都アレスに向かうことにした。レジガーはサトルと留守番だ。
首都アレスには想像よりも人がいた。その人々の大半は冒険者である。首都アレスの中心には英雄である「アレス」の像が立っている。アレスには魔王を倒し英雄となった、という伝説が残っており、冒険者の街と呼ばれるほど冒険者がいる。
ライトはシャンに導かれ冒険者ギルドに到着した。シャンは人混みの中ライトの手を引っ張って受付に向かう。
「ルルさん!冒険者になりたいって人を連れてきました!」
シャンは慣れたように受付嬢に声をかける。
「シャンちゃん!おひさ〜!で、そのなりたい人はそこの女の子?」
「そうだよ!ライトっていう子だよ!登録よろしく!」
ルルは冒険者の証であるカードを渡した。
「・・・・・・」
ルルは何かを小声で言うと冒険者のすることを説明した。
「そこの掲示板に紙があるでしょ?その紙には真ん中に依頼内容、右下に対応ランクが書いてあるから。ちなみに報酬はギルドからの報酬と本人からの報酬があるよ。まず一つ依頼を済ませてみよう。ライトちゃんはEランクだからそこの薬草採取とか害獣駆除とかがオススメだよ。ちなみに自分のランクより高いランクの依頼に挑戦していいけど命の補償はされないよ。あとそういうことして死ぬ人を減らすために高いランクの依頼をしても飛び級とかはないようにしてるよ。それじゃ、初めての依頼、頑張れ!」
ライトはシャンと掲示板に向かった。ライトはラットを駆除する依頼を初めての依頼として選んだ。
二人は依頼場所に向かう。依頼者は小さな村の農家だった。
「ワシの依頼を受けてくれたのですか?ありがとうございます。内容は書いてあった通り畑の食べ物を食べるラットを駆除してほしいのです。いくらネズミみたいでもワシらでは勝てないのです。ワシからの報酬はここで育った新鮮な野菜などです」
ライトとシャンはラットがよく出るという場所に案内された。そこにはすでに30匹以上はラットがおり、農作物を食い荒らしていた。二人は攻撃の体制に入る。
ラットがこちらに気付き、飛びついてきた。シャンはライトの前で大剣を振り回しラットを倒している。ライトも負けまいと水晶のついた木の杖を掲げ、大量の電撃を飛ばした。そうこうしているうちにラットはたったの一匹になってしまった。ライトがとどめを刺そうとすると、シャンが止めた。
「ライト。ラットがこれから来ないようにしたいんだから、一匹残して危険だって伝えさせるんだよ」
ラットは巣の方向へ走って行った。二人は農家のおじいさんに新鮮なトウモロコシやキャベツをもらうとギルドへ帰っていった。ギルドではルルが待っていた。
「どうだった?初めての依頼。意外に簡単だったでしょ?」
ライトはルルから報酬金の10Gをもらった。
「まだお昼だし、もう一つ依頼受けてみたら?」
ルルはライトとシャンにそう提案した。二人は少し悩んだが、言われた通りもう一つ依頼を受けてみることにした。
とは言ったものの、さっきの戦闘でかなり体力を消耗したのでできるだけ楽な仕事がいいと考え、掲示板から薬草採取と書かれた依頼の紙を取り、採取ポイントへ向かっていった。
二人は目的地に到着すると早速草を抜き始めた。これが思ったより難しく、何種類もの草の中で1種類の薬草を取るのだ。幸い、薬草の見た目はイニティウムの薬草と同じなのでまだ分かる。
ゆっくりと着実に薬草を集め、依頼の量の半分まで溜まった時だった。
「助けてくれぇ!」
ライトとシャンは悲鳴の方を向く。そこには二、三十歳くらいの男性がいた。男性はこちらの方に走ってきていた。
男性はライトのいる場所に到着するとライトの手を掴んで言った。
「君たち冒険者だろ?助けてくれ!」
二人は顔を見合わせ少し黙ったが、男性の話を聞くことにした。
「俺の名前はコヒー。ただの村人だ。俺の村に化け物が現れたんだ!黒い狼みたいなので目が赤かった!昼だったからよく目立ってたよ!でも、外の奴らは誰一人気づかなかったんだよ!」
ライトはそのモンスターに聞き覚えがある気がした。
「もちろんタダでとは言わない。どうか俺の村を助けてくれ!」
コヒーはライトに対して土下座した。シャンは少し引いていたがライトは依頼を受けることにした。
ライトとシャンはコヒーの言ってた村に到着した。家は壊れ、死体は一部足や手が無くなって転がっている。化け物の姿はどこにもない。
その中で一人建物に挟まれているまだ意識のある男性がいた。ライトは走って助けに行った。シャンは歩いてライトについていった。ライトが建物の残骸を持ち上げようとしている時、突然ライトの横に三本の少し透明な爪が三つ現れた。ライトは気づいていない。シャンは本気でダッシュし爪の攻撃をカウンターする。爪は攻撃が終わると透明になっていった。そして次はシャンの背中に爪が現れた。シャンはその攻撃をギリギリで防いだ。そんなことが何回も繰り返されてゆき、もう日が沈みかけていた。
「ダメだ!これじゃこっちの体力が先に尽きる!」
シャンは足元を見る。そこには建物の窓だったであろうガラスとそれに反射した黒い羽毛に赤い目の狼が映っていた。シャンはそれを前にかざす。そこからは化け物の姿がはっきり見えた。
「そこだ!」
シャンはようやく反撃できた。シャンはライトに見えることを伝える。ライトは少し考えると手をポンと叩いた。
「ああ!鏡狼か!」
朝にシャンに聞いたどんなモンスターがいるかで大体はイニティウムと同じだった。それなら討伐法ももちろん分かる。
「シャン!そいつは目が弱点だ!透明だから敵に襲われず動きは退化して遅いはずだよ!」
「OK!」
シャンは鏡狼のひっかき攻撃を華麗に避けると近くの崩れた建物を足場にしてジャンプし、そのまま大剣を目に突き刺した。鏡狼は悲鳴をあげて振り払おうと揺れるが、その前に鏡狼の体力が尽きた。鏡狼は力尽きると急に姿を現した。シャンは鏡狼を慣れた手つきで解体していく。鏡狼のお腹の中からは赤い宝石が出てきた。これが鏡狼の核である。二人はコヒーの元へ戻り勝利を伝え夕日を見た。
「疲れたぁ〜」
ライトはそう言うと後ろを向いた。そこにはまだ取りきれてない薬草が沢山あった。
「あー!薬草採取ー!!」
二人はまるで世界の終わりのような顔をした。コヒーがライトの肩をポンと叩く。
「これだけじゃ足りないが俺も手伝うぜ!」
こうして三人は薬草採取を終えるとコヒーは村の復旧作業へ、ライトとシャンは冒険者ギルドへ向かった。




