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造物のアルス  作者: おのい えな


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85/95

第85話

前回84話を間違って86話の内容で投稿してしまいました。

したがって、今回85話から見てくださる方は84話から見直してくださった方がいいかもしれません。

申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。

 セラがアルスを見て、ふっと目を細めた。


 納得するように、ゆっくりと頷く。


「お前がチグハグだったのもそのせいか」


「チグハグ?」


 聞き返すと、セラは指先で空中をなぞるようにしながら続けた。


「マナの感知は異常に高いくせに、操作はまるで子供の導士」


 ずばりと言われて、アルスは少しだけ視線をそらす。


「おそらく物心ついた頃には、この魔法の練習ばっかりやってたのか?」


「……そんなところです」


 短く答えて、曖昧に笑う。

 それ以上、詳しいことは濁した。


「もう一度、結晶を見せてくれないか?」


 促されて、アルスは掌に意識を向ける。


 土のマナを集め、ユベルの魔法の手順で、手のひらに小さな結晶を組み上げる。

 淡く土色に光るその欠片を、そっとセラに手渡した。


「ただのマナの塊にしか見えんな」


 セラは指先で結晶を転がしながら言う。


 導士としての目で、その内部を覗き込もうとするように。


「風の国の知り合いが言うには、設計図といっていました」


 アルスがそう言った瞬間、セラの反応が変わった。


「風の国は知っているのか!?」


 ぐい、と身を乗り出してくる。


「はい、論文を見て、実際に見て研究したいって言いにきたんです」


 エルネたちの顔を思い浮かべながら答える。


「なら、もう風の国ではこの魔法を使える者がいるって言うのか?」


 セラの声色が、わずかに低くなる。


 アルスは、エルネとノルンの姿を思い出した。


「条件付きになりますが、使えると思います」


「条件とは?」


「魔道具を補助として使ってるんです。ただ、まだ実用段階かはわかりません」


 あの屋上で見た装置や、ぎこちない起動の様子が脳裏に蘇る。


「まずいな……五環祭はもう直ぐだって言うのに」


 セラが、小さく舌打ちするように呟いた。


 アルスには、その言葉の意味がよく分からない。

 五環祭という単語だけが、耳に残る。


「それに、リュマだってすぐに使えるようになりましたよ」


 思い出して、ぽつりと付け足す。


「先生とみんなを一緒にするな。あの人は化け物の類だ」


「そうなんですか?」


 アルスが首を傾げると、セラは肩をすくめた。


「……あの人は正真正銘の天才だからな。才能だけで水の国のトップまで上り詰めた人だ」


「リュマって水の国の出身だったんですか?」


 自分の知識の穴に気づいて、アルスは目を瞬いた。


「なんだお前、先生のこと何も知らないんだな」


 セラにそう言われて、アルスはほんの少し肩を落とす。


 考えてみれば、確かにリュマの過去をほとんど知らなかった。


「それにしても酷い。先生はこのこと説明してくれれば、最初の誤解はなかったのに」


 セラが、半分本気、半分冗談のような口調でぼやく。


「使うの禁止されてましたし、そもそもセラさん聞く気無かったじゃないですか?」


 アルスは目を細めて言った。


 最初にユベルの魔法の話をしようとしたとき、セラが露骨に興味なさそうに流した場面を思い出す。


「うっ」


 図星を突かれたセラは、短く呻いて黙り込んだ。


 その様子がおかしくて、アルスは小さく息を漏らす。


「そうだ、もう一つのお願いは?」


 空気が少し和らいだところで、アルスが首を傾げる。


 さっき、セラが「二つある」と言っていた話の、もう一つのほうだ。


 セラはなぜか、急に目を逸らした。


 どこか気まずそうに頬をかき、視線を庭の隅にさまよわせる。


 恥ずかしそうなセラ。


「め、盟獣……」


 小声で、聞き取りづらいほどの声が落ちた。


「盟獣?」


 アルスが聞き返すと、セラは観念したようにため息をつく。


「お前らを見てると、盟獣が欲しくなったから、グラナード家に口聞きしてくれないか?」


 どうやら、ハルナに乗せてもらったりしているうちに、すっかり獣に心を奪われたらしい。


 土の導士として凛としていた、ついこの間までのもう一人の師匠の姿が、じわじわと崩れていく。


 そのギャップが、なんだかおかしい。


「後一個、お願い追加してもいい?」


 セラが、恐る恐るといった様子で付け足した。


「なんですか?」


 アルスが身を乗り出す。


「ユベルの魔法教えて?」


 あまりにもストレートな一言に、アルスは思わず天を仰いだ。


 ため息が出る。


 リュマとの約束と、目の前の師匠の期待とが、胸の中でぶつかり合う。


 そんなことを思いながらも、アルスはどう返事をするか、ゆっくりと言葉を探し始めた。

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