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最終話

おはようございます。最終話のお届けです。ブキターの秘密兵器で暗黒連合全滅?ジョーとエドゥの対決も決着が!緊張の最終話。どうかお楽しみに。


 「ファンタジー系5」

       (最終話)



         堀川士朗



暗黒連合大隊の無反動砲や曲射榴弾砲はタム屋の堅牢な外壁を次々と容赦なく削っていく……!

振動は店内に降り注がれる。


「こいつを使いな。店をやられちゃたまんねえからなっ!」


ブキター・ドルバッキは梁にあるキョンタムの肖像画の両目を同時にスイッチした。

すると店の奥の金庫から小型冷蔵庫のような箱がガシャンと出てきた。


「こいつは値が張る。虎の子の奥の手ウェポンだぜ!請求は北の国に回しておくからなっ!」


キラービー誘導弾……!

二階の鎧戸を開けて放つ。

5000匹のキラービー誘導弾は高速で飛翔し、暗黒連合の兵たちの頭をヘルメット越しに貫通していった!

脳の中で数秒間滞留し、次々と爆発して頭部を炸裂させていく!

人間花火。

ほんの数分間の間に暗黒連合大隊は壊滅した……。


やけに呆気なかった。

が、ひとつのオーバーテクノロジーにより膠着こうちゃくした戦況が一気に決着するのは得てしてリアルな戦場の姿なのかもしれない。

これは戦争だし、それ以下でもそれ以上の存在でもなかった。


タム屋の周囲には増援部隊を含めた暗黒連合大隊の5000余りの骸が横たわって死を満喫していた……。

動いているものはいない……。


ジョーは、ため息をついてソファーに座ろうとしているエドゥに対峙した。


「残るはあんた一人よ、エドゥ・カルリッシアン」

「何だ、まだやるのかい?俺には見切りの極意があるぜ」


ジョーは無言で、余裕綽々で嗤うエドゥに向けて先ず一発発射し、ゲアン弾のカートリッジを装填したもう一方の銃を後から発射させた。

最初に撃った弾よりも速くゲアン弾は一発目の弾の尻に当たり、弾丸の軌道を変えてエドゥの腹に命中した!

タイミングを狂わせ、エドゥの見切りを阻止して腹に一発食らわせたのだ。


「グフッ……まさか軌道を変えるとはな。そんな神業をよくも」

「二挺拳銃だから出来た芸当よ。ホヰップ!治して!」


妖精ホヰップはフワリと翔んでエドゥに近寄り、ホヰホヰホヰと念じる。

みるみる傷は塞がっていく。


「どうして……俺を助けた?」

「ここであんたを見殺しにしたら、あんたと同じ人間になってしまうからよ。大人しく一生反省しなさい。私は、ただあんたに分からせてやりたかっただけ」

「俺は……」


アパムが屋上から走って降りてきた。

半田を抱えている。


「ジョー助けてくれ!じいさんの命を救ってくれ!肺を撃たれちまってるんだ」

「分かったわ!ホヰップ!」


妖精ホヰップは半田の傷に向かってホヰホヰホヰと念じる。

すると半田の胸の傷がみるみる塞がっていく……!


「ありがとうジョー!じいさんは俺の大事な戦友なんだ」

「アパム……。この馬鹿野郎が」


半田は、少し恥ずかしそうに笑った。



………………。

一階のダイナー。

みな、戦闘後の食事は済ませたようだ。

ソファーに奥深く座ったアパムがスパスパと葉巻をふかしている。

吸いかけを傍らにいるジョーに渡し、ジョーも一口二口吸い込んで慣れない煙を吐き出す。

アパムがそれを見て笑いながら言った。


「ジョー、このチームは良いチームだったぜ。歴戦の勇士が集まっている。殺し屋ぞろいだ」

「私は……もう撃たなくても良いように撃っているの。もう殺さなくても良いように殺しているのよ」

「結果論だ。跡に残るのは死屍累々だぜ」

「それなら、それでも構わないわ。私が生きた証ならば」

「お前さんは真面目過ぎるぜ」

「私は、北の国の大魔王アルノ様に忠誠を捧げているだけ」

「あの大魔王様にか。250年間永遠16歳の少女」

「そうよ。永久永遠に16歳の」

「この後はどうする?本部のソーラー発電所を襲撃してボッケハラと暗黒連合を一網打尽にするか?」

「私はそこまでの使命は受けていない。もう充分よ。充分過ぎるほどのボディカウントよ。この戦争はまだ終わらないけど、私の個人的な復讐は終わった。分隊は本日付けで解散します」

「そうかい。ご苦労様、ジョー・ヴァンニー分隊長」

「私は北の国に帰って大魔王アルノ様にご報告するわ」

「好きにしな。俺はもう少しアリエにいるぜ。俺は傭兵会社エンダーから派遣でやって来てる。もうちょっと稼がなけりゃな。それに、じいさんが元気になるまでの世話もあるしな」

「あんたも。好きにして」

「プッ!またな。じいさんの命をありがとうよ、ジョー」

「またねアパム」


ジョー・ヴァンニーと妖精ホヰップの影が、荒野へと消える。

それをいつまでもアパムと半田が見送っている。

エドゥは撃たれたはずの、今はありもしない腹の傷を押さえて、ダイナーの天井のカラカラ回るバーフライを見つめている。



ジョーが空を見上げる。

見上げた先は無辺の月。

空にはふたつの青い月が早くも現れている。

青く燃える、ふたつの月が。



        THE END



   (2023年4月~5月執筆)



最後までご覧頂きありがとうございました。また少しお休みを頂き、新作を発表致しますので宜しくお願い致します!

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