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その勇者はバス停から異世界に旅立つ 〜休日から始まった異世界冒険譚〜  作者: たや
第四章 世界の狭間のオルトノ ミガレユノ編
70/72

ミラクル・ハイテンション

7/21


「これ!御所望のレクゥーリア!しっかりばっちり取ってきたわ!」


オルトノとの激闘から数時間ほど経つ。

外から見える景色はすっかり日が落ちかけている部屋の中でスノウはあの空間からオルトノを倒したことにより入手した緑に強く輝き続けるレクゥーリアをダディオが座る椅子の前の机にやや勢い強く置いた。


「ほう…こりゃ確かに」


それを右手に持つとしばし眺める。


「それにかなり質もいい。随分と苦労したのも頷ける」


ダディオの言葉通り昇る太陽の一行は戦闘によって服装が乱れ、怪我をしている団員もいる。

特にリント、スノウ、バルは顕著に。


「しっかりと受け取った。マリーナ、報酬だ。色を付けて丁重にお渡ししろ」


「承知いたしました。ではどうぞこちらへ」


すぐ横に佇んでいたマリーナが部屋の扉を開けリント達を別室へと連れ出し、案内された部屋の扉の鍵を開けた。

そこには3メートルをゆうに超える金庫の扉が重厚に構えており貴重品などを入れるにはとても頼もしく感じる。


「なんだこりゃ…」

「でっけえなおい」


少年心をくすぐったのかリントとバルが目を輝かせる。

不思議とマリーナが何もせずとも金庫が開くと更にヒートアップ。


「「うおお!」」


そして金庫の中の大量のお金や宝石、なんか高そうな鎧とかが見えてくるともっと更にヒートアップ。


「「うおおおおおおお!!」」


なおスノウ達女子陣はそれを冷めた目で見ていた。


「少々お待ちを」


マリーナが金庫の中へ入ると用意していた麻袋の中へ大量のお金(エル)を詰め込んでいるが目で見る限り予定の500万エルを超える量が入っているように見える。


「750万エルをこの中にお入れいたしました。ご確認ください」


スノウが代表として麻袋を手にするが正直750枚の金貨は数えていられないので手にした重さで確認をする。

それにマリーナであれば自分たちを欺く様なことはしないという信頼もあった。


「確かに。1.5倍も貰っちゃ疑うのも申し訳_」


ふと金庫の中に飾られている小さな石の付いた錆びたネックレスにスノウの視線が奪われた。

特に美しいとか、気品があるとかそういったわけでもないのに不思議と視線が離せない。


「__ま__ウ様_____スノウ様?」


マリーナの複数の声掛けで意識をもとに戻すことに成功した。


「…あ、ごめんなさい」


「もしかして…あのネックレスに見覚えが?」


「え?いや、そういうわけじゃ…」


スノウ自身も困惑をしているがマリーナが再び金庫に入り件のネックレスを手に取りスノウの首に優しく着けた。

近くで見ると微かだが優しい輝きを感じこのままでも上質なアクセサリーとして通用するだろう。


「似合ってんじゃん。サビとかとりゃもっと綺麗になるんじゃね?」

「むしろサビこそアクセントになってるかも!この宝石に刻まれてる紋章みたいなのもいい感じ!」


近くで見ていたリントとアヤネが率直な感想を述べるとマリーナがネックレスについて語り始める。


「これは300年ほど前に滅びた亡国の跡地付近から発掘されたネックレスだったと聞いています。一説にはどうやら()()()の力を秘めている__」

「「時渡り!?」」


その場にいるマリーナ以外の全員が驚愕の表情を見せるがすぐに訂正が入る。


「と、とはいえ。類似品が多くの数発掘されているので当時一般的に流通していたアクセサリーという説が現在では一般化していますね。ですが素材に上質な宝石を使用していますのでそれなりの価値はあるかと」


「そんな物受け取れないわ!こんなにお金も貰っちゃったんだもの!」


「構いませんよ。これも何かの運命でしょう。このままを浴びないよりかはスノウ様に預けていたほうがこのネックレスも喜ぶでしょう」


「それなら…大事にするわ」


「ええ。今日はもう遅いですしお部屋を用意していますのでどうぞお体をお休めください。お食事もとびきり豪勢なものをご用意いたしますのでご期待ください」




一人一室の来客部屋へと案内されたが腹部を刺されているスノウと魔力枯渇を起こしたリントの2人はアレタが看病しやすいように同じ部屋に収容。


オルトノ戦後に応急処置を行ってはいるもののあくまで簡易的な処置。

荷車にあった様々な薬草や道具などを用いて落ち着いた状況で治療に専念できる。


「まったく。リントくんだけじゃなくてスノウちゃんまでこんな無茶なことして…」


傷口を氷で覆い止血していたスノウの無茶な行動にため息をつく。

巻いていた布を切り取り、新たに取り出した清潔な布に特性の薬を染み込ませて傷口を抑える。


「うっ…染みるぅ…」


「しばらくは絶対安静で戦闘も禁止。バルくんやアヤネちゃんに任せること」


「わかったわ…いたた…」


「それでリントくんは食後にこの薬を飲むこと。怪我はあんまりないようだから体力と魔力の回復に専念ね」


「おう!サンキュー!」


「少しでも体に異変を感じたらすぐに僕を呼んでね。隣の部屋でバルくんと一緒にいるからね」


ベッドの横にある少し小さな机に小瓶を置くとアレタは部屋を出た。


何を聞いていたのかリントは反射的にすぐさま小瓶の中の液体を飲み干すとスノウは怪訝な顔をしたが疲れていたのであえて無視。


「ぷっはぁー!そんなに美味しくない!!なんで?」


「薬だからでしょ。バカも休み休みにして」


「まあいいじゃん。案外バカのほうが楽しいぜ?」


「そうねそうよねそうですよねー。じゃあ私は少し寝るから食事の時間になったら起こして」


「ちょ、せっかく二人なんだから何か昔の話でも__」

「おやすみ」


布団を深く被りそう言い残すと何度話しかけても返答がないので完全に無視を決め込むつもりらしい。


「…俺も少し寝るか。スノウおやくかぁ……すぅ…」


よっぽど疲れ切っていたのかお休みを言い切る前に即座に睡眠に入ってしまった。


「………ッ~!!!」


一方その頃、布団を被りこんでいたスノウは今になってあの行動(魔力譲渡)を思い出し心のなかではのたうち回っていた。


(やっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったーーー!!!!)


魔力譲渡とはいえ外見上は接吻…キス!

しかも深くて大人の方の!!


というかそもそも魔力の受け渡しってお互いの信頼度っていうか好感度っていうか…好きの度合いっていうか…


そういうのが深くないと無駄…無事に成功したってことは…


リントが私のことを好きなのはもちろん知ってる。


じゃあ私って自分でも思ってるよりリントのことが


「好きなんだ…」


ベッドから起き上がりリントの顔を見る。

体は重たいはずなのに驚くほど軽く立ち上がれて、リントのベッドに腰を下ろした。


「…かわいい顔」


やさしく、花を愛でるようにリントの頬を撫でた。

そして自然とベッドに横たわって間近で眺める。


やや中性的な顔だが男らしく硬い肉体。

そしてどことなく初めて出会った10年前の幼い面影もある。


出来ることならしばしの間、誰にも横槍を刺されずにこうやって眺めていたい。


そう想いながらスノウは自分でも知らぬうちに意識を落とした。




(なんかすごいもの見ちゃってる!?)


食事の時間になっても部屋から出てこないリントとスノウを案じてアヤネが部屋の扉を叩くも返事がなかったので入室するとそこにはリントのベッドにて添い寝をするスノウの姿があった。


「とりあえず…スノウちゃん先起こしたほうがいいよね」


軽く体を揺さぶると眠りが浅かったのかすぐに起き上がると状況を察して顔を赤らめてただ一言。


「…他に誰かいる?」


「いないよ?」


「よかったぁ…」


焦ってベッドから降りるとアヤネから一つの言葉が出る。


「スノウちゃんってさ、凛斗くんのこと…好きなの?」


「すっ…!」


いつもは明るい声で話すアヤネが珍しくトーンを落としていた。

それに言葉が言葉だったので動揺してしまう。


「別に好きだなんて………!」


違う。

この言葉は嘘と照れ隠し。


今、アヤネが求めているのは自分の本心。


それを偽るのはアヤネにも、自分(スノウ)にも失礼だ。


「ごめんなさい。好きよ、私はリントの事が好き。もうこの気持ちは偽らない…一応隠すけど」


「…そっか」


かなり含みのありそうな返答で数秒だけ床を見ていた。


「…ご飯!もう出来てるって!」


一度俯いてからは切り替えたかのように明るい笑顔を見せる。


「えぇ。その前に…このバカ(リント)起こさないとね」


「ふふ、忘れてた!」


女にしか分かり得ぬ空気をよそに一人安らかに眠り続ける男はその後、かなり激しく起こされたようだった。



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