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その勇者はバス停から異世界に旅立つ 〜休日から始まった異世界冒険譚〜  作者: たや
第四章 世界の狭間のオルトノ ミガレユノ編
60/80

更なる金稼ぎ


3つに分かれてそれぞれ異なる難易度の依頼を受けた昇る太陽一行。


ギルドマスターのリント、新入りのバル、薬師のアレタはベリダバ山の麓、商人の交通ルートでもある場所に住み着いてしまったBランク魔獣の一つ目巨人(キュプロックス)討伐。


副ギルドマスターのスノウ、斥候のアヤネの2人は牧場の家畜に雪塊を落として傷つけてしまうEランク魔獣の雪落とし鳥(スノーフォールバード)の駆逐。


大工のアテラと仮加入のシフラは氷王鮭(アイスキングサーモン)の漁。


この中で一番早くミガレユノのギルド紹介場に戻ってきたのは鮭漁に出向いていたアテラとシフラだった。


「シフラがいてくれて助かったぜ。早く終わったから報酬も1割乗せてくれたし塩漬けまでおまけしてくれたからな」


「役に立ててうれしい。明日もやろう」


「そりゃ…リントに聞くか」


併設の食堂で飲み物を飲みつつ世間話をしながら他のメンバーの帰還を待っていると扉が大きな音を立てて開く。


その奥から姿を現したのは我らがギルドマスター達。

あまり疲弊した様子はなくかなり手短かつ労力をかけずに終わったと見える。


「お、アテラ達早いな」


窓口に行くまでに仲間の姿が見えたので少し逸れる。


「オマエらこそ。Bランクの魔物くらいお手のものってか」


「バルもいたからな。それにそこそこ大きいマナストーン残してくれたから助かるぜ」


「それはいいがそろそろ荷車に入らねえんじゃねえか」


アテラの指摘通り、マナストーンや魔獣の部位などは男子荷車に保管してある。


だが最近どんどんと荷物が圧迫してきているので男3人が川の字で寝るには少々狭い。


「ちょっとくらいそっちの方に預けてもいいだろ」


「オレは構わねえぜ。でも副団長がなんつーかな」


「ぐっ…文句言いそう」




そこから2時間後の夜が遅くなりかけた時間に、スノウとアヤネがかなり衣服を乱しながら紹介場の扉を開けた。


「ようスノウ、綾音。随分遅かったな」


「ほんっとうっよ!あのクソ鳥!!落とす雪の中に糞を混ぜてくるのよ!!!おまけに巣にたどり着いたら死にたくなるくらい臭いのよ!?」


「くさーい!」


何はともあれ昇る太陽の全員が大した怪我もなく無事に戻ってきた。


「さてと、じゃあ何か適当に食べて帰りますか」


報酬を受け取り疲弊した身体を休めるために食堂で何かしらの食事を取ろうするとかなり大きな音を立ててまた扉が開いた。


「おい…あれって…」

「あぁ、でもなんで…」


すると近くにいた冒険者達が紹介場を訪れた人に見覚えがあるのか場がかなり浮つく。


訪れた者は野蛮な装いが多いこの紹介場には似合わないタキシードに黒いハットを頭に被った低身長の老いた男とスタイルがかなりよろしい喪服に見える儚げなメイド服を着用した上品さを感じる付き人の女。


「ふうん。上品さがあるやつぁ少ねえな」


その男の声は聴いただけでどの様な立ち位置にいるかを理解できる。


「なぁアレ誰だ」


「分からない。僕も初めて見るよ」


小声でリントは横にいたアレタに聞くもアレタも知らないらしい。


「知ってる輩も多いと思うが、俺の名前はダディオ・ゴルゴード。横の付き人はマリーナだ」


ダディオと名乗った男は視線を集めながら様々な依頼票が貼られている掲示板まで進んだ。


「2000エル…5400エル…24600エル…どれもしけた金しか出さねえな…テメェら!」


ドスの効いた声でこの場にいる冒険者に語りかけた。


「ここにいるやつらは冒険者なんだろう?まさかこんなショボい金額の依頼で満足してるなんて言わねえよなぁ?」


野心が強く出た顔で怪しく笑う。


「俺に付いて来い。しばらくは冒険に専念できる様な金を俺がくれてやる。腕に自信があるやつはついてきな」


自信に満ち溢れた足取りでギルド紹介場を後にしたダディオ。


しかしその後ろについていく者は誰もいない。


「金持ちの道楽ね。趣味が悪いこと」


1人だけ舞い上がっているダディオの様子を見たスノウがきっぱりと断言。


「あんな怪しいのに着いていく人なんていないわ。私達は宿に帰りましょ………?」


横にいたリントがいない。


前にも、横にも、後ろにも、リントがいない。


ついでにバルもいない、アヤネもいない。


「おっさーん!俺強いよー!」

「おっさん!俺もつええ!」

「おじさーーーん!私もーーー!」


短絡思考回路3人組がものすんごい軽率にダディオの後を追っていた。


「待ちなさーーーい!!!!!このあんぽんたんども!!!!!!!!!!」




ダディオ・ゴルゴードの屋敷


「着いてきたのは若僧だけか」


案内された部屋には魔獣の剥製に高そうな酒、上質な革で造られたソファ、ハーモラルには珍しいガラス造りのインテリアなどが飾られている。


「それで!お金は!?」


「落ち着けやボウズ。まずは何の疑いもなく着いてきた事にゃ驚いたが…これはこれで面白え」


ちなみに豪華な部屋の佇まいからして、スノウ、アテラ、アレタのまともな思考の常識人組は気が気でない。


「なぁボウズ。おめえは()()()()()()ってもん知ってるか」

「知らない」


「そうか…レクゥーリアってのはな。平たく言いぁ生命力の塊だ」


「そうなの?マナストーンみたいなの?」


「本質的にはな。マナストーンがこの世界に()()()()()()()だとしたらレクゥーリアはこの世界が()()()()()だ。世界という強大な力が生み出すその石の生命力はマナストーンの比じゃねえ」


まるで子供が自分の好きなものを喋る様に手振りを交えてダディオは語った。


「俺はこのレクゥーリアが欲しい!心の底からなぁ!」


「そのレクゥーリアとやらは父さんから聞いた事があるな。なんでも、特別な条件を満たしたタイミングでしか現れない()()()()()にある物だってな」


ソファに腰掛けて寝ているように見えたバルが発言。


「ほう。詳しいじゃねえか赤い坊主」


「だがその狭間には強力な魔獣が巣食って、そいつを倒すとレクゥーリアに変わる。そうだったか?」


「そうだ。並大抵の冒険者じゃ太刀打ちできねえが…」


葉巻に火を着け、口に運び嗜みつつリント、バル、スノウの順に顔を見て煙と同時に言葉を吐く。


「黒い坊主に赤い坊主、白髪の嬢ちゃんの3人が力を合わせたら勝てるだろうなぁ」


「まじで!?じゃあやるやる!」

「バカ!即決してんじゃないわよ!」


目を輝かせるリントの頭を叩く。

その場にしゃがみ込んで頭を抱えるリントを置いといてスノウはダディオに詰め寄った。


「報酬とその…狭間…?っていう場所にいる魔獣の情報を開示して!話はそれから_」

「報酬は500万エルだ」

「やるわ。魔獣の情報を教えて」


「スノウちゃん!?」


ものすごい剣幕で詰め寄ったスノウだが掲示された金額の前に思考回路が切り替わって即決してしまったのでリントとバル同様、この件に我先にと首突っ込んだアヤネも突っ込んでしまった。


「お、おい!そんな簡単に受けちまっていいのかよ!アレタも何か言ってやれよ!」


見かねたアテラは唯一平常心を保っているであろう薬師のアレタに声を掛けるが


「500万エル…荷車を増やして作業場に…」


「くそ!金はここまで人を揺さぶるのか!!」


金の力は偉大らしい。


かくして、昇る太陽一行は高給につられてダディオの依頼を受けることに。


それが昇る太陽が初めてぶつかる最初の難関になるとはまだ知らなかった。






ちなみにシフラは終始、ぽけーっと剥製と見つめ合っていた事に誰も気付いていなかった。


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