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アヴェダレオの魔王様


相変わらず重い空気を醸し出す机だ。

横を見ても前を見ても人の顔は険しく殺気立っている。

今回は確かに自分に非があるものの、そもそも自分を上手く使えなかった上層部が悪いだろうと何度も思ってはいるものの実際口には出せない。


「して、貴様らにはどのような処罰を下そうか」


幾多の修羅場を潜り抜けた老齢の男性の声はとても重い。

直接身体に重しとして乗っかっているかと誤認する。


「申し訳ございません!今回の一件は僕が迂闊にリイゼから目を離してしまった事が全ての発端です!如何なる処罰も受け止めさせていただきます!」


自分の指示役として活動している先輩が張り詰めた顔で頭を下げる。


何やってんだろこの人


「地球に我ら(アヴェダレオ)が潜入できている事はもう少し伏せておきたかったが…ゲートの存在は割れていないだろうな?」

「は、はい!視界から消えた瞬間にこちらに戻りました!な、なので奴らはただ撤退したとしか感じてはいないと思われます!」

「ならよい。だが、貴様らにしかわからぬ事がある。貴様らが競り合った者共はどのように感じた?」

「は!私が戦闘を行った老父はかなりの強者だと感じました!」

「どの程度だ?」

「…以前、私が旅をしていた時、フロン・フロスト(凍てつく大陸亀)に遭遇した事があります…一瞥されただけでも死の感覚を体全体に焼きつかれ生を諦めた事があったのですが…」


何を躊躇ってるのか、言えばいいのに


「もしあの老父が本気を出せば再びこの身はそれを思い出したでしょう…」


()()()()はとても興味深そう。


「あのカメのガラクタ(フロン・フロスト)と同等かそれ以上…リイゼ。貴様の所見は」

「先輩の言うとおりあのジジババはかなり強いと思いますよ。あとワタシを殴った男の子はソコソコ。冒険者ランクで言ったらBはあるかなー。あとあと何故かセンタレアの直属魔法士もいたけど…あの子には負けないかなーって感じです」

「ふむ…そうか。もう下がって良い」


処罰を下すかと思えば意外や意外。

まさかのお咎めなし


「魔王様!よろしいのですか…!?」

「貴様らのその情報だけでも価値がある。それに遅かれ早かれ我々の存在は知られていただろう。ゲートの場所が割れていないのなら支障はない」


おー、人間の顔ってこんなはっきり血相変わるんだ


「近いうちに我が地球に赴かねばならぬな」


その発言でこの場に集っているアヴェダレオ軍の精鋭たちがざわつき始める。

魔王様がこのアヴェダレオから出る事はここ50年は前例のない事だからだ。


「私とリイゼは引き続き地球での調査を続けますか?」

「それには及ばん。ここからは魔獣を放す頻度を下げつつ調査を行う。貴様ら2人はハーモラルに渡った地球人の捜索だ」

「承知いたしました!」

「その地球人捕まえたらどうしますか?」

「殺すな、捕えろ。我の計画に必要な物だ。良いな?ヘルル、リイゼ…二度はないぞ」

「はっ!必ずや我が王に世界を!」

「はーい」


究極の異界融合体…

それを手に我は全ての世界を…



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