Part59 マジックワルツ
右正面爪、左下部突進、左上部爪、右側面尻尾、後方大木…蹴って上部へ移動する。左下部並びに側面爪
「ウィディ、ブースト」
光の獅子との接敵してから、およそ47秒経過。損傷部位は右腕肘下だけ。先制攻撃を入れたのち、迫り合いとなった。始めこそ押せていた。だが、この獅子はそこで終わらず、より速く、苛烈となった。38秒時点から大きな変化はない。コレがおそらく限界値。私のフルスピードよりほんの少し速く、反応速度もほぼ同じ、純粋なパワーでは劣っている…なおかつ、ダメ押しのように自動再生も私とそう変わらない。寧ろやつの方が優れている点の方が多い。こちらは魔法や魔術等々が使えるとはいえだ。発動ラグやそこに皆を割いたときのリスクを考えれば吊り合わない。現状、皆の協力もあり、あっちの速度にギリギリ対応可能だが、長持ちはしない…後方牙
「マニィレ、障壁」
コンマ数秒の足止めにはなる。一撃防げるだけでだいぶ違うから助かる。今はそれぞれに役割がある…その他にも身体機能補助をさせたりとしているが、コレで攻撃の余裕がないのだ。勝ち筋は…ゆっくりやるしかないのかもしれない…
「ルゼ、岩カーテン」
視界ブロックもするなら、これの方が障壁としていいが、耐久がなく、結局どちらも組み合わせたりして使う。一長一短だ
「フィル、バフ直し」
定期的に掛けなければいけない。魔術の肉体強化は切れないが、魔法は切れる。だから、掛け直し。どちらも使って思うことは、ウィディが補助魔法に興味を持ってくれてたらどれだけ楽だったろうか…魔道具や攻撃魔法しか興味ないのはやめて欲しい。左下部並びに左側面…並びに右正面…!
「…ッ!リネス!」
一瞬だけ時間が止まった中で動くことができる。リネスの時間停止…負荷が強く、殺せるかわからない攻撃を数発叩き込む瞬間を作るために使うより、一瞬だけ回避に使う方が長続く扱いやすくて強い
「サント、前方一帯電撃」
獅子と私の実力差は殆どない…フィジカルや速度は当然負けているが、どうだろうか…私がここら辺一帯を消し去る一撃を避けながら撃ち続ける…こうすれば私が圧倒的に有利だ。しかし、私側は防戦を強いられている。さっきから数度の土砂崩れの音がしている。そんな事をすればもろとも消し去るだけでなく、少し威力が弱めのものでも、被害が出るのは考えずともわかる。だから…本当に最小限…攻撃性はあまりないようなものしか魔法は使えない…魔術を使えば必中にもできるのでは?その通りだ。その通りだが…この獅子、ただでさえ魔力を繋ぐのが難しく、逃げ回るから狙いも定まりにくく、必中は狙えない。呪いは通じないだろう。周囲に漂い始めた微かな呪性魔力…恐らく、コレが色々と妨害しているし、してくるだろう。加護は精霊であるが故、通りが悪い。そんなこんなで…
「遅延し続けられている…このまま続けよう」
しかし…そう上手くいかないのが常…雨の粒に光の粒子を分散…その後、背後で構築された…その間私の反応速度ギリ…!つまり…
「リネス!」
停止…やはり、剣を抜く他ないか…
「アリスメージュ…」
ほんの少しだけ打ち合えるようになる…空中でのほんの一瞬ではあれど、体感とてつもなく長い視線の交錯ののち、剣を振るう…
「ウィディ、風撃。マニィレ、防げ」
私だけでは手数が足りない。圧倒的に速い獅子の攻撃をマニィレに防がせつつ、ウィディには少しずつでも攻撃し続ける
「サント、補助」
反射で動けるように反射速度を上げる魔術を使わせる。電気信号がどうたらと春馬が言っていたやつからウィディが考案し、サントに使えるように教え込んだものだ。当然、本来は魔法として考案したものだから不安定要素も多い…でも、マニィレの負担が減れば…
「マニィレ、ルゼ、盾突き」
障壁達で徐々に押し込んでいく…すると、さらに楽になる。もちろん、比較的にってのが付きまとうが、それだけでも助かっているのは間違いない。ただ、問題は…
「アリスメージュ…限界か…」
アリスメージュに固執する必要はない。ある程度質のいい魔剣なら私の魔力に耐えれるため、問題はない。後はルゼが生成した岩の剣とか…ただ、どちらパターンでも付き纏ってくるデメリットは…時期に壊れることだ。対策は剣に自己修復を付ける事。でも、大抵は魔剣自体が耐えられない。それこそ、膨大な魔力を受けるためだけに作られた魔剣に膨大な魔力を日々積み重ねていがない限り…
「ヴァラン…」
私の愛剣…置いてきちゃったしな…やっぱり、耐久は現実的ではないな
「ぐっ…」
「姫ちゃん!」
「お嬢!」
剣が壊れ、私は一撃もらった…腕が潰れ、胸が少し抉れかけた。二名ほどの反応が速い。再生がもう終わりそうだ。でも、そっちに注意が向くと…疎かになる部分が出る
「マニィレ!転移!」
「了解…!…ッ!ダメだよ!マスマスマスター!」
一瞬で発動できる転移…瞬間移動には限界がある。およそ80フィートの距離しか飛べず、一瞬で距離を詰められる。まぁ…仕方ないか…
「受けよう…」
「姫ちゃん!」
「お嬢ゥッ…!!!」
「マイ・ロードォォッ!!!」
「主!」
「マスマス…」
「大将!」
フィル、ウィディ、リネス、ルゼ、マニィレ、サントの順で聞こえた。反応速度に差があるのだろう…名前を呼ぶ暇があるなら、私は反撃を繰り出す…それは、多分誰かと同じだろう…
「私の…私たちのお嬢を…!」
「ウィディ…7秒耐えろ…」
勝手に飛び出していったウィディは強い風を纏い、獅子を吹き飛ばさんとする…だが、当然飛ばされることはない。でも、ダメージがあった…それは、ウィディの魔術に少し闇が混ざっているからだ。闇の魔術と光の魔術はお互いに消滅反応を起こす。つまり、繋がらなくとも、範囲攻撃で無理やりダメージを与えた結果となったわけだ。さて…他数名が治癒に専念しているが、今は意味がない。私はその傷じゃ死なないし、そもそもとして、皆の魔力を吸っているから、魔術の効果はない。ごめんね…?私…ここからは命賭けるから許してよ。よくわからないけど、この子は苦しんでるから救わなきゃいけないんだ。私が…
「7秒…みんな…少し、寝ててね」
ウィディもろとも回収する。魔力は十分…全部使おう。元は私の魔力…みんなが最低限存在を維持できる魔力は残しつつ、全部使う…
「大規模な魔術は使えなくても、コレだけで十分…」
大剣を一丁生成する。擬似的なものだし、何よりみんなの一部をパーツにしてるから解かないと、みんな戻れないしね
「短期決戦と行こう」
瞬く間に距離を詰めてくる…当然、私は普通では速度が足りない。でも、この剣があればもう…全部解決なんだよ
「聖域…」
聖域は元々私が作ったもの…マニィレに協力してもらって改善したところはあるが、基本的には私が作ったわけなので、私だけでも構築できる。一人で構築したときは複数の魔法陣を使うことで足りない手を補った…魔法陣自体は小さいし、小規模の結界ならそう難しくもなく、魔法陣は小さくとも効果を乗せられる。魔法陣を魔力で描く芸当は私が魔術を極め抜いたから出来ている。つまるところ、魔術と魔法の融合というわけだ。まぁ、もともと魔法は魔術の一部分的要素を持っているが…
「ま、今はいいか…んじゃ、解放してあげる…」
私を中心として、五フィートの聖域を発動。効果は範囲内のすべての魔力と魔術的繋がりを引き起こすというもの。私と魔術で繋がったのなら、精霊なら動きは止められる。ただ、呪性魔力で固められているため、解呪しなければならない
「よしっ…お終い…あぁ〜疲れたぁ〜…」
自身の傷を治しつつ、皆の起床を待つ…そこで小さく光り、意識を失っている光の精霊を胸にしまいながら…
「あれ…?こんなに空晴れてたっけ…?」
気付いた頃には晴れ間が見えていた。陽光は私を世界の中心だとでも言うように、私だけを照らし、冷えた身体を温めてくれた




