Part57 禍根
何処だ…何処なんだ…ここは…
「いっ…たぁ…ぁぁ……腕、折れたかも…」
「…ぁルー…!ガルー!!!」
「イグス…!イグス!こっち!」
遠くから聞こえるイグスの声に返事をし、体を起き上がらせようとしたとき…気づいてしまった…
「ぅぁ…足が……」
「ガル!!!無事…じゃ…ないな…」
ひしゃげ折れている。骨や肉片、大動脈がよく見える。ぐちゃぐちゃ…潰れているからこそ、出血はあまり激しくはない。死には…しないと思う。今、このままだったら…の話だけど
「ガル…動けるか?」
「無理…かな…一番は動けば出血し出す可能性があるから、それが良くない」
「…治癒魔法は出来るよな?」
「うん…でも、こんな傷じゃ…」
「俺が穴埋めはする。ガル、お前の足になる」
その提案はまさに今の状況を打開する一手であった。そもそも、こうなったのは…
………
「イグス…着火」
「行くぜ!」
イグスの炎を纏い、その魔力の根源に向かって突っ込む…が…
「激流が…!あがっ…おごっぐっぷ…」
炎が点かない…こういうときの…あの炎を…!
「___ッ!?」
ノイズが…!周囲の魔力を使おうとすると、呪われたその魔力達が体を…炎を潰していく…痛い…というより…苦しくて…悲しい…辛い…
「ガル!正気を保て!」
「…!」
イグスが激流の川の中、声を掛けてきている。何故…イグスだけは燃え続けて…
「俺は呪性魔力も着火材にして燃やし尽くせる。空気は遅れないが…水は止めれる。耐えてくれ…!」
「んっ…!」
息を漏らさないよう、喉の響きだけで返事を送る…流れの中、何度も何度も何かにぶつかる…何度も何度も何かに沈められていく…何度も何度も…
………
「消えない炎…傷を塞ぐ…足になれば、流されるのも支えられる?なら…さっきみたいにはならないかも…だけど…そうだとして…イグスには反動がないの?」
「…ん?無いぞ、そんなの」
「へ?」
拍子抜けな返答に、つい素っ頓狂な声を上げてしまったが、それなら…それならすごく都合がいい!
「イグス。頼んでいい?」
「…もちろんだ!俺に任せろ!」
イグスが足を覆い、ギリギリ立てるようになった。傷口を焼き、動いても出血しないようになってはいる。炎に耐性があるため、焼き焦げはしない。だから、心配なく止血のために焼ける。治癒魔法も掛ければ…まぁ、安心…かな?
「よし…行くよ。イグス!」
走り出す。魔力探知をし、道を探りながら走る。イグスからの返答はないが、ただそこで燃えていてくれるだけで、すごく暖かくて…心強いんだ。だから、大丈夫。必ず…勝つ!
「着いた!」
先程の場に着き、足を踏み入れ、気付いた。一秒未満、極小の時の世界。そこでは…高速で水中で動く水の精霊の姿が…
「君は…その魔力…私が助けなきゃ…だよね?」
私は咄嗟に水底を蹴り、近づこうとするが、その一歩を潰すかの如く、激流がこちらを襲いにくる…
「危ない…!」
炎を噴射し、瞬間的に方向を転換する。しかし、そこを更に狙う渦が周囲を取り囲む…
「今度は何処にも逃げさせないってことね…」
凄く楽しくなってきた。でも、気は引き締めないと…油断は…
「命取りだもんね」
高く飛翔する。空中に居れば、その隙を狙おうとするだろう…あれは本能的に攻撃しているのだろう。だから…私が空中で、明らかに誘っているだろうという隙をも狙おうとしてしまう…だから、狙える
「灼黒輪転・霊」
イグスの力を使い、点火。それに対して私は灼黒輪転を掛ける。名付けて…灼黒輪転・霊。立ち上る渦を全て焼き尽くす。そして、そのまま…
「炎獣轟拳!」
「…!」
意外に避けられるかを気にするのは意味ないかもしれない。避けるのを優先にすることはないらしい。確実に一撃一撃を叩き込むのが良さそう
「一体、何発打ち込むことになるかわからないけど、やるだけやる…ノックアウトまで叩き込む!」
「ッ!ッ!ッ!」
「ん?」
何かしらの動き…ガード…より、すぐに動けるように構えることのほうがいいかも…
「!!!」
上から雨のように水飛沫が…いや…粒一つ一つが大きい…当たれば…
「タダじゃ済まない…!」
ガードより…回避!回避!
「…うあぁぁぁ!!!!」
「ッ!…ッ!…ッ!ッ!…ッ!!!」
止まらない…これ以上の耐えは…このまま避け切ろうより…先に倒そう!それしかない!
「くっ…!…私の…タァーンッ!」
声が強く出た…それに呼応するように蹴りも強く…地面を…いや、水面を弾き、その場へとこの身を導いた
「…焔火葬送!」
咄嗟に出た!よくわからない!ほむらびそうそう…?本当に知らない!でも…なんか…すっごい効いてるぅ!?なんで!?いや…イグスの力…な…訳はないな。これって多分加護とかの類だし…まぁ、助かったからいいかな?
「ッッッッ…ッッ!!!」
「変わった…?いや…これは…戻ってきてる!…ガッ!?」
お腹に穴が…水の塊…高速…かつ、死角から正確に…言うなれば…水の狙撃…!
「しかも、跳ね返るのね………だとしても…変わらないんだよ。私…引く気ないから」
「ッ!ッ!ッッ!?」
「もっとよく狙いさない。急所を…そんな擦り傷程度…すぐ治せる」
「ッッッ!!!!!」
「そう…そうやってよく狙いなさい。ようやく…治せない程度になってきたわね」
進む。進む度に徐々に精度が良くなっていっているけれど、全く致命傷にはならない。体が少し飛ばされるが、その程度では止まらないし、後退もしない!
「来い…!その程度じゃ、私は沈まぬ太陽のごとく、お前の前で燃え続け、お前を叩くぞ!」
「ッッッ!!!ッッッ!!!」
「ぐふっ…!まだ…!」
「ッッ…!!!ッッ…!!!」
「ごほっ…!まだだ…!!」
「…ッ!!!…ッ!!!」
「肺…なんてぇ…習ってもぉ…!!!私は…!!!死なないぞッ!!!」
胸や腹に幾つかわからないくらい穴を開けられた。でも、ようやく…着いた。一蹴りで詰めれたかもしれない。でも、何歩も歩いてようやく着いたその場所…後退は殆どしないソイツの場所に…
「お前が…ゆっくりなのに…私が素早く…なんて…ズルイよな…だから、近づいてやったぞ…逃げるな。しっかり受けろよ?」
「ッ_____」
最後に一撃…胸を貫かれた…でも…もう………私の拳は突き進んでいるから…ソイツの体を…!
「灼黒獣拳!!!」
これまた咄嗟の技だ…でも、灼黒輪転の使い方は炎獣轟拳に乗せるのが正解って…そんな気がしたんだ。それは間違いなく…正しかった!
「きゅぅ…」
「私の…勝ちッ!でも…何故かまだ呪性魔力?は、晴れていない…元凶は別にあるのかな…」
暗い…よくよく考えてみればこの炎以外に明かりはない。だから、洞窟の構造自体はあまりよくわからなかったんだけれど…
「奥に道が…その前に…この子を連れていってあげよう…」
水面に浮かび、漂う弱く光る水の精霊…浄化されたようで、呪性魔力はない…とは思う。だから、連れて行こう。でも、これを浴びるのは良くないだろうし…
「フレアちゃんみたく、私の体に入れられないかな…?確か魔力腺に…魔術でかな…?」
感覚は知らない。完全に手探りで…繋いで…繋いで………どうやって格納するの…?
「あ…そうか…繋ぐって言ったって、精霊は全身が魔力腺みたいなものなんだから…」
丸ごと一つの魔力腺で繋いでしまって、押し込む!
「何とかなったかな?よし…進もう」
先に進むと小さな杯があった。それが根源…そう確信できるほどに…
「嫌な気配…さっさと壊そ…灼黒轟拳!あれ…?」
黒くならなかった…これじゃあ炎獣轟拳と変わらない…意外と…難しい…さっきは出来たのに…火事場の馬鹿力ってことなのかな?でも…壊せはした…これで…
「え…ちょ…何!?」
世界が揺れる…いや…私が揺れてる!?違う…!どっちもだ…あ…これ…生き埋めに…




