Part56 王と帝
ずぶ濡れ馬鹿二人組は服を着替え、ローブ型の雨具を人数分揃えた。なんだかんだ、皆濡れるのは嫌なのだ。でも、この国は湿度は高いし、気温は高いしで、雨具が凄く煩わしい…
「この狂いそうな空気の国…実に…!あぁ…!もう、早急に事を片付けたいですね…」
「火の狐さんには、この静かな雨の国の良さがわからないか…」
「いや、別に良さなんてないだろ…」
「私はここ好きだけどなぁ…」
綺麗に半分に意見が割れたが、そんなことはあんまり重要じゃない。各々、調査に出向くべきだろうが、何か嫌な気配を感じる…これを前に一人で行動するのは少々リスクが大きい。おそらく、皆が感じているだろう。だが、いや、だからこそ…
「別れて動こう。私は森の奥に行く。ガルは近くに洞窟があるはず…そっちに。楓は聞き込み。春馬は私らが見に行かない方に行け。夜になるまでに戻ること…戻らなければ死んだものとする。じゃあ、解散」
異論を唱える者は居なかった。嫌な気配ってのを探らないとまともに本題に移れない。わざわざ探して、対処しないとならない…本当に面倒だ…
「川は意外にも氾濫していないもんなんだ…」
途中までは、ガルと共に行動していたが、順路が違えたため、イグスはガルに付かせ、川沿いを歩いてみるこたにした。そんな中で湧いた、しょうもない感想だった。いや、そもそもこんな雨天で植物がこんなにも成長している時点でそうでも不思議ではないか…土手が崩れないように根を張り、その大きな根で魔力を吸う…それによって植物たちは育っているのだろう。そういうサイクルがここを作っている
「豊富な魔力か…川の上流に…いるかな…?洞窟は川から離れている。そりゃあ、当たり前にそうだろうけど、こんなにも怪しい所が複数あると逆に別の場所に何かがあるのでは?という気がしてくよね。本当に大丈夫か…まぁ、行くしかないけどね」
そのまま上流に向かって歩く。この雨具…装備として心許ないし、どうにかしたいが…
「ウィディ、雨具に魔力回路って組めるか?」
「技術的には余裕で組めるけど…乗せれるものが殆どないよ。本来なら時間かける物だし…愛用してるあのローブとかならすぐにでも出来るかもだけどね」
「無いからね」
母さんから貰ったローブ…確かに、耐久性を上げるために魔力を流したり、補修するときに魔力を微量に流してたからな。既に殆どは出来ててもおかしくはないか…
「マニィレ、持って来れないか?」
「たんたん探知に時間が掛かるかるかると思うけど、それそれそれそれでもでもいい?」
「頼む。コレ、もう暑くて着たくないんだ」
あと、動きにくい、耐久性が不安、他にも様々不満はあるがね
「ルゼ、地質的にここら一帯の動物の生息分布ってわかるか?」
「岩の分野じゃぁ…もう、ないな。まぁぁ、やるだけやるけど」
「助かる。あと…サント、電気信号で長距離で暗号送れない?」
「それさ、うちやらなくてもいいやつじゃないの?マニィレちゃんとかの領分じゃない?」
「あれはこっちに持ってくるのは得意でも、送るのは無理だから」
「なるほど。試してみる」
コレで動植物分布を地図とともに共有できたら、探索楽に進むだろうな。後は…
「フィル、魔力探知を前方に強めるから後方は任せるからね」
「はいはい。任せてね姫ちゃん」
「リネス。君も活躍したいとウズウズしているところ悪いが、燃費の悪い君を使うことはあんまりない。むしろ、力を貯めておいてくれるのが仕事だ」
「…そうですか。わかりました。マイ・ロード」
少し悲しさをはらんでいた気もするが、まぁ仕方のないこと…気にせず足を進める。他の皆のことを知るためにもはやく通信を繋げたいが…
「それは後回しになるかもな…外れくじ…いや…寧ろ、当たりかも?」
獅子のような見た目の光の精霊…正気はない。だろうな…
『グルルガァァァァ!!!』
「あー…この頭に響く感じは久しぶりに味わった。さて…やるか」
私は獅子の足下に飛び込み、先制を決めた…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あっちに比べてジメジメしてて、苔がいっぱい…」
「それに、さみぃな」
「そうだね。氷結玉のせいかな…前にフレアちゃんから聞いた。魔力に反応して冷気を出す宝石があるって…コレかな…?」
イグスと二人…洞窟に潜っている。壁には苔と霞んだガラスのような宝石の原石が埋まっている。前に話に聞いた氷結玉だろう。イグスの見た目を構成している炎は結構見掛け倒しで、実際に燃えている訳ではなく、魔力がそういう見た目になってるだけだと言う…その為、火の明るさはあれど、すごく寒い
「見ろよ!川だぞ!」
「地下水?…匂い的に凄く綺麗な水っぽいけれど…一応、警戒していこう」
「何処に向かって流れてるんだろうな?」
「…それより、何処から流れてるかじゃない?」
「んー?どうしてだ?」
「流れが強くない。外から流れてるなら…もっと流れが強いでしょ?」
「確かになぁ…」
それに…水が綺麗すぎる。ちょっとずつ流れてくる可能性もなきにしもあらずだけど、ここまで水が綺麗だと不自然だ
「まずは…上流へだね」
歩き進めると、何故か圧を感じる…敵意?違う…魔力でもないし…
「…ッ!?」
「あー…呪性魔力ってやつかぁ?」
「魔力…なの?」
「呪われてるけど、魔力だよ」
禍々しい気配は一定の範囲内でより強まる…まるで、近づくな…とでも言っているように…
「気張っていくよ。証明しよう。私達の炎は呪いさえ焼き尽くせるって」
「おうよ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
聞き込み始めて分かった事…この国は観測されている限り、もう300年は雨が止んでいないらしい…
「それに…森の光る怪物、洞窟の呪い…山の化身か…噂に過ぎないことばかりでしかないな…」
収穫は殆どない。こんなんじゃ…役立たずだ…
「はぁ………?爆発音?遠いな…フレア様の方……?それだけじゃないな…この感じ…何か来る!」
「キャーーー!!!」
誰かの悲鳴…いや、皆の悲鳴だ。森の中…山の奥から、土砂が流れてきて、街を破壊していっている…
「助けなければ…」
私は人を救う魔法も魔術も得意じゃない…でも…何もできない訳じゃない!
「火天護楼」
加護は得意ではないが、魔術と組み合わせれば使えないこともないレベルにはなる。土砂を弾き、逃げる余裕を作るぐらい…わけない
「た、助かった…ありがとう!」
「さっさと逃げて…無限に耐えれるわけじゃないんですよ!」
「わ、わかった…」
あとは…土砂をはけさせる方法を考えて…そんなとき、世界が暗くなった…元々暗かったが、こんなに…あ…違う…影だ…巨大なソレの…
「ドォォ……!!!!!!!」
「泥まみれ…というよりは、泥の怪物ですかね…相性は最悪一歩手前…しかも、守りながらですか…聖域でもないのに、本当…最悪な国ですね」
刀を取り出す。普段は使わない。でも、今は少しでも道具に頼らなければ…勝てない
「後悔先に立たず、でも、私はここに立ち続けますがね。貴女を追い払って…あわよくば倒す…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
不穏だ。爆発音に土砂崩れの音…確実に何かが起きてる。早く戻らなければ…皆と合流するのが先けt…
「そこの奴。待て」
「はぁ?」
急に呼び止められた。そんな余裕なんてないんだが…
「何?」
「おい、それが帝への態度か?もっと敬意を持て」
「はぁ???」
まるで意味がわからない。この女は何言っているだ?目の前の女性は身長も高く、確かになんか女帝っぽい感じはあるけど…何言ってんだ?
「態度がなってない。そんな愚か者には…鉄槌をだな…」
一蹴りで詰められ、大きな槌が脇腹に飛ぶ…
「うぐっ…」
無視はできなさそうだ…このまま連れて行ったらデメリットのが大きそうだし…ここで仕留める…!
「へぇ?生きてんのか。私のエンプレスを喰らってもなお耐えてんのか」
「クソ痛ぇけどな…」
「ふんッ…!テメェは私の攻撃を耐えた一人目として名前を刻んでやる!名乗れ!」
「…春馬」
面倒い…実に面倒だが、合わせないとさらに面倒になりそうだから、合わせるしかないというのがムカつくな…
「そうか!変な名前だな!私はエンプレス!お前を捌き倒す女帝だ!」
「変なのはお前…いや、もういい…」
抜刀し、構えたと同時に二度目の爆発音が響いた
「…ッ!?また…」
「よそ見厳禁!」
再度、吹き飛ばされ、木に何度かぶつかる。頭が揺れ、脳震盪気味だ…あぁ…もう…絶対に容赦しねぇ!




