1-4 守れパンレイト! 帝王国の野望と最凶の敵! 5
縁藤も川強もキャノピーを開いて、ザーベオンから飛び降りたので、古鈴も慌ててそれに倣った。
三人は地底へと消える階段の前に立つ。
「さて、どうするね?」
「どうするも、こうするも、ぶっ潰すしかねえだろよ」
火のないタバコをくわえたまま、川強が言う。
「ちょ、ちょっと待て!」
この穴は高さも幅も、せいざい二メートル弱。長身の川強などは首をすくめて下りる必要がある。
当然、巨大な金属の獣たるザーベオンに入れるものではない。
「歩いて下りるつもりか!? 帝王国軍が待ち構えているだろう地底へ?」
「俺のトラは狭い所と暗い所が苦手なんだ」
「知るもんか! ちゃんと躾けていないだけの話じゃないか」
ザーベオンから降りて戦うだなんて、無意味にして無利益。危険の他に得られるものなど、頭に浮かばない。
古鈴は、とんでもないことを考えているバカ傭兵どもに、なるべく修辞的語法を避けて、分かりやすく、おかしな暗闇にのこのこ入っていく危険性を説いてやる。
酔っ払った片方の傭兵は、うわ~っとうなって、古鈴の言葉を遮った。
「役人みたいにごちゃごちゃごちゃごちゃうるせえ! 役人ってのは、帝王国のザーベオンよりも理解不能だぜ。とにかく、俺たちはパンレイトの脅威を除くことを命令されたんだ! その脅威を前に、なにを躊躇ってやがんだ!」
「帝王国軍の基地を見つけたのなら、援軍を要請して、攻囲するもんじゃないのか?」
「軍人さん、援軍とやらが来る見込みはあるんかいね?」
「うっ」
実を言うと、すでにファラーデに援軍を要請していたが、甚だあてにならないのは事実だった。
アルデ軍は自分たちの頭の上のハエを追うのに忙しいだろう。
「別にザーベオンに乗っていないからって、戦えないわけじゃあるまい? おまえが腰にぶら下げた拳銃は飾りか、古鈴?」
飾りだ。古鈴は心の中で答えた。
「せっかく戦争が始まったのだし、その道具に慣れておいたらいいぞ。それにザーベオンでないと入れないところでしか働けないようじゃ、出世できんぞ。さもなきゃ、もっと小型なザーベオンに乗るか?」
「冗談じゃない」
古鈴はいまだ渋面を作っていたが、心の中では調子の悪いラジオから流れる声のように、決心は揺らいでいった。
「虎穴に入らずば虎児を得ずだ」
川強は意気揚々とした様子で、背中から賜杖を抜いて振り回しつつ階段を下りていく。縁藤もそれに倣った。
こうなったら、どうとでもなれだ。