3.5話 幕間
初めて書いた作品です。
拙い文章やわかりにくい表現が多々見受けられることもあると思いますが、これからの執筆を通して成長できればと思います。
さしあたって、ブックマークや感想等を残して頂けますと、やる気や励みになりますので、ぜひお願いします!
い草の良い香りが漂う畳敷きの一室。
多くの物が収納された茶箪笥とお茶の入った湯呑と煎餅が置かれたちゃぶ台。
床の間には、立派な掛け軸が一幅と、障子の隙間から差し込む柔らかな日の光に当てられ、キラキラと輝く刃が剥き出しの刀が飾られている。
ある種の様式美を感じさせる、正に「和室」と称するに相応しい部屋だが、そこに似つかわしくない最新のノートパソコンや大画面の薄型テレビが備えられていることで、そこが展示場などではなく、確かに人が住んでいる部屋なのだということを認識させる。
「天守んとこの子は無事に人里に付いたかのう」
そんな和室の主であろう、美しい和服に身を包んだこれまた美しい女は、煎餅をバリボリと食べながらそうつぶやく。
キョロキョロと何かを探すような仕草をした後、「あったあった」という声を漏らし、ちゃぶ台の下に無造作に置かれたリモコンを手に取ると、テレビに向けてボタンを押す。
二、三チャンネルが切り替わった後、崖際でクマに追い詰められた男が映る。
「えっ! ちょっと! あれ!? ここって魔獣いるんだっけ!?」
映像を見た女は、勢いよく座布団の上に立ち上がると、驚愕を顔に浮かべる。
その衝撃で手に持っていた煎餅は弾けて畳に散らかるが、女はそれを気にしていないようだ。
数秒間そのまま固まっていたが、我に返ったのか、また座布団に腰を下ろす。
「あぁ、しまったのぅ……。あっちに行ったばかりでツノグマなんて……。いや、ツノグマか? んん、ツノグマか。ううむ、悪いのは儂なんじゃが、天守んとこの子も運が無いのぅ。遺伝か?」
呟かれる言葉の内容とは違って、次の煎餅に手を伸ばす女は、窮地に立った男をそれ程心配していないらしい。
むしろその状況に呆れているようにすら見える。
「ほれ、早く逃げねばやられるぞぉ。それとも倒して見せるか? そっちのほうが見応えがあるんじゃが――あ、うわちゃぁ……。派手にやられたのぅ。ううむ、まあ、そうよな。どれ、こうなったのは儂にも責任があるし、体くらいは治してやるか」
女は、ノートパソコンを開いて何やらカタカタと打ち込むと、テレビに向かって掌をかざす。
途端、女の体は輝きだし、その光は部屋いっぱいに満ちていく。
「――――」
女が何かごにょごにょと唱えると、光は掌へとに収束し、やがて煌々と輝く光の玉が形成される。
光の玉はその輝きに反して、不思議と眩しいと感じることはなく、熱も持っていない。
「ううむ……。ちょっと足りないかのぅ。ただ修復しても、またすぐ死んでしまうやもしれんし、ちょっと生命力を上げておいたほうがいいか。あぁ、これはさすがに多すぎるか――」
ああでもないこうでもないと、エネルギーの量を調節し、光の玉を大小させていると、
「――ただいま戻りました。ってあれ!? ちょっと! それ明日のおやつに出す予定だったお煎餅じゃないですか!?」
「うぇ!? ああっ!!」
割と集中していたということもあってか、部屋に誰かが近づく気配に気づかなかった。
結果、驚いた拍子に力を込め過ぎてしまい、莫大なエネルギーの塊となった光の大玉は、そのまま掌から放出され、テレビ画面の中へと吸い込まれる。
そして、バラバラになった男に近づいた瞬間、光は拡散し、画面を真っ白に覆いつくすほどの閃光が迸る。
「わっ! 何やってるんですか!? ――痛っ! ああ! お煎餅たくさん落としてるじゃないですか! まったくもう! そうやってお煎餅持って遊んでるからですよ!」
「いや、遊んでるわじゃなくて仕事……! あっ! 天守んとこの子! あの量の魂力はさすがに――」
「明日はおやつ抜きです!! 食べながら遊んだのと、明日の分おやつも食べちゃった罰です!」
「え! そんな! だって台所にあったから! それに、天守んとこの子が……!!」
「言い訳無用!! もっとしっかりしていただかないと困りますよ!――神様なんですから!」
▲▽▲▽▲▽
――ゴボ、ゴポポ、ガポン。
不明瞭な水の音。
暖かな日の光が顔を照らす。
確か自分の体はバラバラになって死んだはず――ということは、ここは死後の世界というやつなのだろうか、それともただの夢なのか。
「――――」
どちらでもいい。
今はすごく心地がよくて、眠くて――全部後回しにして、今はこの快感に身を任せて、ただただ微睡んでいたい。
「――っ!! ――――!!」
ふと誰かが叫ぶ声が聞こえた。
水が耳に入っているせいで何と言っているのかは分からないが、とても焦っているのは分かる。
――うるさい。静かにしてくれ。
次いで、バシャバシャと水をかき分ける音がしたかと思うと、誰かに体を強く引っ張られる。
――やめてくれ。これじゃあゆっくり眠れない。
「まだ……たす……! しっかり……よ! ――――絶対助けるから!」
それを最後に、天守夜人の意識は再び深い闇に落ちた。
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