1話 プロローグ
初めて書いた作品です。
拙い文章やわかりにくい表現が多々見受けられることもあると思いますが、これからの執筆を通して成長できればと思います。
さしあたって、ブックマークや感想等を残して頂けますと、やる気や励みになりますので、ぜひお願いします!
「――現実ってのは退屈だ。暇すぎて嫌んなる」
朝起きて、学校で勉強して、バイトで生活費を稼いで、夜眠る。
同じことの繰り返しは 心に飢えをもたらす。
その飢えを満たすため、友達と遊び、ゲームをして、本を読んだり、アニメや映画を見たりして娯楽に興じる。
しかし、そんな娯楽にも飽きがやってくる。
何だってそうだ。
最初のうちはやることなすこと全てが新鮮で、少しの変化に一喜一憂できるのに、それに慣れてしまえば刺激に物足りなさを感じてしまう。
心が乾いていくような錯覚を覚えるのだ。
もしも大金持ちだったら、次々と新しい漫画やゲームを買ったり、色んな場所に行って色んな経験をすることで乾きも潤すことができるのかもしれない。
「今日はバイトも休みか。久しぶりに日曜日って感じだな」
しかし、それはただの妄想に過ぎず、実際は大金持ちではない。
家族がいなければ、親戚連中からも疎まれ、何とか条件を満たした奨学金で高校に通い、日々の生活費をバイトで稼ぐ暮らし。
もしもとんでもなく頭が良ければ、どんな些細なことにも興味を持ったり、自らの力で新しいものを生み出したりすることで乾きを潤すことができるのかもしれない。
「あ、来週から期末テストだっけ。勉強……はいいか。赤点取らなきゃセーフセーフ」」
残念ながら特別頭が良いわけでもない。
地頭が良いとはよく言われるが、学校のテストはいつも平均より少し上のレベルで、何かを開発するだとかは到底できるはずがないし、したいとも思ったことがない。
もしも人の道を外れることに躊躇がなかったら、物を盗ったり、命を奪ったりすることで乾きを潤すことができるのかもしれない。
「暇だし、たまには散歩でもしてみるか。ついでに卵も買ってこよう。チラシに安売りだって書いてたし、日曜はポイント二倍でお得だからな」
ただ、いくら暇だからといって人の道を外れるのは論外だ。
そもそもそんな度胸があったらバイトなんてしていないし、特売のチラシに目を通したり、こまめにスーパーのポイントを貯めたりしない。
――要はつまらない人間なのだ。
自分の置かれた環境を退屈だと言っているくせに、それを変える力も無ければ、変える努力もしない。
独りは嫌だから友達と遊んで、死にたくないから勉強して、金を稼ぐ。
最良にはなれないけど、最悪にはなりたくないから安定を取り続け、流れに身を任せてズルズルと生きているだけ。
これといった夢もない。
どんな職に就きたいとか、こんなことをしてみたいというのも特にないのだ。
ただ強いて言うなら、魔法とか使って、異世界で無双してみたいとは思うことがある。
まあ、そんな異世界夢想なんてのも、ゲームやアニメが好きな現代の若者にとっては珍しいことでもないのだろう。
「あー、宝くじでも当たんねえかなあ」
などと、宝くじ売り場を横目に買ってもいない宝くじの当選を願いながら、安売りの卵をエコバックに入れて散歩していると、
「ん? こんな道あったっけ? 新しく作られたわけじゃないよな? 舗装もされてないし」
この辺は小さい頃から何度も通っているが、こんな脇道があった覚えはない。
もちろん、新しく道が作られたという可能性はあるだろうが、それなら工事をしている所を見ているはずだ。
見たところ、山の上の方に続いているようだが、この山に何かあるという話は聞いたことがない。
「あー、どうしよう。気になるぅ。でも卵を冷蔵庫に入れないとだし、あー……」
少し悩んだが、行ってみることにした。
携帯を確認すれば、現在時刻は午後三時時――初秋とはいえ、日が落ちるにはまだ時間がある。
仮に道がかなり続いていても、すぐにやめて引き返せばいい。
卵だって元は外で育つものだし、そんなに早く悪くなったりもしないだろう。
▲▽▲▽▲▽
三十分ほど歩いて来ただろうか。
道の左右には木々しかなく、ずっと代わり映えしない景色に、道の先への好奇心よりも飽きが勝りはじめる。
それに、ずっと上り坂を歩いているせいか、木陰とはいえ少し熱くなってきた。
着ていたジャージを腰に巻いて、そろそろ帰ることを考え始めた頃、草木の隙間から、明らかに自然物ではない鮮やかな朱色をした建造物が見えた。
「あれは――鳥居か?」
建物にはみえないが、こんな山の中にある朱色をした柱のようなものは、まず鳥居で間違いないだろう。
「ってことは、この先にあるのは神社ってことか。でもこの山にそんなのがあるなんて聞いたことないんだよなあ」
引き返そうとした足を前に戻し、鳥居を目指してまた歩きだす。
どこに何があるか分からない道を延々と歩いているよりも、明確な目標があるというだけで、肉体的にも精神的にも疲れが軽減されたように錯覚する。
鳥居まで辿り着くと、その奥には小さめの古ぼけた神社があった。
境内には社務所などはなく、神社の他には周りの木と比較にならないほど立派な大木が一本あるだけだ。
大木にはしめ縄が巻かれており、一目でこの神社にとって特別な木であることがわかる。
「こんな所があったのか。これだけ立派な御神木? があるならもっと有名になってもいいようなもんなのに」
いったいどんな謂れがある神社なのかはわからないが、ここまで来たのも何かの縁だろう。
ちょうど卵を買った時のおつりで五円玉があったはずだ。
正直もったいないという気持ちが無いわけではないが、これで御利益が得られたら儲けものだ。
鳥居をくぐり、神社の賽銭箱に五円玉を投げ入れる。
「あー、二礼二拍手一礼――だっけ? よし、これから先、退屈しない人生になりますように。お金持ちにもなれますように。それから、綺麗で優しい人とも結婚できますように。あと――――」
願うだけならタダだと、思いつく限りの願いを口にする。
もしかしたら神様に「欲深い人間だ」と見放されるかもしれないが、まあ、ここまで来て参拝までしたのだから多少大目に見てくれてもいいと思う。
「さ、この先になんかあるわけでもなさそうだし、そろそろ帰るか」
神社と大木に向かってお辞儀をして、帰路に就くために鳥居をくぐった瞬間だった。
『つくづくお前らの血筋とは縁がある――』
「――――!?」
突然、背にした神社の方から声が聞こえた。
声の高さからして女性――いや、性別なんかどうでもいい。
境内には他に誰もいなかったはずだ。
ここにまで来る途中に誰かとすれ違うということももちろんなかった。
恐怖を感じるよりも先に、反射的に声の正体を確かめるべく勢いよく後ろを振り返るが、
「……は? いや、え!?」
人影どころか、今の今までそこにあったはずの神社がなくなっている。
かろうじてあの大木は残っているが、しめ縄は巻かれていない。
「いったいどうなって……。っ?! 鳥居も無くなってるじゃん! 意味がわかんねえ! 夢!? 幻!? 退屈過ぎてついに妄想と現実がごちゃごちゃになっちゃったか!?」
混乱する頭、大きく脈打つ心臓がうるさいくらいに鼓膜を揺らす。
「――――」
何とか気持ちを落ち着けようと、今の今まで境内だったはずの開けたこの場所をせわしなくを歩き回る。
「ふぅ……。ふぅ……。だめだ」
少しは冷静になったのか、このままここにいたところで意味がないと思い至る。
一度立ち止まり、大きく深呼吸して、頭の中を整理するためにも今日この後の予定を口に出す。
「今日はもう帰って、取っておいたアイスでも食べよう。ああ、久しぶりにオムライスでも作ろうか。んで、いっぱい寝よう。きっと昨日のバイトで疲れてるんだ」
そう自分に言い聞かせて、来る時よりも早く足を動かす。
――否、そうしたいのに思うように進めない。
来た道を通って戻っているはずなのに様子が違い過ぎるのだ。
上り坂であるという以外、どうということのない道だったのが、どういうわけか今は草木が生い茂っていて歩くのも困難だ。
さっきグルグル回っているうちにどこから来たのかわからなくなってしまったのではないかとも考えたが、もしそうだとしても、境内だったこの広場の外周を回ればどこかには絶対道があるはずだ。
しかし、あるはずのそれが見当たらないのだから焦る。
「くそ! どうなってんだ!? まじで俺おかしくなつちまったのか!?」
そうやって自分を疑ってしまうほどに、今起きている状況が信じられない。
おかしい、おかしいと何度も思いながら、二周三周と歩いていれば、
「ん? これ――」
よく見れば枝が折れていたり、草が踏みつぶされたりしている痕跡があることに気付く。
記憶とは全く違うが、まさかこれが登ってきた道だとでもいうのか。
「こんなのまるで獣道だ。あー、まじで意味わかんねえ」
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