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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
一章 人智を越えた未知足り得る世界
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2話 意味不明な世界 その5

「新條君。私、帰っていいかな?」

「ああ、俺もそれを考えていた」

『良い訳無いじゃろ?!仕事をせい仕事を!!』


白い怪物(スノー・モンスター)との戦闘を終え、俺と常盤は目の前のアレを見上げていた。


「なーんでログハウスがあるの……?」


丸太で作られたログハウスが目の前にあった。こんな真っ暗な世界に何故ログハウスがあるのか疑問しか無かったが取り敢えず進む。


ログハウスに鍵は無く、中にあっさりと入れた。外同様中も真っ暗だったが、懐中電灯で中を照らす。


暖炉や椅子、テーブルがあったがそれ以外は何もなかった。簡素で質素な部屋だった。


「何もありませんが、部屋の奥に扉がありました。これから確認します」

『報告を忘れるなよ?』


荒起博士に念を押され、部屋の奥の扉に入る前に、念の為もう一度部屋を探索する。しかし結局何も無く、俺と常盤は実弾の銃に持ち替え警戒しながら扉を開けた。


「は……?」

「え……?」


何度も目を閉じて開け、目の前の景色に目を疑った。


それは常盤も同じのようで、同様混乱していた。


幻覚げんかくじゃ無いよね?」

「常盤には何が見える?」

「薄暗い古い洋風ホテルの廊下」

「そうだよな」


俺と常盤の目の前には、アンティークな洋風ホテルの廊下があった。


目の前には番号が振られた扉、それがいくつもあった。


物理的にログハウス内に収まる大きさでは無く、明らかに何かの法則に反していた。別世界に入ってから意味不明だらけで訳が分からなくなって来たが、荒起博士に報告しない限りは進展しそうに無い為、無線をつける。


「荒起博士。ログハウス内に――――」


『何故…?!……スシ……ムがエラーを起こ……………條蓮!常盤………大丈………ザーーーーー』


荒起博士の声はしなくなり、雑音のみが無線から聞こえていた。

嫌な予感がした。俺はログハウスを出て、俺等が通った亀裂を見た。


見慣れて来た、形容し難い色がなぐことの無い水面のように、絶えず色がうごめいていた亀裂が無かった。


設置した光源だけがひかかがやいていた。アビスシステムによって発生した亀裂は稼働停止にならない限り消滅しないはず。


「どうすれば……」

「……進むしか無いと思うけど」


常盤の言う通りだ、白い怪物(スノー・モンスター)に対する唯一の対抗手段だった波熱弾が弾切れの為、先程とはまた別個体の白い怪物(スノー・モンスター)と出会った場合、手も足も出ないだろう。


このままこのログハウスにいても、ここには必要最低限以下の物しか置いておらず、そしていつまた元の世界に戻れる亀裂が発生するか分からない。


何も無さ過ぎる場所よりも、何かある場所の方が生存可能の望みがあるかも知れない。


意を決して俺が先行し、常盤が俺の後から警戒し進む。薄暗い廊下に1歩、また1歩と踏み出し廊下の左右を確認する。


何もいて欲しく無かったが、何かがいた。


薄暗い廊下にいたのは、鋭く尖った歯に真っ白な目を持ち、歯と目以外はクレヨンで塗り潰したかのような、大きな黒い顔だけが浮いていた。


要するに意味不明だ。理解不可能だ。


とっさに常盤と目を合わせ、アイコンタクトを取る。


(喋らず動かず音を立てず!)

(ラジャー!)


ゆっくりと音を立ないように、黒い顔がいる方向と逆の反対側を進む。


黒い顔がいつ襲って来ても大丈夫なように、黒い顔から視線を移さず後ろ向きに歩く。


「!」

「!」


黒い顔がこちらを向いた。そして、結構な速度で近づいて来た。常盤が銃を撃った。


だが、常盤が撃った弾丸は薄暗い廊下に浮かぶ黒い顔に当たることは無く、弾丸は黒い顔を貫通し廊下の突き当たりに小さな弾痕だんこんができた。


黒い顔に傷を付けることは出来ず、幽霊のようだった。


「は?!……貫通した?!弾丸が貫通しちゃったよ?!」

「逃げろ逃げろ逃げろ!銃が効かない怪物に対抗する手段なんて持って無い!」


白い怪物(スノー・モンスター)に続きまたもやまともに銃が効かない存在が現れた。


いい加減にしてくれ!


薄暗い廊下を走る。さっきは助かったが防護服が重い。足の負担が絶大だ。


「目を閉じろ!」


突然俺と常盤以外の声がした。現状俺達にはもうどうしようも出来ないので、その言葉に従う。


目を閉じる瞬間、何か手のひらサイズの物体が俺と常盤を超えて黒い顔に向かって行った。


まぶたの隙間から強烈な光が見えた。閃光弾だ。黒い顔に向けて閃光弾が投げ込まれた。


「こっちだ!」


目の前に、ゴーグルと所々改造された銃を持った子供……?が現れた。


子供が俺と常盤の前を先行した。背後を見ると、黒い顔がどこかに消えていた。常盤は普通に走れているので、常盤も言葉に従い目を閉じたようだ。


行くあても無い俺と常盤は、その子供に着いて行く他無かった。






なんとか、なんとか子供に着いて行くと、広く明るいエントランスホールに出た。天井には綺麗で大きなシャンデリアが目を引いた。


「ここはあの顔のナワバリ外だ。安心しろ。さて、キミたちは何者だ?」


目の前の子供……背の低い少女が目に掛けていたゴーグルを外し、俺と常盤に改造銃を向け聞いて来た。


「私は常盤ときわ凪沙なずな。えっと、助けてくれてありがとう」


「……俺は新條しんじょうれん。で、そっちの名前は?」


名前を聞くと、俺と常盤に向けていた改造銃を下げ、

少女は近くの台によいしょ、よいしょと登り俺と常盤を見下げた。


「ワタシの名は荒起あらき白銀しろがね!世紀の天才発明家だ!」


…………一瞬荒起博士の顔が浮かんだ。多分絶対気のせいだろう。



◆◇◆◇



『第二評議長様。実験番号4-31415が精神崩壊を起こし、第92番研究棟内で脱走及び暴走しておりますが、以下ように処理すれば宜しいでしょうか?』


「……今、処分した。生成段階で自我及び精神が予想通りだったからな。やはり、私が求める予想外には遠く及ばないか……はぁ、成功と記録せよ」


『了解致しました。それでは失礼します』


「予想のつかない失敗作を造るのは程遠いな…………ん?同地点に歪みの発生…………アビスシステムと言ったか、少々悪戯を仕掛けてみよう。さて、歪み発生地点の世界にはもういないか。ならば近くの世界には……………………………見つけた」

新條蓮の経歴一部

・柔道 黒帯 初段

・サッカー ジュニアサッカー準優勝チーム所属/エース担当

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