19話 決壊する想像 その3
「ここは……」
何度目か数えるのを止めた別エリアの移動。そして全てが変わる世界。
周囲は黒く暗い、だが明るい。地面と思われる足元には緋色の羽が無数に満遍なく積もっていた。思考は……正常。直接触れなければ大丈夫なのか、もしくは他に何かがあるのか……
目の前にはさっき襲って来た奴らと同じ衣服に身を包んだ人間らしき者。
「かかれ」
急に周囲に数十人ほどの人が出現。囲まれた。そして全員が武器と呼べるか怪しい物品を持っていた。まぁ確実に異常持ちの道具だろう。
まず絶対条件として、異常はそこにあるだけでも危険故に、ある程度距離を取った状態を維持して鎮圧を……
「はあ!」
終わった。常盤が全て拳の風圧で吹っ飛んだ。取り敢えず目の前の人は残して事情聴取と……ん……?一瞬目の前がバグったように……な?!
「?!」
「復活……いや戻った?!」
白銀が今叫んだ通り、復活とかそんな次元では無い。時間が巻き戻った。今さっき常盤が吹き飛ばした奴等が今まさに俺達を襲おうとしている。
……恐らく何かの異常。周囲を観察しなければ。常盤はさっきと同じように拳の風圧で吹き飛ばした。
……分かった。
また戻ったが、目星はついた。初めからずっと目の前にいるボス格か幹部格の男。その男が手を後ろに置いてこちらから見えないようにしているが、腕が一瞬動いた。
アイコンタクトで常盤にさっきと同じことをして貰い、俺は即座にあの男の腕を撃つ。やはり、手に何かを持っていた。痛みで流石に後ろに置いていた手が前に出て、その手には一つのボタンが握られていた。
間髪入れずに銃弾で遠くに弾き飛ばし、いつの間にか指示を出さずとも動いたコアがあのボタンを回収した。地味に危なかった。あと少し遅れていたらボタンを押される所だった。
「チッ!」
よし。恐らくあのボタンは味方のみの時間を巻き戻す代物。現に常盤の息がほんの少しだけ上がっている。こちらの銃弾切れや体力切れを狙ったのだろうが、流石にそんな手には引っかからない。
あの男が一枚の布を取り出して自身の前に広げた。次の瞬間にはその布と共にあの男が消えた。また仕掛けてくるだろう。今の内に態勢を整え現状を知らなければ。
「……この空間の端には壁があります。恐らく壁を突き破ればエリアの全容が分かるかと」
「本当か?なら……」
「私に任せて!」
常盤がそう名乗り出て暗く黒い空間を真っすぐ走り、すぐに何かに頭をぶつけた。ゴンッとかなり良い音が鳴った。
「……せい!」
かなりの風圧……と言うか……抽出黒錠剤をいつの間に呑んだんだ?これほどの威力だと腕はただでは済まないはずだが。いや、今はどうでも良いか。今は白銀とコアと共にこの風圧に耐える。
真っ黒な端の分からない壁にヒビが入り、そのまま風圧に耐え切れず風圧で消し飛びその先の光景が視界に入る。
そこは、教会だった。継ぎ接ぎに教会らしい物が繋がれた歪な世界。天井のステンドグラスから良く分からない光が差し込む教会内。俺達はそこにいた。
◆◇◆◇
「第四評議長より異常評議会へ報告。カニバルカルトの完全なる壊滅を確認。現在はエリア83鏡海島にて生死不明の緋色信仰の構成員を発見。脳解析の結果現在我々が注目している者達に返り討ちにあった模様。巡回の一時中止による緊急任務の報告は以上。次なる命令を求む」
「ほうほう……成程。ならばその者達を追跡し、可能なら救出せよ」
「第一評議長……ただの戯言なら今度こそ貴方にブラックホールを叩き込みますが」
「戯言では無い。緋色信仰の者があの者達に返り討ちに会ったのだろう?ならば緋色信仰の本拠地で総攻撃にあっているはず。いや、救出しなくても良いな。第四評議長はそこに現れて緋色信仰の者達を攻撃すれば良い」
「第一評議長。今度は何を推測しましたか?…………了。これより、エリア521贄求む狂会……緋色信仰本拠地に急行す」




