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18話 同族食 その1

「分かったことがあります!」

部屋から出て来た常盤が開口一番そう言った。


常盤が部屋に持って行ったやつの姿が見えないが、常盤曰く緊張が解けて眠っているらしい。


「この建物は同盟関係にある組織と一緒に軍事用に建てられたみたいで、増長して同盟関係にある組織と一緒に他組織に喧嘩を吹っ掛けたら、その他組織がヴェルデント商会を引き連れて、結果こうなっちゃったみたい」


……もしかしてヴェルデント商会ってかなりヤバい組織だった?いや、そもそも法則を色々と無視した物品を販売している時点で既にヤバい組織だったな……


この建物内を見た限り、国家軍事力に匹敵するレベルの大量の兵器や、この武器庫に向かう道中見た程度で、一師団程度の人が見受けられた。


まだ探索し切れていない場所はある。と言うか、変死体の中に、明らかに不自然に壁にこびりついて人の形のような煤のような物が無数に確認した。


あれには心当たりがある。膨大な熱で人間を蒸発させた跡、それこそ核爆破に近い熱を浴びた結果の果て。恐らく数十数百では済まないほどの人数が蒸発させられている。


流石の防護服でも少々無理があるだろう。ヴェルデント商会とは距離を取り、敵対は絶対に避けなければ……


「それで、この建物の中に別エリアに通じるゲートがあるみたい。それがこれ!」


バッチ……?常盤が取り出したのは、包丁と赤い頭蓋骨の絵が彫られた金属製のバッチ。手の平サイズでかなり精巧に造られている。


「何とか信用してもらってこのバッチを貰ったの。これを所持した状態で特定のキーワードを言えば、今すぐにゲートがここに開く」


予想以上に情報を引き出したな……


「それで、このバッチで生成されたゲートの先は、人間のみで構成された組織カニバリカルトがあって、あの子はそこに所属してるって」


カニバリ……カルト……いやまぁ、名前だけでの判断は駄目だな。実際にこの目で見なければ実態は分からない。


「その前に、常盤さんにこのナイフについて説明します」

常盤が今にもゲートを開こうとしたその時、白銀が常盤の喉を貫いたナイフを見せた。


「このナイフには、対象に当たるまでの障害を全て無視する異常を持っていて、それが2本。この建物内で類似したナイフが複数あった。物理減衰シールドを貫通した事実から、異常を持つ武器が複数あるか量産可能という可能性がある」


「えーっと、あー!無策で向かったら危ないってことだね」

白銀の説明に常盤は手を叩いて理解したようだ。それで、以上のことから考えられるのは……


多耐性防護服というアドバンテージの消滅。

「多耐性防護服というあらゆる物理的な攻撃を耐え、着用者を護ると言う大きなアドバンテージが消えてしまう」


……さてどうするか……無理に行く必要は無いが、コアが未だに別エリアへの道筋を見つけられていない。ここで右往左往するよりも、知っている道を進む方が良いかも知れない。


そもそも仕事上、新たなエリアを調査し探索しなければ……


…………確かカニバリカルトが人間のみで構成されている組織……この建物の惨状の件で大人しくしていれば嬉しい。


その上で俺達と友好関係を構築すれば、何かあった時の助けになってくれるかもしれない。その為には……この普通の服からかけ離れた多耐性防護服では警戒される可能性が……ならどうするか……


「……コア。亜空間格納庫に私服はあるか?」

「はい。三名それぞれに専用の服があります」


俺の言葉に常盤と白銀が頭に?を浮かべた。まぁ、無理もない。


「賭けにはなるが、こんな姿で現れたら警戒される可能性がある。そうならない為に普通の服でカニバリカルトに行こう」


「確かに警戒されても仕方ない色合いと形だけど……」


「不満?」

『不満か?』

今の言葉を聞きつけた白銀と荒起博士がそう言った。何とも言えない圧に、常盤が静かに口を紡いだ。






「え、ちょ……!ははだゃ、えっと、その……!キミたちは……見て何とも思わないの?!」


コアが出した服を受け取り、かつて練習した早着替えの技術で即座に着替え、無理に急いで着替えようとして詰まっている常盤の着替えを手伝っていると、この光景に白銀が舌を噛みながらそう言った。


「いやぁ……善は急げって言うし」

「感情的になって時間を無意味にロスする訳には行か無いしな」

俺と常盤の思考回路は似ているようだ。


「……こんの、合理主義コンビがぁ……!!」

白銀は背を向けて拳を震わせた。






白銀含め約1分で着替え終わった。


防護服は亜空間格納庫に仕舞ってもらい、最低限の護りとして小型の物理減衰シールド発生装置を3人分。


そして小型で悟られ難い擬態タイプの武器をそれぞれ隠し持ち、準備は整った。


……そう言えば、あの生き残りはどうしたのだろうか。俺達を殺しに掛ったとは言え、流石にこのまま放置するのは気が引ける。


「私もそれ聞いたけど、大丈夫だって。それなりの自衛手段とか食糧調達とかの心得は持ってるらしいから」

なら大丈夫か。






「それじゃあ、始めるよ!」

常盤がバッチを握り、俺と白銀は常盤と背中を合わせる。


「えーっと、確か……72と35と44と45!」


俺達の足元に丸い光の渦が出現した。


このゲートは対象の足元に現れてそこから別エリアに行くことが可能であり、元々1人用な為、俺と白銀が常盤と背を合わせることになった理由でもある。


それにしても、特定のキーワードが4つの2桁の数字とその間のとだと言うことには驚いた。同時にこんなキーワードを誰が思い付いたのか……かなり間抜けに聞こえる。


足元の光の渦が真上、つまり俺達に向けて光の柱が放たれた。一瞬攻撃かと思ったが、特に身体に害は無いようで安心した。


約5秒ほどで光の柱が輝きを失い、同時に周囲の景色が見えるようになった。


周囲にはコンクリートのような物体に囲まれ、然程広くない四角い空間に金属製の両扉。灯りは電球1つで薄暗く、両扉のすぐ横には何度も先の建物内で見た服装を着用した男が1人。床には、正確には俺達の足元には機械的な台がそこにあった。


「……えー、こんにちは!」

驚きその場にへたり込んだその男に対し、常盤が挨拶をした。だが男は小刻みに震えている。


「えっと、私達はこのバッチを持ってる人からここに来ればもう安全って聞いたんだけど……」


「あっ、そ、そうですか……それなら、ボスのとこまで案内します。ついて来てください……」

少し小刻みに震えながら、常盤の言葉に納得した様子で金属製の両扉を開けた。






「ようこそカニバリカルトへ!この過酷な世界を生き抜く人間オンリーの組織に!ここは安全だ。我々は君達を歓迎しよう」


カニバリカルトのボスと名乗ったのは一際豪華な服装の人。そしてテンションが高い。


あの男に案内されるまま空間を出ると、その次は廊下に出てた。そのまま廊下を進みボスと名乗る人間がいる広い部屋ような空間に案内された。敵意はなさそうで安心した。


「…………検索中…………ヒット。エリア309ルームルーム迷宮。数十個の大きな部屋とそれらの部屋を繋ぐ廊下で構成されたエリアです。カニバリカルトのボスが言うように、敵対的な存在はおらず安全と言えます」

この状況の最中、いつの間にかコアがこのエリアについて検索を始め、先程よりもかなり早く検索を完了し情報を言った。


「おぉ……!長いことこの世界にいるが、自我を持つ機械は初めて見た」


流石にデルメントルトのような科学技術は珍しいんだな……


「ヒット…………緋色信仰の傀儡組織との呼び声あり」

「え?!」


……確か現世帰還隊を壊滅させた組織。白銀から聞いた情報からだと、かなり危険。その傀儡組織なら、警戒するのが得策。今すぐこの場を制圧するのも視野に入る。


「それは違いますよ。我々カニバリカルトは緋色信仰とは協力関係にあるだけです。緋色信仰が大変なら我々カニバリカルトが助け、我々がピンチなら緋色信仰が助けるという協定を結んでいるだけです」


……怪しいな……






それからまた別の部屋に案内されると、そして長いテーブルの上に乗せられた本当に食べても良いのかと疑問に思うほど、豪華な食事が出された。


取り敢えず椅子に座ったが、あんな情報が出れば流石に食べることを躊躇してしまう。


しかもこの部屋にはボス含め100人以上の人がいる。見た限りでは小さな子供から歩くのもたどたどしい老人まで、老若男女様々。


現状俺達はまだ食事を取っておらず……そんな場合では無かったせいもあるが……今の所空腹だ。用意された水を飲んでから考えよう……


あ、美味しい。


常盤がソースのかかったミートボールらしき料理を口に入れると、驚いた様子で目を見開いた。


「あっ、これ人肉だ」

「ぶっ!」

「がはっ!ゲホッゲホ……はぁはぁはぁ……」


口に入れた水を吐き、椅子から立ち上がってこの場の全員に対し擬態型の銃を向ける。もしもの時を考え、擬態型の銃を所持して正解だった。


だが何で常盤が、その肉が人肉だと言うこと……いや今はそんな場合では無い。


「そんなに警戒なされずとも、我々は全員カニバリストですが、貴方方を取って喰おうとは考えていません。我々は先の一件で同志が減ってしまいまして、この場にいるのがカニバリカルトの構成員全員です。そこで減ってしまった同志を増やす為に、食人の素晴らしさを伝え貴方方を同志に加えようとしたまでです。ですが、そんな様子では同志に加えるのは難しそうですね……」


名前通りの組織なのか。直球過ぎる……


「えーっ……とー……昔、捨てられた時に空腹過ぎて食べちゃったんだよねー……あんまり記憶に残ってないけど、味だけは…………覚えてる」

俺の疑念の目を察したのか、常盤が言い辛そうな声色でそう言った。


「おお!貴女は我々の同志ですか!」

「うるさい!勝手に決め付けないで!」


銃を構えたまま警戒するが、周囲にいる奴等はただ常盤との会話を続け…………つづ……け――――

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