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17話 欠陥に群がる罠 その2

外の大火災も殆ど落ち着き、先には鎮火した焦土の大地。


このエリアに来てから約5時間が経過した。1回目の世界逆転から約2時間で逆転し、そのまた約2時間後に逆転した。


以上のことから、このエリア全てが逆になる周期は約2時間。計3回の逆転全ての前に、僅かな振動が合図と成って発生することが分かった。だが……


「……一番の問題は、逆転の方向性が完全ランダムと言うことだな」


このエリアが持つ逆の異常は、どれが逆になるのか予想がつかない。1回目から噴火がまだ持続していた火山が2回目を過ぎた時、湧き出て火山を流れる溶岩が氷河に変貌し、同時に大火災の原因となった溶岩が氷になって火で炙られて氷河から水に、3回目は氷河に包まれた火山が植物生い茂る生命力に溢れた山に、そして重力の方向は変わらなかった。


約2時間の周期があるものの、逆になった物には元となった物の逆になると言う法則があるものの、完全ランダムなら話は変わる。


単純に分かりやすく規則性がある異常や、感情に振り回された支配人ジョキュのように予想や予測が立てやすいものとは違い、完全ランダムでは予測も虚無に消え祈ることしかできない。


「重力と反重力。火山と氷河……いや、この場合は高熱の溶岩が氷点下の氷に、溶岩と氷河が正しいか……それで最後に死の世界の氷河から生命溢れる緑の山に。全て対義語で説明がつく」


「うーむ。見た感じ伝言ゲームが近そうだけど。逆にする過程で、どんどん始めから遠ざかってる感じがどうも似てる……」


「……確かに、火山の噴出で巻き上がる物質の逆、溶岩から氷河、氷河から植物…………もし、逆になる物の制限が無ければ、もし仮に固体が気体になったら……」

「否定はできない。異常を持つのは世界全て。もしそうなった場合は……手遅れなほどこのエリアの空気を十二分に吸っているから、どう足掻いても窒息死」


流石にそんなことまで対処するのは無理だ。そうなった場合は諦める他無い。


「2時間ごとに逆になるなら、このエリアの物質を持ち帰るのは危険だな……逆転の果てに恒星にすらも成りかね無い」


やはり、早く行動を起こさなければ不味いか……


「コアは何か分かった?」

常盤がコアにそう聞いた。


「いえ……エリア307欠陥惑星の情報が余りにも欠落していまして、先程から検索を止め周囲の生命感知を行っていました」

「……初めて聞いたんだけどそれ」


「話していませんでしたっけ」

コアがすっとぼけた。言葉から感じさせる限り、感情豊かだな。


「今はそれよりも、生命感知を行った結果。1つ分かったことがあります。ある場所に、人間の生命反応を感知致しました」


に……人間?!そ、そうだった。完全に忘れていた。この異常界には怪物や狂った世界に限らず、人間も別世界から異常界に来てしまうことがあるんだった。


「となると、まずはこの洞窟から2時間以内にそこまで向かうことになりそう」

「……となーると、さっき逆になったから……」


先程2時間の経過を過ぎて、今は……

「26分。あと1時間34分ここで待機だな」






……あと10秒で2時間経過…………4、3、2、1、0。


「……何か変わった?」

「いや、分からない。だがさっきまでの逆転が分かりやすかっただけで、何か逆になったのは確かだろう」


「目に見えて変化が無いことは、安全とは言い難い……でもどうする?また2時間待つ?」

白銀が悩みつつ俺と常盤にそう聞いた。


2時間の逆転ガチャは可能性と死の隣り合わせ。全てにが逆になる可能性があるのは、想像以上に面倒で危険。


だが目に見えての変化が無ければ、些細な何かが逆になっただけでこちらには何の影響も無い可能性もある。


「……はぁ…………まずは、動こう。その人間がいる場所に向かおう。何か分かるかも知れない」

……考えれば考えるほど頭が痛くなる。仕方ない……


まずは洞窟から石を投げて何が起きるか確認する。弧を描き重力に従って落下。不審点無し。


転がっていた石と石をぶつけて叩いてみる。軽い音を鳴らした。不審点無し。


呼吸、温度、湿度、特段不審点無し。


「大丈夫そうか……よし出よう」

「りょーかい」

「了解」


まずは洞窟からでて焦土の大地と成った灰の地を踏み締め進む。特に不審点無し。


「人間の反応は?」

「あちらをまっすぐです」

コアが指し示したのは洞窟から右手の方向。


その方向に進みつつ、適当な方向に銃弾を1発放つ。変に曲がったりせず真っ直ぐ飛んで岩にぶつかり跳弾した。不審点無し。


特に何も変化は…………ん……?空から光……?


いや、まさか……隕――――

『ドゴォーンッ!!!』


「走れ!隕石が降り始めた!」

「……はい?!」


冗談じゃない!こんな物、どう足掻こうが物理的に死ぬ!死ななくとも衝突の衝撃で人間程度の重量は容易に吹き飛ぶ!


「何が逆になった?!誰か分かる……?!」

白銀が降り掛かる隕石から逃げながらそう叫んだ。そう言われても、分かったら苦労はしない。分かっても既にどうにかできる範疇を超えているが……


「いえ、恐らくこの隕石は逆になる異常によるものでは無く、単にこの星の軌道が小惑星群に衝突したのかと」

「まじかー……」


……成程……2時間経過から多少ラグがあったのはそういうことか。それはそれで問題だな……


「……じゃあ何が逆になった?!」

「分かりません」

コアは即座にそう言った。


取り敢えず人間がいると言う方向に向かって全力で走る。隕石はまだまだ降り続け、周辺の地面が穴ぼこになるほど降っている。


だが本当に何が逆に……

『ドゴォーンッ!!!』


こうなるなら洞窟に引きこもっていた方がまだ安全だった。しかしあの洞窟からはかなりの距離を走ってしまっている。洞窟に戻るのはリスクが……ん?あ、洞窟が隕石の直撃を喰らって撃沈してる。


安全……では無かったな。隕石の威力から、待っているのは圧死だったな。


しかし、本当に何が逆になったのかが分からなければ、それは予想外となって襲い掛かる。


『……パキッ』

……?何の音だ?隕石の轟音の中に響いたこの音は一体……今聞こえた音の発生源は、足元。


今俺達がいるのは焦土となった森林地帯を抜け荒野地帯に入った直後。足元にはたまたま踏みつけた一本の草と見渡す限り土色の絨毯。ならば何が…………草に霜が、いや待て。草が白く凍っている。さっきまではこんなことは起きなかった。考えられるとしたら、逆による影響。


周囲を見渡してみる。遠くの火山にある逆によって生み出された森林が真っ白だった。まさか……


「コア!今現在のこの場の気温は?!」

「少々お待ち下さい」


「新條君!どゆこと?!」

「すぐに分かる」


「……計測の結果、現在の気温は-60度。現在進行形で低下し続けています」


やはりだ。逆になったのは熱。そして単純に熱いと寒いが逆になったのでは無い。それなら現在進行形で気温が低下せず極端に変わるはず。


だから逆になったのは発熱と吸熱。


熱を発する発熱と、熱を吸収する吸熱が逆転したのだろう。だから植物は自らが持つ水分で凍り白く色を変え、照りつける太陽が冷気を発する星に姿を変えた結果この星の気温は低下し続けている。


「逆になったのは発熱と吸熱!防護服のお陰で気付かなかったが、この逆は防護服のお陰で無視可能だ!今は隕石を避けることに神経を注げ!」


「はぁ、はぁ……」

「白銀ちゃん!」


常盤が息を切らした白銀を担ぎ、持っていた銃をコアに預けた。


「コア!あとどれくらい走れば到着する?!」

「約4kmほどです!」


……流星が降り注ぐ中、4kmか……死ぬ!想像以上に遠くて死ぬ!

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