表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
二章 法則を超越した怪物達
61/78

14話 人の不幸を買う商売 その1

人形軍団との攻防を制した日の翌日。


研究所での攻防時に生まれた弾痕や破壊跡を修繕する為に、そしてこのような事態になるのを未然に防ぐ為に、研究所の大幅改修工事が始まった。


改修範囲は研究所全て。そして工事は短くとも10日以上に及ぶのだという。その為、ほぼ全ての職員に一時的な帰省を命じられた。


それから更に次の日。


行く宛の無い常盤と、ほぼ実家と化していた極秘異界研究所から半強制的に出された白銀と共に、俺の生まれ育った実家に着いて行くことになった。


正直不本意極まる所だが、特殊部隊員は俺以外家は無いし、何より重要機密を知る人物を赤の他人に任せられないと、真剣な顔の荒起博士に何度も何度も言われ、仕方無く了承させられた。


俺含めた3人には、自身が動かせる移動手段。車を持っていない。俺は車の免許が取れる時に心が折れたので取っておらず、常盤は幼少期に両親に捨てられた影響で免許を取得できず、白銀はそもそも子供。


その為、今は電車を乗り継いで俺の実家に向かっている。


「中々の田舎だねー!」

常盤が電車の窓から顔を出し、風を受けながらそう言った。


田舎か……確かに山は多少近いし線路のすぐ側には田んぼが幾つも並んでいるし、コンビニやスーパーまでは多少歩かないと見えてすらこないし、木々がよく生い茂っていて家もかなりまばらだが…………


「……それは褒めているのか?もしくは貶しているのか?」


「当然褒めてるに決まってるじゃん!」

自信満々にそう言った。


今この車両に乗っているのは俺と常盤と白銀と他数人。


コアはこの場にはいない。昨日常盤と白銀が俺の実家に着いて行くことになった時……



◆◇◆◇



「ボクもご主人様に着いて行き――――」


「お主はこっちじゃ!オーバーテクノロジーの塊をおいそれと世に出す訳にはいかん!」



◆◇◆◇



という感じで、コアは今荒起博士と共にいる。コアはずっとうだうだ言っていたが、荒起博士なら預けても大丈夫だろう。


「突然の訪問になるけど……新條さんの親御さんはこの件に了承済み?」

白銀が俺を見上げてそう聞いて来た。俺だけならまだしも、突然の訪問者が2人もいればそんな疑問が浮かぶのも無理はない。


「ああ、休暇が与えられて実家に帰ることになったが、突然の休暇で家を用意できなかった同僚がいる。そのままにする訳にもいかないから、そっちに連れ帰ることになった。と言って、父と母の双方に言質を取っているから大丈夫のはずだ」

「それなら良かった」


白銀は安心したように視線を下ろし、今日一番の大きな欠伸をした。


電車はガタゴトガタゴトと揺れ過ぎない程度に揺れ、それが白銀の眠気を加速させている。思った通り、数分で夢の世界に旅立って行った。






電車を降りて無人駅を過ぎ、夕日が照り付ける道を歩く。


当然だが俺が先を進み常盤と白銀が俺の後を追う。道中何度か白銀が道を外れスイーツ店に行こうとしたが、その度に常盤に回収されていた。


数十分ほど歩き、数ヶ月ぶりの我が家に到着した。


「……おー、結構大きいね」

常盤が我が家を見上げてそう言った。


「ワタシの研究室の3倍はある……」

白銀が急に悲しいことを言い出した。元いた世界の白銀の研究室は相当狭かったんだな。


時間は……予定通り。到着時間は事前に伝えてあったから大丈夫なはず。今我が家にいるのは母のみ。父は早くとも19時までは帰らない。


「それじゃあ着いて来てくれ」

「緊張する……」

白銀は少し萎縮した様子で常盤の陰に隠れた。水葉所長の嘘発見器の時、友人は誰もいないという結果が出たから誰かの家に入り泊まるのは初めてなんだろう。


取り敢えず白銀のことは気にせずに我が家の扉を開ける。


「ただいま!」

この大声を家の中に響かせる。多分これですぐに来るだろう。


「お帰り!蓮!!」

予想通り大声を響かせた瞬間エプロン姿の母が玄関に来た。


「隣のは……まさか恋人?!ああ!家の蓮に遂に春が!」

「違う!この人は俺の同僚だ!」


母が本気で勘違いを起こしそうになり、俺はそれに全力で訂正する。


あの研究所では生命の危機ばかりでそんな暇は無いし、そもそも俺は恋愛経験ゼロだ。何度が告白されたことはあるが、挑戦に時間を費やす為に全て断った。心が折れた後も告白されたがそんな気は起きず全て断った。


「常盤凪沙です!初めまして、新條君には職場で色んなことができて助かってます!」

常盤が敬礼のポーズで自己紹介をした。母はあらあらあらと言いながら近付き、常盤の手を握る。


「話には聞いてるわ。貴女が蓮の同僚ね。ようこそ蓮が生まれ育った家に。歓迎するわよ!」


どうやら常盤は母のお眼鏡に叶ったようだ。俺としてはほっとした。母は武術を幾つか嗜んでいるので、泊めることを反対されたら相当面倒なことになっていた。


「あら、その子は?」

母が常盤の背後に隠れる白銀を不思議そうに見つめた。


……そうだった。同僚が泊まりに来ると伝えていただけで、2人、しかも子供が来るとは伝えていなかった。痛恨のミスをしてしまった…………なんて言えば……そうだ!


「しゃ、社長の孫娘。荒起白銀という名前で、帰省するなら一緒に連れてやれって言われて連れて来たんだ」


間違ったことは言ってない。パラレルワールドだろうと白銀は荒起博士の孫。研究所ではNo.2の地位を持っている。


いや、白銀……社長の孫娘と言う設定の帳尻合わせが面倒だとしても、そんな目を俺に向けないでくれ……お願いだから……


「あらそう。それじゃ上がって上がって!私は夕食の準備するから、蓮は2人にこの家を案内してあげて」

「分かった」






まず2人に靴を脱いで上がってもらい、客用のスリッパを履かせる。


「新條君。この下は?」


それから家の間取りの説明していると、常盤が地下に続く階段を見つめ指をさした。


「あー、確かこの先は物置だな。俺が今までに取ったトロフィやメダルとかが全部入っている」


「入ってみていい?」

「……それは構わないが」

俺は常盤の要望通りに階段を降りて、物置の扉の取手を持ち目の前の扉を開く。


「これ……全部……?」

常盤は唖然とした様子で物置に、入れなかった。


地下にある物置の扉を開くと、そこには扉寸前にまで迫るダンボールの壁が形成されている。強引に入ろうとしても、人が入れる隙間なんて無い。タックルをかましてもダンボールの壁に弾かれる。


「……いくら何でも多過ぎ…………」

白銀はダンボールの壁に触れてそう呟いた。確かに多い。だからこの物置に全て押し込んだんだが……何度見てもこの圧迫感は変わらないな……






「…………なぁ、常盤と白銀に用意した部屋は反対側で、俺の自室に入り浸って良いと言った覚えは無いんだが」

「いいからいいから!次はこれをやろ!」


この家を大体案内し終わり、最後に常盤と白銀に用意した部屋がある二階に案内すると、常盤が俺の部屋は何処か聞いて来た。俺の自室は2人に用意した部屋の反対側だと伝えると、常盤と白銀が用意した部屋に荷物を置いてすぐに俺の自室に突撃して来た。


突撃して来た時。白銀は常盤に手を引かれていたから、常盤が強引に連れて来たらしい。


その後常盤にゲーム大会用に買った大量のゲーム機とゲームカセットを見つけられ、今に至る。


「ん?これ……ストーリークリア…………プレイ時間3時間46分って、新條君、確認するけどこれ相当なマゾゲーだとね?!」

常盤がゲーム機の山の底から1つのゲーム機を取り出し起動して驚愕し、そのまま驚愕しながらゲーム画面を俺に見せた。


「あー、それは。タイムアタックデータがまだ残っていたのか。確か5年くらい前に、これのタイムアタックしたんだ」

随分懐かしいのが出できたな。当時そのタイムアタックで世界一位になったが、数日で記録を即更新されてもうやらないと引退したのが懐かしい。


「蓮ー!お2人さんも夕飯できたわよー!」


一階から母の声が俺の自室にまで響いた。取り敢えず、まず常盤をゲーム機から剥がす。散乱したゲーム機にゲームカセットを片付け、一階に降りる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ