表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
二章 法則を超越した怪物達
58/78

13話 楽園を望むは人の形 その4

最低限の装備を着替え、俺と常盤と本郷で制御室に向かって廊下をひた走る。


武器庫に立ち寄る暇は無く、武器は荒起博士の研究室にあった長い棒で代用する。兎人形のチェーンソーを弾き飛ばす為に使ったモップは使い難い上に持ち運び難く、掃除用具の部屋に返した。


常盤はその身一つ。本郷はメリケンサック。現状まともな遠距離武器は無く、俺は中距離、常盤と本郷は基本的に近距離しか対応できない。


今のところ遠距離武器を使う人形はいないが、あいつ等は追い付けないと判断するとすぐに武器を投げて来る。


急ぎつつも慎重に行動しなければ……






制御室に向かって廊下を進んでいると、1体の人形に遭遇した。


その人形はかなり大きかった。人間サイズだった兎人形の一回りも二回りも大きく、異常に開いた口で焼死体のように全身が焦げた警備員を丸吞みにしていた。


こちらに気付いた人形が口からダイナマイトを取り出し、こちらに向かって投げ付ける。導火線には当然のように火が点けられていた。


もしかしてさっきの大爆発はあの人形の仕業か……?まぁ実際に見ていないから確証は無いが。


投げられたダイナマイトは常盤が蹴り返し、丁度人形の至近距離で爆発した。


しかし、ダイナマイトの至近距離爆破は多少ダメージを負っただけで終わったようだ。爆破の硝煙が凪いで真っ先に見えたのは、人形は何の欠損も無くその場に立っている姿。


人形はまた口からダイナマイトを取り出し、こちらに投げ付ける。間髪入れずまた口からダイナマイトを取り出し、またこちらに投げ付けた。しかし全て常盤に投げ返された…………だんだんと化物じみているのは気のせいか?


取り敢えず、投げ投げ返されの攻防の隙を突き、人形を至近距離に迫る。そのまま棒を横に振り回し、常盤と本郷がいる方に向かって弾き飛ばす。


常盤と本郷は一緒に拳を構え、人形が近くに来た瞬間に2人の連打が叩き込まれた。


その威力に人形の体は一瞬で綿屑に変わり、オーバーキルと思えるくらいに粉々になった。


すると中からは先程丸呑みにされた警備員の死体と大量のダイナマイトが出て来た。ダイナマイトには何故か全てに火が点いていた。


「逃げろーっ!!」


ダイナマイトから全力で逃げ、近くの部屋に入り常盤と本郷が入ったのを確認し扉を閉めて鍵を掛けて扉から直角方向に逃げる。爆発と轟音の中、案の定ダイナマイトの爆風で扉が部屋の反対側に吹っ飛んだ。






ダイナマイト人形を倒し急ぎつつ廊下を進むと、やっと制御室に辿り着いた。


白銀とコアの話だと、ヘヴンシステムを起動できる知能があるのなら、アビスシステムを制御する制御室を人形軍団によって占拠されている可能性がある。


俺としては占拠して欲しく無いが、これはただ願望でしか無い。白銀とコアがそう言うのなら、恐らくそうなのだろう。全力警戒で制御室の扉の横にあるパネルに荒起博士から教えてもらった数字を打つ。計20の数字を打ち終わると、扉が開いた。


制御室では、白銀とコアの言う通り人形軍団によって完全に占拠されていた。


入り口から見て1番目立つ場所には、一際目立ち強者の風格を漂わせる人形がいた。周囲の人形と同程度の大きさ、つまり30cmの高さを持ち、戦国武将のような甲冑を見に纏い、刀を腰にさした侍の猫の人形。


侍猫人形は俺達を認識すると鞘から刀を抜き、片手で刃をこちらに向けた。するとおもむろにもう片方の手を上に上げた。


……まさか。


「全員戦闘態勢!」


侍猫人形が片手を振り下げた瞬間、制御室にいた全ての人形が俺達に襲い掛かった。


「多いなー……」


守る対象と思われた本郷は、メリケンサックを装着し襲い掛かる人形を次々と殴り飛ばしている。守る必要が無いのはかなり楽だ。意識を目の前のことだけに集中できる。


しかし、強者の雰囲気を漂わせる侍猫人形が両手で刀を握った。あの様子から、攻撃のタイミングを伺っているようだ。


人間3人対人形軍団の攻防の中、本郷が人形軍団の中を突き進みある一点に向かって直進した。


俺や常盤はアビスシステムをどうやって停止させるのか、その方法を知らない。重要な機械やコンピュータが密集してるからと言う理由で、特殊部隊の入室は許可されていない。


当然俺と常盤が制御室に入ったのは初めてだ。だからこそ、制御室に立ち入ることが可能な本郷の同行が必須。荒起博士もそこの所は理解しているだろう。だからこそアビスシステム停止に向かうメンバーに本郷がいる。


「本郷避けろ!」


俺が迫る危機を伝えたが、本郷は無視して直進した。迫る危機とは人形が本郷に向かって武器を構えていたこと。そしてその人形が侍猫人形だったこと。


本郷がある一点に向かっていることに勘付いた侍猫人形は、一瞬にして間合いを詰め、本郷の左腕を根本から切り飛ばした。


スキンリーパーによって常盤の腕が切り落とされた時は、常盤だから何とかなった。だが本郷は普通の人間。腕が切り飛ばされれば大怪我どころの騒ぎでは無い。片腕欠損の命に関わる重症だ。


早急に処置を施さなければ腕からの出血による失血死で本郷が死ぬ。


だが本郷はそのまま突き進み、恐怖と痛みに臆せず黄色と黒の模様が回りに入ったボタンを、上のカバー諸共叩き割った。


ガラス越しに制御室からアビスシステムを見下ろすと、亀裂が萎み完全に消滅。丁度その頃、一体の人形を除き制御室を占拠していた全ての人形を破壊し終わった。


だが最後に残ったのは、本郷の左腕を切り飛ばした侍猫人形。1番厄介な人形が残った。


今侍猫人形の相手をしているのは常盤。あの殺傷能力を見せつけられては、安易には近づけない。


……近付かなくて正解だった。たった数秒の殺し合い。たった数秒で、常盤によって侍猫人形は破壊された。だが常盤もただで済まず、全身を数十回切られ切り落とされ切断されを繰り返し、何とか侍猫人形から勝利をもぎ取っていた。


俺に防護服があったとしても勝てるかどうか怪しいレベルの火力、速度特化の人形だった。あの兎人形が生易しいと思えるほどに。


周囲を見渡す。少し離れた場所に本郷の切り飛ばされた左腕があった。


切り飛ばされた左腕を回収し、重症人の本郷に近付く。医療箱を見つけたから、頑張れば腕を繋げられるかもしれない。幸いここには異常界では無い。道具は沢山ある。


俺がすぐ側に近寄る。腕を切り飛ばされた本郷は床に寝転がり、血が噴き出る殆ど無い左腕を上に伸ばしていた。


「安いもんだ、腕の一本くらい。無事でよかった…………くぅー、これが言いたかった!」

……言い時を見計らったように、本郷が突然そう言い出した。


「腕失ってまで言うセリフがそれか?!とにかく止血だ!」


「そうだよ!この人狂ってるって!早く切られた腕を切られたとこにくっ付けて!そしたらこれ飲んで!新條君!接合手術お願い!」


「言われなくても分かってる!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ