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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
二章 法則を超越した怪物達
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11話 ヴェルデント製製品実戦性能テスト その4

「!……ようやく切れたか」

第二評議長がそう言うと、第二評議長の足元を中心として漆黒が広がり始めた。第二評議長の言った通り、あの杖の効力が切れてしまったのだろう。非常に不味い状況になってしまった。


俺達の所にまで漆黒が迫ろうとしたその時、突然漆黒が止まった。


「なんだと?!エリア17の時間異常を加味しても、周期からは大幅に外れているはず……」


漆黒の発生源に視線を移すと、人間なら耳がある位置を右手で押さえ、第二評議長が狼狽えていた。


「…………仕方ない、私はこれにて失礼しよう」

「また、今回のように俺達を殺しに掛かるのか?」


はぁ、と溜め息を吐き立ち去ろうとする第二評議長に対し、俺自身が気付かぬ間にそう聞いていた。第二評議長は黒仮面に目を出現させ、俺と目を合わせた。数秒経つと目を反らし天井を見上げた。


「安心しろ。今回のはただのお遊びだ。殺す気は無かったとは言え、商品の詳細を知らなかったことは、まぁ大目に見てくれ。私としてもこれ以上の干渉はしない。だが……予想外となるその時まで…………特異点となるその時まで、注視させて貰おう」


そう言い残すと足元の暗闇にポチャンッと沈み、漆黒は全て消え去っていた。


「助かったのか…………?」

「…………たぶん」

「干渉はしないって言質は得られた……けど、どうする?」


「どうするもこうしたも、一度別のエリアに行って荒起博士に報告するのが先決だろうな…………」



◆◇◆◇



「現状は?」

『はい。予測されていた周期から大幅に外れ、異常的保持融合生命体ガオンが暴走を開始しました。現在は異常抹消剤の投与で一時的に沈静化しましたが、いつまで保つかどうか……』

「そうか。私が到着するまで抑えつけておけ」





第二評議長が早歩きと走りの中間の速度で機械的な廊下を進んで行く。時折精密機械の塊である両手を確認し、何度か微弱な電撃をその手に放ち調整を続けた。


その場に振動と咆哮が木霊した。それと同時に第二評議長が厳重に閉じられた扉の前で立ち止まる。数瞬の内に扉が数十もの工程を終わらせ、扉が開く。第二評議長は扉の奥へと足を進めた。


そこには怪物と呼ぶのもおこがましい、怪獣がそこにいた。


数百メートルもの大きさを誇るその怪獣は、その大きさをすっぽりと覆うほどの機械的な空間で電子的な何千もの鎖に全身を巻き付かれ、何かの液体を送っている数十のチューブが怪獣に流し込まれ、怪獣の手の届かぬ高さにある広い作業スペースにて、多数の機械と多種多様な怪物が忙しなく動き各々の仕事を続けていた。


第二評議長がその場に現れると、多種多様な怪物の中で全く同じ服装をした怪物達が第二評議長に対し敬礼し、第二評議長は無視した。


作業スペースから飛び降り、第二評議長は怪獣の先端、目と鼻の先に到着する。


グルルと唸る怪獣に対し、第二評議長が精密機械の右手を怪獣の表皮に近付ける。


第二評議長の機械の手が目の前の怪獣に触れた瞬間、触れた地点を中心に怪獣の体全体から膨大な血が吹き出し怪獣は口から爆風を放ち苦しんだ。


その様子を見た怪物が、おお!と感嘆の声を漏らす中、白衣が怪獣の血に染まった第二評議長が作業スペースに向けて振り返る。


「安心するのはまだ早い!今の内に異常抹消薬の追加投与を始めよ!」






さらに忙しなく動き業務を消費する怪物達を、第二評議長は浮遊する椅子に座り静かに眺めていた。


血に濡れた白衣は新品に交換した。


怪獣は眠るように静まり、怪獣の状態を観察していた怪物が安堵した。


背もたれに腰を下ろし、第二評議長は天井を見上げる。


「生命融合技術……私ですら管理に手こずる存在を生み出してしまうとは……デルメントルトが滅びたのは必然というべきか。何にせよ、ガオンが失敗作となってしまった……興味本位で生命融合技術を使うのは不味かったか。今後とも全ての組織で禁止にせねば……異常界が滅ぶ。流石に実験段階には至れないなぁ……」


独り言を呟き、暇を持て余す様子で足を使い浮遊する椅子を回した。摩擦抵抗の無い椅子は何回もグルグルとその場を回る。その椅子に座る第二評議長も一緒に回る。


「ガオンは無事静まったようですねぇ。小鳥遊さん」


第二評議長の隣に、支配人ジョキュに提携を提案し、ヴェルデント商会の商会長である商人が、そこにいた。第二評議長を除いた怪物達は商人の侵入に全く気付かない。


回る椅子を止め、第二評議長の目が商人に向けられる。


「……なんとまぁ、異常界随一の鬼畜野郎である貴様がここで何をしに?」

「否定はしませんが酷いですねぇ……元人間の科学者さん」


第二評議長はその言葉を無視する。


「確かヴェルデント商会は別組織からの襲撃でてんやわんやと聞いたのだが」


「それは部下に任せて……いや今は関係ないですよ」


「……そう言えば、貴様に強引に渡された商品サンプル。わざとデメリットを教えてくれなかったな?」

先程のことを思い出し、第二評議長が商人に向けて非難と侮蔑を込めた目を向ける。


商人は何も応えない。その様子に第二評議長は深く溜息を吐いた。


「本題は何だ。返答によっては貴様の商会の商品レビューを全て星0にする。無論私の部下全員で、だ」


意味無しだと思いますが恐ろしいですねぇ、と全く気にしていない声色で軽口を叩いた。


「私は貴方が興味を持つ例の人間達に関して知りたいのです」


「人間の枠組みから少しばかり超越したあの人間達を?そんなに知りたいなら第一評議長…………エリア1 幻想図書界で未だにチェスに勤しんでいる時空完全推測者に聞けば済むことだろう。お得意のチェスで勝てれば喜んで情報を提供すると思うが?」


商人の言葉に第二評議長は面倒な気持ちを抑えつつ、ここから消えて欲しいという気持ちを込めてそう言った。


「無理に決まってるじゃ無いですか。異常界屈指の傑物に私が勝てるとでも?今までまともに挑戦して全敗ですよ?ズルありなら……いえ、ズルありでも全敗でしたね…………」


「具体的にどんなズルをした?」

ズルと言う言葉に興味を持った第二評議長が商人に質問する。


「ポーンとキング以外の駒を全て奪い、奪った駒をこちら陣営に引き込みました。当然私が先行でした」

「それで負けたのか貴様……」






これ以上黙っていても面倒なことになると悟った第二評議長は、先程の新條蓮達とのやり取り、行動、行き先をこれでもかと言うほど詳細に、自身の研究レポートを口頭で説明しているかのように早口で情報を喋り、商人はその情報を全て余さず汲み取った。


「ほう?エリア17異常地下水道に…………そのすぐ側にはエリア50……面白いことになりそうですねぇ。ただ、あのことが知られると面白味が半減以下に……コアと呼ばれていた機械が検索を……この異常界で検索……異常界で検索という単語が関連するのは…………あぁ、そう言うことですか。カラット情報道社に情報操作をお願いしましょう」


「また碌なことを考え付いたな…………」

呆れ切った第二評議長を意に解せず、商人が独り言を呟いた。

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