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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
二章 法則を超越した怪物達
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10話 暗転迫る楽園 その3

「いやー、すごい。手慣れてるね」

「そうだな。遊撃隊とやらも、序盤に数匹捕まえたらすぐに本隊に加勢。その上中々の連携だな」


俺達は腐れ林檎姫に頼んで下ろしてもらい、今はコアの映像を空中に映し出す機能とズーム機能で、異常鎮圧部隊と天文学的な蝗の攻防を観戦している。


天文学的な蝗は進行を止め、同胞を殲滅する異常鎮圧部隊を敵と見なして集中的に襲っている。お陰でこちらに天文学的な蝗が向かって来る様子は無い。


あの目立つ軍服を着た怪物は今まで出会い見て来た怪物の中で一番理性的に思えた。俺達に情報保管室警備者が迫った時に取り押さえてくれた分、印象は悪くない。今も天文学的な蝗と戦い、ある意味では俺達を守ってくれている。


だが安堵することはできない。


情報保管室警備者の矛がこちらに向くこと。それが現状唯一の懸念点だ。その時は異常鎮圧部隊の目立つ軍服を着た怪物に抑えて貰えれば良いが、そうで無ければ常盤は死なないとしても俺と白銀は死ぬ。常盤曰く防護服は軽く貫通されたらしい。


あの怪物は逃げても何もしないと言っていたし、白銀の話からはヴェルデント商会が信用に値するかは正直怪しい所だ。ならばどうするか?決まっている。今の内に別エリアに向かう。


怪物達の矛先がこちらに向いていない今の内に、俺の考えを常盤と白銀とコアに伝える。






「……すぅーー。考えて無かった!そうだよねそうだよね!今さっき敵意あったよね?!完全に忘れてたよ!」

常盤はその場にしゃがみ頭を抱えた。


「エリア24果実楽園から行けるエリア…………エリア2は無理、飛蝗の方は戦闘中で危ないし、そもそも木が全て食べられてそもそも無い。現世帰還隊が記録してたエリアは…………何があったっけ…………」


白銀はぶつぶつと呟き始めた。


『いつの間にか大変な事態に巻きまれているな…………』

荒起博士は呆れ気味な声でそう言った。俺としても、安全なエリアと言われていたのにこんなことになるなんて想定外だ。


「…………ん?林檎さんの家はあっち。この方向だと…………21本目の木に入り口があって、ここが20本目。他に別のエリアの入り口があるけど、逆方向…………飛蝗の向こう側。絶対無理。一番近い21本目の木にある入り口は…………あった!」


ずっとぶつぶつと呟いていた白銀が声を上げ、ある一点に指を指す。


そこには、このエリアには無相応なレンガの壁が、今いるこの木の隣の木に埋め込まれているのが見えた。


すると、言葉を理解しているのか、腐れ林檎姫が俺達全員を再び抱き抱え、白銀が指を指した場所に飛び移り腐れ林檎姫が枝に乗っかった。枝の根本を見ると、今見えたレンガの壁。それが崩れて人1人が通れるほどの穴があった。


落下の心配の無い地点にまで歩くと、腐れ林檎姫が俺達をゆっくりと下ろした。


「……このレンガの先が、別のエリアに繋がっているのか?」

「うん。そのはず」


俺の質問に、白銀が確証は無いとでも言うような声色でそう応える。


目の前のレンガから黒い雲の方に視線を移すと、未だに天文学的な蝗と異常鎮圧部隊による戦いは続いていた。


「白銀ちゃん。この先がまた別のエリアに繋がってるの?」

「そのはず。でも、ワタシは現世帰還隊の資料でしか知らないから確証は無いけど」


この異様感。この先は別のエリアに繋がっているのは確実だろう。だが、この先が安全とは限らない。まぁそもそも俺達は調査が目的でこの異常界に送り込まれている。調査は少なからずしなければならないだろう。


この案は俺が提案した物だ。逃げる訳には行かない。


「俺が先行する。2人は背後から後方を警戒してくれ」

常盤と白銀にそう言い、深呼吸をして銃を軽く持ち直し強く握り締める。


後ろを振り返ると、腐れ林檎姫が俺達に向かって手を振っていた。



◆◇◆◇



エリア24果実楽園から遠く離れた、エリア666ヴェルデント商会本部店にて。怪物と形容されてもおかしく無い姿をした者達が、緊急事態と言わんばかりに忙しなく動いていた。


「情報統括支部から緊急報告!先程終えた大手取引の商談の後、大手の対抗組織に情報が漏れ商会職員を徹底的に襲っている模様!」


「ここ最近の商品評価アンケートはどうなっている?」「そろそろ集計が完了しそうです」


「何だと?!チッ、エリアの出張職員は今すぐにヴェルデント商会本部店もしくは商会支部に避難!多次元出張職員は本部、支部以外のエリアへの侵入を禁止するように通達せよ!」


「……他支部からの定例報告に不審的が無いか徹底的に洗うぞ!」「「はい!」」


「副商会長!例の組織が別組織と結託し大手と全面戦争!大手から救援申請が……!」


「大事になる予兆ですね」「だろうな、だがこっちは関係の無い。転売対策支部の報告書を提出したら、すぐに仕事に戻るぞ」「了解です」


「一気に潰す気か、分かった。副商会長権限で申請を受理!武力提供支部の部隊を幾つか派遣しろ!」

「了解!」


「部長!今期の業績一覧、できました!」「ほう?見せてくれ……ふむ。皆、中々頑張っているようだな」「確認は終わりましたか?では、部署の掲示板に貼りに行きますね!」「その業績一覧表!よくできてるよ!」「はい、ありがとうございます!」


「報告!先日異常抑制支部から脱走し、行方知れずとなっていた天文学的な蝗がエリア24で発見!必要数確保の後、膨大な数に増えた天文学的な蝗を全て殲滅完了しました!」

「よくやった!」


『何だと?!』「落ち着いて下さい、異常抑制支部支部長。何度も言うように先程部隊が複数派遣されました。この状況ですと、武力提供支部は多忙になりそうです。残念ですが、近日行う予定の異常抑制支部と武力提供支部による合同強化訓練は、恐らく延期になります」『……せっかく鍛えがいのある新人が入ったと言うのに』「ちなみにその新人は今どこに?」『任務が終わったから、休息を含めて今は本部にいるはずだ。本部について少しでも知って貰らわければな。今頃、到着しているはずだが……そこから見えるか?」「そうですね。隊服……隊服……いた。今、あー……サボり魔に絡まれてますね」


「…………」「お、見慣れない顔。君は新人だろ?言わなくても分かる。それで、新人は初めて見たか?これが商会本部の日常だ」「ほう?この異常事態を日常だと?冗談も甚しいな」「ほ、本部係長?!」「そう言えば、貴様後輩に自分の業務を丸投げして遊び惚けているらしいな?」「な、何故それを……?」「言い訳無用!今から貴様の業務を5倍にする!当然後輩への丸投げは許さん!」「そんな殺生な……!」「…………」


「物流統括支部から緊急連絡!」

「今度はなんだ!」


「それが、例の組織に物流統括支部のエリアの情報が流出てしまい、大軍による急襲を受けているとの連絡が!」


「武力提供支部に残っている戦闘員を向かわせろ!物流統括支部に残っている非戦闘員は、今すぐテレポーターで他支部への撤退命令を送れ!」

「了解!」


「すみませーん!この商品サンプルは何処に――」「新人!それこっち!」「は、はーい!ここが商会の本部……ヴェルデント商会……本部店…………」「呆けてないで早く持って来てや!」「すいません今行きます!」


『はぁ……ヴェルデント商会本部、各支部の全職員に告ぐ!残業確定だ!!』


「おっとっと……やっぱ声量でけぇなぁ……副商会長様。今本部が揺れたぞ…………」


「マジ?!」

「それもそうかー」

「業務5倍……残業プラス……」

「誰だ情報漏らした奴!」

「有給取っても呼び出されそうだな……」

「やっと休みが取れたのに……」


「……私はバカンスにでも――――」

「「「商会長!抜け駆け禁止ですよ!!」」」

ヴェルデント商会の本部及び支部一覧


ヴェルデント商会本部店

情報統括支部

物流統括支部

金銭統括支部

武力提供支部

建造建築支部

商品開発支部

商品販売支部

商品保管支部

転売対策支部

異常抑制支部  所属 異常鎮圧部隊

食糧生産支部

工品生産支部

服装装飾支部

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