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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
二章 法則を超越した怪物達
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9話 ホテルの支配者 その6

◆◇◆◇



「妨害で直接叩けないのなら!その他全て!それ以外を改変すれば済む!ただそれだけのこと!!」


はぁはぁと息を切らしつつ、興奮した支配人が一点に固まった人間に対し腕を伸ばして指を差す。


「標的。妨害の元凶。煩わしい喋る機械!戦闘可能スタッフ総攻撃用意!放て!!」



◆◇◆◇



突如として無数の扉が俺達を取り囲むように出現し、この元凶であろう支配人がかなり遠くの地点に見えた。


扉が開くと、何十体ものスキンリーパーに百手。目を凝らすと、それぞれの扉には廊下が繋がっていた。


それとエリア3で一瞬にして過ぎ去った紫電虚陰が、扉の1つの奥からでダダダダダダッという連打音を響かせて迫っていた。


既に扉を抜けたスキンリーパーと百手は仕方ないとして、連打音が聞こえる扉は開いた状態のままその場に固定。その他の扉はスキンリーパー達が通った瞬間に消滅した。


「あの扉を破壊したらどうなる?!」

「知らない!」


「連打音が聞こえる扉は破壊できるか?!」

「やってみる!」


白銀が改造銃を手に取り、手慣れた手つきで新たな弾を装填し、狙いをつけ即座に撃った。撃たれた弾は連打音が聞こえる扉に当たり、その瞬間大爆発が起こり扉が木っ端微塵に破壊できた。


先程から聞こえていた連打音は消失していた。さて、次の問題だ。その問題とはこちらに降ってくるスキンリーパーと百手。


ただ、1つ分かったことがある。スキンリーパーが腕を振りかぶり攻撃を当てようとしている方向が、全てコアに向かっていた。恐らくコアが俺達にこのホテルの情報を与えたりサポートしているのを知られたからだろう。サポート役を一転狙いは正しい判断だ。だが守りやすいという弱点もある。


「狙いはコアだ!全員、コアを守れ!」



◆◇◆◇



「もう一度静かになって頂きましょう」

[荒起白銀。のどが腫れ発声が困難に]



◆◇◆◇



「げほ、げほ…………あ”、な”…………な”ん”でぎゅ”…………げほげほ」


突然白銀の声が極度に荒れた。


支配人の方を見ると、案の定偽運命手帳を開き何かを書いていた。



◆◇◆◇



「さて、もう一声」

[荒起白銀。両腕がつり、銃の使用が困難に]



◆◇◆◇



白銀のその手から改造銃が滑り落ち、俺はとっさに何とか手を伸ばし改造銃を確保する。危なかった。コアに渡して亜空間格納庫に入れてもらう。


白銀が改造銃を落とした原因もあの手帳だろう。厄介この上無いな。004号室を見つけても、あの手帳が最大の壁になりそうだ。


落下し迫る怪物達は常盤に任せ、俺は反重力機構を切り一緒に落下しているコアと、あの手帳によって戦力外となった白銀を空中で離れない為に抱え持つ。


いきなり常盤に銃を投げ渡され、塞がる手を動かし何とか常盤の銃を確保する。俺よりも少し上の地点にいる常盤に視線を移すと、俺はその光景に目を疑った。


百手よりも先に迫るスキンリーパーの相手をすることになった常盤は、銃無しのその身一つで何十体ものスキンリーパーを蹂躙していた。


スキンリーパーの一体は砲丸投げの要領で遠くに投げ飛ばされ、別のスキンリーパーは常盤に足を掴まれてそのまま四方八方にぶん回し他のスキンリーパーを遠くに飛ばす武器となった。


…………いやおかしいだろ。何処にそんな力があるのか甚だ疑問だ。


その上、常盤から抽出黒錠剤を一粒。それを俺に投げつけられた。白銀に食わせろとのことだろう。俺は即座に抽出黒錠剤を白銀の口に投げ込む。その不味さ故か、白銀の顔がかなり歪んだが一旦無視する。


落下するスキンリーパーを追いかけるように落下する百手は、常盤にスキンリーパーを何度も投げつけられ、落下の方向が俺が抱えているコアの方向から少し横にずれた。


コアを抱える俺の横の地点に来ると、百手の全ての手がコアに伸ばされたが、後少しの所で届かずにそのまま落下した。


ちなみに今頃分かったことだが、俺含めた人間と、支配人を除いたこの場の全てのスキンリーパーと百手の落下速度が著しく違う。スキンリーパーと百手の落下速度が、こちらの1.5倍ほど速い。まあ、原因は十中八九あの支配人の仕業だろう。


百手が遠くにまで落下し点になると、何処からバチバチという電撃音が響いた。


別の方向には鮫Vの大群が1匹の鮫Vに集まり吸収され、サッカースタジアム程度の巨大な鮫の形と成した電気の塊になりこちらに向かって突撃を始めた。


「「「ブオォォォォォォォォ!!」」」


さらに別の方向には、エリア65の会場の上にあった汽車を出現させる骨で構成されたあの物体。そして複数の方向から計3両が出現し迫っていた。


「さっきから思ってたんだけど汽車持ってくるなんて反則でしょ?!しかも3って!」

今さっき危険な怪物であるスキンリーパーを蹂躙した常盤が焦りを見せた。


さらにさらに支配人がコアに宝玉を向け、光線の連射を開始した。


コア自身にも青白い膜があるとは言え、これほどまでに集中砲火されれば流石に不味い!


「落下速度を速めれる?」

抽出黒錠剤で何とか回復した白銀がコアに質問した。


「可能ですが…………よろしいのですか?」

「やって!」

渋るコアに対し白銀が強くそう言った。


すると急激に体が重くなり、落下速度が数倍に跳ね上がり、空気抵抗で体が極度に動かし難くなった。


そのお陰で俺達が元々いた地点に向かっていた鮫Vと汽車と宝玉の光線が対衝突し、鮫Vは汽車と宝玉の光線の爆発で合体前の大きさにバラバラになり電気となって消滅し、3両の汽車はそれぞれ衝突し鮫Vと宝玉の光線の後押しもあり粉々に爆散し、こちらから見ても支配人以外が甚大なダメージを負っていた。



◆◇◆◇



「盤面も状況もこちらが圧倒的に優位。それなのに何故だ!何故……現世帰還隊……スタッフの皆に励まされ、失敗を受け入れ……ワタクシは、あの時のような失態を犯す訳にはいかん!絶対に!!」


支配人が持つ宝玉に、ピキッと小さなヒビが入った。



◆◇◆◇



いきなり重力の方向が変わり別方向へ落下を始めた。


幸い支配人の方向に落下しなかったが、支配人は妨害と攻撃を止め、代わりに俺達に向かって迫って来ていた。


一応コアの反重力機構で落下速度を速めているが、支配人はそれと同等の速度で迫っていた。


『失礼。今現在ボクはこの通信にアクセスし、支配人ジョキュに聞かれては不味い情報と作戦を提示します』


次元間通信機器からコアの声が聞こえた。常盤と白銀もそれに耳を傾ける。しかし、不味い情報とは……あ、あれが見つかったのか!


『簡潔に言います。例の004が見つかりました。現在このエリア2とエリア3を包み込む内壁に等間隔で並ぶ扉の一つ。今の重力方向の落下地点にほど近い場所です』


このまま落下すれば004号室に到達できる。それを知れたの良いが、その前にあの支配人を何とかしなければ……


『次に作戦です。支配人ジョキュは偽運命手帳によって、白銀様の命を握っている状況です。もし仮に逃げ切れたとしても、足掻きとして白銀様の命を奪う可能性が高いです』


「そ、そうなの…………?」

白銀はただ絶望した様子で、抱えている俺をその手で強く握った。


『ここからが作戦です。第一の問題は偽運命手帳ですので――――』






『――――をすれば、支配人ジョキュに邪魔されず、004号室に到達できると思われます。

計三段階のこの作戦。細かな調整はボクが担いますので、皆様には作戦通りの行動を心掛けて下さい』


「この状況だと、是が非でもやらないとな…………」

「ワタシだけ負担大きくない?!」

「仕方ないでしょ。名前知られちゃってるんだもの」


白銀はこの作戦の危険な役割とその重要度に、ただただ長い長い息を吐いた。

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