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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
二章 法則を超越した怪物達
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9話 ホテルの支配者 その3

浮遊して追いかけてくる支配人に対し、俺と常盤が走り、白銀が特殊弾で雀の涙な妨害で支配人の移動速度を少しでも減らす。


そのやり取りを2回繰り返すと、突然ドカンッ!と爆発音が廊下に響き渡ると同時に、支配人を妨害する為に生み出した障害が爆散されていた。


爆発音の発生源であろう四本ある支配人の手を見ると、そこには異質な紅色の水晶。


手の平に少し収まらない程度の大きさだが、何故今までそれに気付かなかった?


いや待て、よくよく見ると、紅色の水晶の他に古ぼけた万年筆と赤黒い小さな手帳。この3つが支配人の手に握られていた。


「今の音、どれ?」


隣で並走している常盤が爆発音の発生源について聞いてきた。俺も知りたいところだが、どれ――――


ドカンッ!


……支配人が持つ紅色の水晶から一本の光線が射出され、俺のすぐ真横を通過し目の前の進行方向である廊下が爆破された。


「あれー…………だったね」

「そう……だな…………白銀は、今すぐあの水晶を破壊してくれ。こっちは走ることに集中する」


今の爆発によって生まれた目の前の爆煙を抜け、未だ端の見えぬ廊下を走り続ける。


「分かった。なら、貫通力が強いのを…………」


白銀が新たな弾を防護服に付属されたポーチから取り出していると、背後から追いかけ続けてきている支配人が、急に万年筆で手帳に何かを書き込み始めた。


「?!…………なん、で。体が痺れて…………」


白銀がそう言うと、担いでいる為ほぼ同時に白銀の力が抜けるのが感じ取れた。


そして力が抜けたせいで白銀の手から改造銃が滑り落ち、常盤がその改造銃を回収しようと動いた瞬間。


白銀の手から落ちた改造銃をコアが床に落下する直前に持ち上げ、亜空間格納庫に収納された。



◆◇◆◇



赤黒い手帳には、既に書かれていた文に加えて新たにもう一文。


[荒起白銀。走り過ぎにより全身に急速な痺れ]


「ワタクシの聴覚を舐めないで欲しいですね。この宝玉はそう簡単には破壊できませんが、目障りですし少し静かになってもらいましょう」



◆◇◆◇



白銀は痺れで戦力外。その原因は恐らく支配人が持っているあの手帳。


しかしただあの手帳が怪しいというだけで、それ以外は分からない。


異常界に詳しい白銀は知らないみたいだ。ならば、もう1人、もう1台の詳しい物に聞く。


「コア!あの支配人が持っている手帳と水晶について何か知ってるか?!」

「分かりません。ですので検索を掛けます」


コアがいきなり訳が分からないことを言い出した。検索って。そもそもこんな世界に検索を掛けられるような物があるのか?


「……なにを、言っ……ている?」


白銀も俺と同意見みたいだ。


「情報を発信している組織がありますので、そこに検索を掛けます」


そんな組織があるのか……


「知らない、けど…………」

「異常界には、カラット情報道社という組織があります。デルメントルトが滅びる以前から存在しており、その組織は様々なことを調べ、調べた情報を無償で公開しています」


「要は異常界のインターネットという訳か」

「概ねその通りです」






「検索中……検索中……ヒット」


俺達は支配人から全力で逃げつつ、コアに検索を任せてからたった数秒でコアがそう言った。想像以上に早かった。


「支配人が所持している手帳の名称は偽運命手帳。

対象の名と引き起こしたい現象を書けば、書いた通りの現象を対象に引き起こす手帳です。

ただし、手帳が引き起こすことのできるのは物理的な現象のみで、精神的な改変、強制を引き起こすことはできません。そして、手帳に書く対象の名称が正式名称に近いほど、強制力が強力、正確になります。弱点として、対象が別のエリアにいる場合は偽運命手帳の強制力が皆無になる為、エリア2に留まるのではなく別エリアに退避することをお勧めします。

そして対象は生物限定です。ボクのような機械には効きません」


となると、何処かで名前を知られた白銀は支配人に対して完全に戦力外になってしまったのか。


「なら、コアと白銀以外の名前を呼ぶのは禁止だな」

「りょーかい」


「そして支配人が所持している水晶の名称は紅閃の宝玉。宝玉から約8000度の光線を射出し、光線が着弾した箇所を0.02秒のインターバル後に爆発させることできる宝玉です。

ですが、検索したデータよりも熱量が低い為、牽制用に作られた偽物かと思われます」


『ならば、その偽物は何度じゃ?』


荒起博士が次元間通信機器越しにコアに聞いて来た。


「300度ほどですね」

『そうか。本物なら耐えられなかっただろうが、300度程度なら防護服の許容範囲内じゃ。ただ、爆発の威力によっては耐え切れん可能性がある。留意してくれ』


「了解」


その言葉を境に、次元間通信機器は無音になった。


恐らく荒起博士は研究所の制御室から俺達を聞き守っていることだろう。


これであの手帳と宝玉については分かった。しかし古ぼけた万年筆については分からない。コアの検索待つ。


「次に支配人が所持している万年筆ですが、検索した結果ただの万年筆です」


他の2つと同じように普通では無いと思っていたが、ただの万年筆なのか。意外だ。


背後を覗くと、支配人が未だに俺達を追いかけ、しかも距離が少しずつ縮まっている。


このままでは支配人に捕まれば待っているのは死。だが支配人を少しでも怯ませれば、別エリアに逃げ切れる可能性は上がる。


だが、コンクリートの硬度を持った煙幕を軽々破壊した様子から見るに、普通の銃ではダメージを与えられるすらか怪しい。


なら、現状この特殊部隊が所持している最大火力の武器を使用する他無い。


小型ミニ電磁砲銃レールガンの充電は?」

「既に完了しております」

「ならすぐに渡してくれ」


コアから出現した小型ミニ電磁砲銃レールガンを渡される。一度弾が入っているかを確認し、安全装置を外す。確かこの後は引き金を引くだけ。


痺れている白銀を担ぎ直し、その場でくるりと回転して支配人に銃口を向け、即座に引き金を引く。


引き金を引いた瞬間。爆音と衝撃が防護服越しに襲って来た。


小型ミニ電磁砲銃レールガンからは、反動と呼べるほどの反動が全く無かった。どうやったらマッハ10の反動をここまで抑制できる……?本当に荒起博士は色々とおかしい。


数瞬の内に爆音と衝撃が収まると、目の前からは支配人が消えていた。


通常マッハ10の弾が直撃すれば、ソニックブームを考慮しても弾が貫通し体がその場に残る。


しかし、弾が支配人に直撃した瞬間支配人が消えた。恐らく貫通せずにマッハ10の速度で廊下の端にまで吹き飛ばされたのだろう。


異常界の怪物はその多くが異常に頑丈だ。今の弾を耐えれても不思議では無い。


吹き飛ばすことによって支配人の行動を妨害できたのは良いが、裏を返せばこちらの最大火力でも支配人を倒すほどの威力では無かったことになる。


…………厳しいな。






支配人は廊下の先にまで吹き飛ばされたとは言え、来た道を戻る訳には行かない。


待ち伏せされている可能性は勿論、そもそも俺達はこの廊下の行き止まりを知っている。


今はただがむしゃらに進んでいるだけだが、いつか進む先に別エリアに続く扉を見つけられることを願う。だからこそ、前に進む他に術は無い。


「白銀ちゃんを私に」


俺が前に足を出すと、常盤がその場でしゃがみ腕を広げそう言った。意図は分からないが、一度その場に留まり白銀をボールのパスのように軽く投げ常盤に渡す。


白銀を抱きしめるように受け取ると、常盤は防護服から容器を取り出し、その中に入っている抽出黒錠剤を一粒白銀に飲ませた。


白銀はその不味さに顔が歪んだが、顔を歪ませている内に痺れが治り、口を動かし喋れるようになっていた。


「投げないでよ」

「……すまない」

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