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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
一章 人智を越えた未知足り得る世界
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8話 天国の既知を求めた神童 その6

あれから更に数日が経ち、完全に手持ち無沙汰で暇になり常盤と一緒に対戦ゲームを始めていた頃。


荒起博士と白銀とまさかのコアから見せたい物があると、数日振りに研究室に呼び出されていた。


「最近コア見ないなーって思ってたけど、なーにやってんだろ」

「博士だけならともかく、白銀とコアが一緒となるとまともなことにはならないだろうな…………」


「そうだねぇ…………よし!新條君。心の準備は良い?開けるよ」

「ああ、大丈夫だ。開けてくれ」


常盤が研究室の扉に手を掛け、意を決して勢い良く開けると、ゴンッという音と共に扉が開かれた。


扉の向こう側には椅子に座り俺のすぐ下を見つめ口を半開きにした荒起博士と、空中に浮かんでいるコアがいた。


白銀は何処にいるのかと扉から研究室を見渡しても白銀はおらず、荒起博士が見つめていた地点に視線を落とすと、額を両手で押さえうずくまっている白銀がいた。


「ひぃー、いったぁー…………」


…………常盤が扉を勢い良く開けた時に、白銀が扉に近付いて扉に額をぶつけたといった所か。






気を取り直して改めて研究室に入ると、波熱弾を説明された時と同じような雰囲気を漂わせるテーブルを一旦無視して、荒起博士に促されるまま既に用意されていた椅子に座る。


テーブルには何かの上に大きな布が被さっており、恐らくだがヤバい兵器でも開発したのだろう。


荒起博士だけの時に造られた波熱弾は中々の威力を持っていたが……大方、白銀とコアが荒起博士に先導されて共同開発をしたと言った所か。


「さて、集まったな。異常界調査に当たり、新たに異常界調査用の兵器を開発した。だがその前に、非常に興味深いことを儂は成功させた!見よ!白銀から貰った黒果実を解析し、黒果実の発芽に成功した!」


荒起博士が研究室の端から隠されていた植木鉢を持ち出し、俺達に見せつけた。


植木鉢には目が痛くなるくらいギラギラと輝く虹色の芽が芽吹いていた。


「…………初耳だけど。そんなことしてたの?じいじ……」


単独でやってたのか…………しかし、サラッとヤバいことをしでかしていないか?この博士。


「黒果実の成長パターンを分析することで急激な成長にも成功した!明日にはこの数十倍は成長していることだろう!」


荒起博士に額に湿布を貼って貰った白銀は驚愕を通り越して呆れていた。


「本題に入ろうよ。じいじ」

「おお、そうじゃった。忘れるところであった」


そう言うと手に持っていた植木鉢を再び研究室の端に隠すように置き、さっきから気になっていた何かの兵器が乗っけられたテーブルに被さった布を剥ぎ取った。


「儂と白銀とコアによる合作!小型ミニ電磁砲銃レールガン!」


テーブルの上にあったのは、一見すると色々と付け加えられ改造された長銃。


だが、名前からして長銃はレールガンを放てる銃。さて、波熱弾と言い、今度はどんな兵器だ?


「まずこの小型ミニ電磁砲銃レールガンについて説明しよう!そもそもの話じゃが、現代科学でレールガンを造るとなると砲台程度の大きさになってしまう。しかし!コアと白銀の協力で一般的な銃の大きさに収めることができた!

しかもレールガン最大の問題『エロージョン』。電流による加熱で砲身内部が大きく削がれてしまい砲身が使い物になら無くなってしまう問題点。それをコアの技術提供。白銀に提供して貰った異常界の金属によって、砲身の損耗をほぼゼロに抑え込め、問題点を解決した。そしてレールガンのもう1つの問題である電力は解決した。

コアの助言で小型ミニ電磁砲銃レールガンに恒久エネルギーオーブから溢れ出ているエネルギーを電力に変換する機能を付けた。この銃をヘヴンシステムに繋げるだけで、いつでも気軽に電力を溜められる。小型ミニ電磁砲銃レールガンの銃弾は、お主達が使っている銃と銃弾、そして口径は同じ。つまる所、同じ弾で両方の銃を使用可能!ついでに既存のレールガンよりも性能アップ!射出される弾の速度はマッハ10を記録した!これで持ち運び可能な最強の兵器が完成した!恒久エネルギーオーブのエネルギーを電力に変換する機能はまだ試していないから理論上になってしまうのは致し方無いが…………」


つまり本来なら砲台として使う兵器を、小型にして普通の銃弾の弾を使えて更に性能を上げた……か。何やってんだ。


というかそんな速度で射出して銃弾の方は耐えられるのか?


この前散々異常界について口を閉じさせたくせに、口を閉じさせた本人が仕事とはいえ1番エンジョイしている。


「来週にはアビスシステム実験を行う。本来ならもう一丁造りたい所ではあるが、白銀から提供された金属はもう尽きてしまった。せめてあと一丁。もしくは新たな兵器の開発に使いたい。それと、2回目の実験の時から、特殊部隊の人数が2人では少な過ぎると前々から考えていた。しかし丁度良く、お主達に相応しい人員を見つけた」


荒起博士が白銀の方に視線を移す。


「儂は異常界の知見を持つ白銀を特殊部隊に加え、お主達に同行させるつもりじゃ」

「え?!聞いてないよワタシは!」


先に許可を取れ許可を。本人がその気なら賛成するが、今の反応的に白銀が異常界に行くつもりは毛頭無かっただろ。


「嫌だよ!またあんな地獄に行きたくないって!」

「新たに人員をスカウトするとなるとアビスシステム実験が先延ばしになってしまう。儂はそれだけは避けたい」


全力で反対する白銀に対し、荒起博士は淡々と返答した。


「ふむ…………ならば、お主の給料に儂の権限で高級スイーツ食べ放題を追加でどうじゃ!」

「乗った!」


白銀のスイーツに対する執念は何なんだ…………そしてスイーツが介入すると凄くチョロい。


因みにだが、この前異常界からやっと帰還できた際に、俺と常盤にサラリーマンの生涯年収を軽く握り潰せほどの給料が銀行口座に振り込まれた。


つまり、その金を一瞬にして溶かさない限り、生涯何もしなくても暮らしていける。


俺は特に動じなかったが、常盤はガッチガチな体で銀行手帳を握っていた。


「さて、儂等からの呼び出しは終わった。儂はこれの最終調整を行うが、白銀とコアはどうする?」


「…………やることは無いしワタシはス――――」

「あ、そうだ!白銀ちゃんとコアも入れてゲームをしよう!もちろんバトルロワイヤル!」


白銀は、え、なんでワタシも?という目で常盤を見つめていた。


……もう2人分のコントローラーを用意するか。



◆◇◆◇



「ふう…………行ったか。しかし、慣れとは怖いものだな。数日振りの静かな研究室が全く別の部屋に感じる…………」


荒起博士は静かにただ虚空を見つめ、小さく溜息をついた。


「………………荒起あらき白銀しろがね……並行世界の孫。1964年という偽の生年月日の合致。儂に匹敵する頭脳。

存在するはずの無い子供、そして孫。儂自身の死。白銀から聞いた儂の像は、完全に儂だった。軌跡すら、1964年からの儂の動きと全く同じだった。

しかし、結婚し子供を儲けた。その一点だけが儂との大きな相違点。名も姿も同じと言うなら、そやつは儂という……完全なる同一の人物だと言うのか……?そもそも儂はあの時から…………白銀……お主は……君は……本当に、儂の孫なのか……?……………いや、まさか儂が――――」



◆◇◆◇



「おお!いたいた。常盤凪沙。少しいいか?」


荒起博士達による兵器の見せつけから数時間後、白銀に与えられた自室からの帰りに、荒起博士に常盤が呼び止められた。


「何の用ですかー?はかせー」

「いいから少し来てくれ。お主と話したいことがある」


「はーい。新條君、ゲーム機の片付けお願い」


そう言うと常盤は荒起博士に連れられ、どこかに行ってしまった。



◆◇◆◇



「よし、周囲には誰もいないな。常盤凪沙。もう一度お主に問う。本当にやるのか?やる気満々なお主に言うのも何ではあるが、儂はこの耐久実験には反対する」


「大丈夫大丈夫。拷問される側は慣れてるから」


「いや、しかし。身の上を知っている儂として、前のような生き方では無く、もっと別の生き方もあっただろう?お主が提案したこの耐久テスト計画を実行はできん。普通の拷問よりも苛烈な物ばかり。儂以外だったらすぐに却下されておるぞ」


「えー。私の再生能力の限界を知る良い機会だと思ったのに」


「改めて聞くが、本当に実行しても良いんじゃな?ハズレ黒果実摂取時の再生能力観測耐久実験」


「いいよ」


「即答か……本当に死生観念が軽いな。お主は」



◆◇◆◇



荒起博士に連れられた常盤と別れ、俺の自室に入り、俺はベットに倒れる。


「白銀一位、コア二位、俺三位、常盤四位か……まさか白銀にボコボコにされるとは……」


テレビに繋がったままのゲーム機本体と放置されたままのコントローラーを見つめ、さっきのバトルロワイヤルゲームの結果が口から漏れた。


……………………はぁ……改めて思い返すと、常識的に考えてあり得ないはずのことを、何度も経験しこの目で見て来た。


「はは」


死にかけはしたが、刺激的で興味深い毎日だった。


そのお陰で俺の中の常識が完全に崩れたが、後悔は…………あるか。


流石にこんなヤバいことに安易に了承し巻き込まれたことへの後悔と、現実を超越した世界を知りたい気持ち半々だな。


それにしても、この異界研究所に来て一ヵ月以上も経ったのか。俺としても驚きだ。


何度も死を覚悟したし……そうだ、たまには両親と話してみるか。


仕事を邪魔する訳にはいかないと思っているのか全く電話を掛けられなかったし、あれから全く電話を掛けていなかったから、心配しているだろう。


『プルルル。プル、ブ……蓮!久しぶりー!元気にしてた?大丈夫?怪我とかしてない?栄養バランスの良い食事を取ってる?体調に変化があったらすぐに教えて?』


音量を少し下げるか。


「母さん。心配性はほどほどに」


『あら、ごめんなさい。でも心配になるのは親としては当然よ?』


「ははは。ごめん」


『けど残念ねー、今はあの人いないから。蓮が私のスマホに電話が来たって知ったら、仕事を退社してでも来るだろうし…………』


「父さんの過保護っぷりは身に沁みて分かっているからなぁ……せめて自分のスマホとかで掛けてくればいいのに」


『恥ずかしいのよ。あの人は。あと、間の悪いことに携帯が故障しちゃってるから、今あの人の携帯に電話を掛けても繋がらないわよ?』


「了解。父さんが家に帰る時間帯にまた繋げるよ。あ、そうだ。次の休みの時に、家に帰ろうかな?って思っているんだけど……」


『あら本当?!それなら日付を伝えて?渾身の手料理を振る舞うから!』


「分かってるよ」


崩れた常識も、積み重なった異常も、こんな日常の前では、全て吹っ飛んで行った。



◆◇◆◇



「やった!やったぞ!遂に忌々しい『壁』を破壊できた!これでエリア2がワタクシの元に還る!現世帰還隊!支配人たるワタクシをコケにして!ただで済むと思うな!!皆殺しにしてくれる!!!」

現段階主要登場人物紹介

・新條蓮

本作の主人公。年齢20歳。

様々な大会に出場し、優勝や準優勝などで名を残し、勝ち取った中々にヤバい人。

マジで色んなことができるが、できるだけなので器用貧乏キャラに。

始めは親を心配させない為に極秘異界研究所に入ったが、

今は異常界に対する好奇心と知識欲を刺激され部隊を続けている。

初期の1話の身体能力は高校時代の1/4。


・常盤凪沙

本作のヒロイン的な存在。年齢18歳。

その特殊体質から親に捨てられたが、本人は気にも止めていない。

5歳の時に、そして海外に捨てられている。


・荒起博士

本名、荒起小金。年齢60?

本作のタイトルにもなっている、アビスシステムを開発し造り上げた天才科学者。

ただカッコいいからという理由で、マッドサイエンティストを名乗っている。

ハイテンションな言動は素。

重要な場面でハイテンションになるのは気まずいので、最近は冷静な言動を心掛けている。

現状本作1の常識人。(やばい奴らが集まっての暫定常識人)


・荒起白銀

本作のヒロイン的な存在2人目。年齢14歳。

本来の目的である世界に帰れず、意図せず新條達の世界に来てしまった少女。

今は割り切って、荒起博士の研究に協力している。

唯一の心残りは、商店街のスイーツを全て制覇することで注文できる、

隠しメニューウルトラスペースパフェを食べれなかったこと。


・コア

成長型自律式異工知能。完成時期不明。


・水葉所長

本名、水葉柳。年齢28歳。

享楽主義で睡眠が一番の快楽と考えている。変人だが所長を任されている分、頭は良い。

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