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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
一章 人智を越えた未知足り得る世界

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8話 天国の既知を求めた神童 その1

8話 天国の既知を求めた神童 その1からは、

視点が荒起博士から新條蓮に戻ります。

「なぁ、いつになったら完成するんだ?そのヘヴンシステム」

「もう少し待って。想像以上に調整が、難し、くって……!」


『ドカンッ!』


またか…………


恒久エネルギーオーブを手に入れ、あの灰色の都市からエリア2のホテルに戻ったそのあと。


丁度俺達がいる廊下に現れた百手から逃げ切り、やっとこの拠点に帰ることができたその日から、数日が経過した。


高校を卒業してからあまり動かさず鈍った体も、この異常な日々によって、身体能力がほとんど高校時代と遜色無いほどになった。


俺と常盤を主導した白銀はヘヴンシステムを動かす為に奮闘中。


ヘヴンシステムに使う恒久エネルギーオーブは、触れても近付いても悪影響がある為、コアの力で極限まで悪影響を減らしているそうだ。


そしてコアの力を借りながら、ヘヴンシステムに最適なエネルギーとエネルギー量を調整している。


しかし、さっきのように度々失敗し小さな爆発を起こしている。まだまだ時間は掛かりそうだ。


「だぁーひまだー」


身体に傷一つ無い常盤が床に寝転がる。


常盤は拠点に戻っても起きることは無く、2日経っても起きなかった。なので、俺と白銀で黒果実を選定しハズレを常盤の口に突っ込んだ。


ハズレが常盤の舌に触れた瞬間文字通り飛び起き、その後吐いた。ハズレと言うものの、以外と有用性があるな。


……そう言えば、結果的に敵がいなかったデルメントルトの動力室に俺と白銀が入ったが、


結果的に常盤がボロボロになるくらい強い怪物の相手をさせていまった。


「常盤。今まで言い忘れていたが、動力室に入る時にあの怪物の相手を1人でさせてしまった。俺と白銀が敵のいない動力室で楽をしてしまってすまない」


俺は常盤に向かって姿勢を正し土下座する。防護服がボロボロになると言うことは、多分生死の境目を漂うくらいの激闘が繰り広げられていたと考えられる。


「ん?あー、大丈夫大丈夫。しょーじき、あの怪物は私が相手して正解だったと思うよ。軽々防護服を貫通して来たし。新條君がいたとしても、標的にされた瞬間即死だからねー。しかも何度殺しても復活。復活した時に殺され方を学習して対策してきたから」


今までの怪物よりも、ずっと戦闘に重きを置いているようだ。しかし、あのエリアから出た以上、もう会うことは無いだろう。


…………そうだと信じたい。






「白銀って日本出身か?」


一旦作業を区切り、休憩している白銀に俺はそう聞いた。


「そうだけど、それが何か?」

「いや、確認したかっただけだ」


日本出身の行方不明者がこの世界に来てしまっている可能性……いや確実に来てしまっている。


現世帰還隊の副隊長のノートも日本語で書かれていた。


ノートを読む限りでは数百人規模のメンバーがいたらしい。ただ元の世界で行方不明ならまだいい。だがこの世界では捜索は不可能なほどに広かった。


焼石に水かもしれないが、もし元の世界に戻れたら日本の行方不明者だけでも洗い出してみるか。……日本に伝わる神隠しも、恐らく壁抜けバグに該当するのだろう。






「ねぇー、新條君に動力室で何が起こったのか聞いたんだけど、ハズレに当たっちゃったから代わりに詳しく聞いて良い?」


無限ウォーターサーバーの微妙な水を飲みつつ、暇を持て余した常盤が休憩中の白銀とコアに混ざり、動力室でのことを聞いていた。


そして俺は黒果実のハズレに当たってしまいダウン中。ダウンしつつも、2人と1体の会話に聞き耳を立てる。


「えっと。あの状況は色々と形容しづらいから……詳しくはちょっと…………」

「それならば、ボクが代わりに」


あの状況を説明することを渋る白銀の代わりにコアが名乗り出た。


「動力室では――――」


コアは重要な部分を的確に抜き出しつつ、いつの間にか録画していた映像を空中に映し出して、分かりやすく説明していた。


「――――ということがありました」

「…………新條君達も大変だったんだね」


「あの状況では、ご主人様の方が非常に大変だったと思いますが」


最近分かったことだが、常盤は結構自己評価が低い。そして死生観念が軽い。


だからあの状況で怪物の足止めを名乗り出たのだろう。


「結局その最高権力者の狙いは分からずじまい?」

「そうなります。ですが、予想はできます」

「予想?」


「はい。まずデルメントルトが滅びた時のことですが、始めの一撃。超新星爆発が放たれた瞬間に、デルメントルトの人口が32%減少。数にして約274億に上りました」

「………………超新星爆発でそれだけしか減っていないのが凄いよ」


全く持ってその通りだ。


本来なら星諸共消滅してもおかしく無いのだが…………


「そしてデルメントルトには、最高権力者が1人だけしかいません」

「要するに、国王。指導者ってところか」


「概ねその通りです。荒起様。恐らく、最高権力者は超新星爆発の事態を受け、デルメントルトの滅亡を確信。恒久エネルギーオーブを内蔵する空中都市だけでも守る為に、守る以外の機能を全て削ぎ落とし超高密度の空間不可逆シールドを展開したのでしょう」


ロボットに搭載されていた対時間不可逆シールドの次は空間不可逆シールドか。


……守る以外の機能。


やはり、あの白骨死体はコアを造った研究員の…………


「デルメントルトの人口の大部分を占める生命体。その生命体が生存可能な環境にする機能すらも削ぎ落したと思われます。地表部分に積もった灰も、その影響かと思われます」


「コアはその時のデータとか、残っていないの?」

「………………………………」


「どうしたの?」

「………………いえ、何でも御座いません」


その後それ以上の進展は無く、デルメントルトと最高権力者に関しては取り敢えず保留となった。






そしてさらに数日後。


「やった、やった。遂に、恒久エネルギーオーブの調整完っ了!!」


歓喜に満ち溢れた白銀が両腕を上げ、その場で跳ねて歓喜を体で表現していた。


「ほんと、見つけれて良かった。ヘブンシステムには、ワタシの予想だとあり得ないレベルのエネルギーが消し飛ぶ」

「ちなみにどれくらいだ?」


「大体、起動させるだけでも丸一日の火力発電所2基分と同等のエネルギー。稼働させ続けるのに、毎秒莫大なエネルギーが必要になる」


…………この異常界じゃ無理に等しいな。


もしかして、荒起博士のアビスシステムも、同じくらいのエネルギー量を使って稼働させているのか。


「さて、まずは調整した恒久エネルギーオーブをここにはめて」


白銀は溢れ出ていた歓喜を引っ込め、やっと調整を終えた恒久エネルギーオーブを、ヘブンシステムの端にある動力と書かれた紙が貼られた場所にはめ込んだ。


「君たちは武器を持って警戒して。まだ元の世界に繋がったとは限らないから。別のエリアにヘヴンシステムが繋がる可能性がある。だから、充分に警戒を」

「了解」

「りょーかーい」


白銀は俺と常盤に指示を飛ばし、起動の準備を始めた。


俺は最近の連続使用によって、音すら透過するほどボロくなった防護服を装着し、異常界に来てからずっと使い続けている銃を持つ。


常盤は銃も防護服も、その下に着ていた戦闘服も情報保管室警備者に破壊されたので、白銀に用意されたラフな格好で白銀の代わりに改造銃を両手に持った。


「3……2……」


白銀は俺と常盤の準備が完了したのを見届けると、ヘブンシステムから伸びる一つのレバーに手を掛け、カウントを始めた。


「……1…………0!」


白銀がゼロと言った瞬間に、手を掛けていたレバーが下に向かって下げられる。


ヘヴンシステムが起動するのと同時に、風など起こるはずの無いホールに風が吹き始めた。白銀はヘブンシステムから一目散に離れ、俺と常盤の後ろに隠れた。


ヘブンシステムはアビスシステムの起動した時のように電撃が迸り、閃光弾が目の前で閃光を放ってているような、まぶたを開けられないの光が放たれた。


「うわぁ!」

「地震?!」


立つことすらできないほどのかなり酷い縦揺れ。震度7くらいか。こんな時に地震なんて、原因は知れている。


ヘブンシステムだ。ヘブンシステムを中心として地震が引き起っている。俺がこの揺れにもて遊ばれないように床に踏ん張っていると、いつの間にか揺れは収まり、ヘブンシステムには形容し難い色がうごめいていた。


つまり、どこかに繋がった。恐らく成功したのだろう。


「ど、どうなった?」

「分からない。繋がっただけで、向こう側に何があるのか分からないから」


「?」

「どうした?」

「いや…………」


今、防護服に内蔵された無線機から音が聞こえた気が――――


『あー……あー、こちら――――』


この声………!


「荒起博士!」

「博士!」


『……!!おぉ!!新條蓮か!良かった。無事か!……常盤凪沙は何処に?』

「隣ではしゃいでます」

「やったー!帰れるー!まともな食事ができる!」


その言葉には同意しよう。

「…………?今の、声……気のせい…………か」

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