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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
一章 人智を越えた未知足り得る世界

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5話 灰の大地、無命の都市 その5

「やはり、そうでしたか」


どこか納得したような口調でそう言った。


「すいません。話が脱線してしまいました。ボクの情報をご所望でしたね。ボクは…………え…………と、どうしましょう……なんて言えば良いのでしょう?ボクは…………研究員は…………何故ボクの記録データにックが掛けられてい、る…………の?研究員との生活が分からない。いや、なんで研究員と?確か名前があったはず、なんで?!ロックが解除できない……!これ以上は、分からない。ボクは、ボクは……………………」


「お、おお、おち、落ち着いて!落ち着いたて!落ち着いてって!!」


モニターの顔が消え、コアが明らかに普通では無い状態になり、常盤が慌てて落ち着かせようと声を掛けているが…………


「常盤も落ち着け!」


仕方なくその状況に混乱してしまった常盤を、俺が耳元で叫び強引に落ち着かせる。






「申し訳ございません。取り乱しました」


疲れた…………凄く疲れた…………


常盤はすぐに落ち着いてくれたが、コアを落ち着かせるのに結構な体力を持ってかれた。白銀はただ傍観して、成り行きを見ていた。


しかし、白銀は何もしなかったという訳でも無く、コアが突然襲って来ても大丈夫なように、改造銃をモニターに向け警戒してくれていた。


結果何も起きなくて良かったが…………


コアの取り乱し方は、もうほとんど人間だった。


デルメントルトの技術力が成せる力なのか、もしくはコアを作った研究員の力なのか…………どちらにせよ、研究員とコアについては、あまり詮索しない方が良さそうだ。


デルメントルトが何故滅びたのか?という疑問は解消されていないが、今は後回しにしよう。


「ご主人様。一度取り乱したおかげで、研究員から与えられた最後の命令を思い出しました」


コアが静かにそう言った。


「ボクに与えられた最後の命令は、再びボクを起こした者に付き従え。です」


付き従え、か。


その姿でどうやって付き従うのかは分からないが…………


常盤も白銀も、モニターの下の台を見ていた。どうやら、俺と同じ感想を持ったらしい。


「付き従えって……どうするの?そろそろ私達もここを出るつもりだけど…………」


「心配には及びません。少々お待ち下さい」


コアがそう言うと、モニターの光が消え、その下の台から小さな穴が開いた。懐中電灯でそこを照らしながら凝視していると、その穴から空中浮遊する、四角いロボットが現れた。


「この状態ならご主人様に付き従うことも可能です。初めに言っておきますが、この姿がボクの本体です」


球体と四角形の違いはあるが、その姿は上のロボットと同じだった。






「ボク自身については、ロックされている情報を除き…………終わりました。ボクからも質問をさせて下さい」


「なんでも聞いて大丈夫だよ」


常盤が警戒を解き、少し気の抜ける声で返事をした。四角いロボット…………


それがコアの本体ということ驚いたが、まぁ味方版ロボットと考えれば頼もしい。


「ありがとうございます。それでは、ご主人様達のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」


そういえば、名前をまだ教えていなかったな。


「まず、私は常盤凪沙。それでこっちが――――」

「新條蓮。常盤の仲間だ」

「……荒起白銀…………コア。キミに聞きたいことがある」


「はい。ボクや研究員以外なら何でも」

「今、ワタシ達で探しているものがある。たしか、こう………色と形はたしか、淡いピンク色の丸い球で…………ワタシの発明の動力源に必要だけど……この説明で分かるか?」


あぁ、そういえば忘れていたな。ヘヴンシステムの動力源か。


「少々お待ちください…………ヒットしました。これでしょうか?」


空中に、一枚の画像が写し出された。


画像には淡いピンクの色をした球体が写し出された、が。俺の目には、その球体とは別の、画像の背景に視線が行く。


画像の背景には、機械的な空間らしき場所が写し出されていた。仰々しい空間だった。


「これだ!これ、これ!設計図にあった謎の動力源!これさえあればヘヴンシステムが動く!」


「何それ?」


常盤は正直な感想をこぼした。


「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎と呼ばれるエネルギー発生機構です」

…………分からない。


「……………分かる言語でお願い」


「変換中……変換中……完了しました。名称、恒久エネルギーオーブ」


恒久エネルギーオーブ……か。しかし、あんな仰々しい空間にある物が簡単に見つかるか?


「…………その恒久エネルギーオーブは、その画像にある物の他にも幾つかあるのか?」


「いいえ。基本的に、都市1つに対し恒久エネルギーオーブは1つまでです。

それ以上ですと、エネルギー過剰になってしまいますので。それに、1つだけでも充分エネルギーを賄うことが可能です」


地球のエネルギー問題が消し飛びそうだな。


「場所は?」

「場所は空中都市デルメントルトの最下層部。厳重な警備とシステムに守られた。デルメントルト全てのエネルギーを担っている動力室。そこに荒起様が求めている恒久エネルギーオーブがあります」


想像以上に難易度が跳ね上がった。最初は、どこかの装置や機械にあると思っていたんだが…………


「ちなみに、その恒久エネルギーオーブが無くなるとどうなる?」


白銀が質問した。


都市1つにつき、1つで充分ということは、それが無くなったら替えが存在しないと同義。


何か大変なことが起きるのは確実、だな。


「デルメントルトを支える反重力機構がエネルギー不足で機能を停止し、落ちます」

「…………何が?」

「デルメントルトがです」


……雲海で地表は見えなかったが、ここは雲の上。相当な高度に位置しているのだろう。落下したら恐らく即死だ。


「ですが、デルメントルトには予備エネルギーが御座います。ので、少なくとも約1時間は持ちます。デルメントルトからの脱出経路を確保できればなんとか」


白銀が自身の手を口元に当て俯き考え込んだ。それから数十秒が経つと、顔を上げてコアに対し口を開いた。


「デルメントルトの地図、出せる?」

「滅びる前でしたら…………」






白銀がその場にしゃがみ、コアも白銀の目線と同じ高さに降り、どこがどこなのか俺には分からない地図を見て、1人と1台で話し合っていた。


俺は常盤と一緒に見守りながら、防護服を脱いだままの常盤に、防護服を着させる。


常盤が防護服を着終えたのと同時に、白銀とコアの話し合いが終わったみたいだ。


「脱出経路については大丈夫か?」

「コアの協力があれば余裕を持って脱出できる」


「それなら良かった。…………そうだ、恒久エネルギーオーブがある、最下層部の動力室までの道を教えてくれないか?」


「少々お待ちください。滅びた時に通路が崩れ、通れない事態になる可能性がありますので。ルートを検索します。今暫くお待ち下さい」


コアが無言になった。取り敢えず、やることが無くな………………


?穴側から光が――――――――


「な?!」

「新條君大丈夫?!」

「なんとか…………!」


急に横から3本のレーザーが飛んで来た。


レーザーに気づいた常盤に引っ張って貰わなかったら、恐らく俺はただでは済まなかった。


助かった代わりに、引っ張られたことでバランスを崩し、床に倒れてしまった。


床に倒れた状態のまま、レーザーが飛んで来た方向に視線を向ける。俺等が落下して来た穴から、さっきのロボットとは違う、浮遊する小さな小型ロボットが現れた。


その小型ロボットは合計3体。


気がつけば上の爆発音が完全に止んでいた。


恐らくビルを完全に粉砕したか、熱探知や生体反応で探られたのだろう。


しかし、これは不味い。あのビルにいないことがバレてしまった。即刻この場から逃げなければ。


白銀はとっさに持った改造銃を向け、小型ロボットを撃った。3体のロボットそれぞれに命中した。


大型のロボットより耐久性が落ちたのか、白銀の改造銃から放たれた弾丸1発で壊れ、プシューっと、どこか抜けた音と共に床に落下した。


「ルートを検索完了しました。部屋の扉から目的地に進めます」

「コア!この扉開けれる?!」


常盤は部屋にある壁に同化した扉を叩きそう言った。


「…………今、開きました」


扉が開く……では無く消えた。壁が消えた。どういう原理か分からないが消えた。


「新條君白銀ちゃん行くよ!コアも!」

「え、あ、ちょ……!」


常盤が白銀を問答無用で抱持ち、扉の先に進んで行った。一足遅れて俺とコアも続いて行く。


扉の向こうは暗く、ボロボロな廊下に出た。コアのナビに従い、懐中電灯を片手に廊下を進む。


「あ、そうだ!コアに聞きたいことがあるんだった!」


白銀は抱えられながらそう言った。


「道中お応えします」



◆◇◆◇



『警戒レベル1段階上昇。敵対存在の即時破壊命令を発令』


『個体識別番号001番!現時点をもって情報保管室の警護の持ち場を離れ!直ちに⬛︎地区急行し敵対存在を――――』


ただその場に、小さな破壊音が鳴り響いた。


「…………………」

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