5話 灰の大地、無命の都市 その4
俺と白銀はそれぞれ銃と改造銃を持ち、何が起きても対処できるように警戒する。
常盤はモニターに光が灯った瞬間に台から手を離し、そこから一歩下がってモニターを見つめていた。
「どうする?このままここにいても袋のネズミだけど…………」
「穴を上ってもロボットに囲まれ袋のねずみだ。
あそこよりもここならまだマシだろ」
「―⬛︎―⬛︎―⬛︎―⬛︎―⬛︎―⬛︎―⬛︎―」
モニターから謎の電子音が鳴り響く。
上の爆発音がうるさく聞こえる。時間にしたら数分にも満たない時間が過ぎると、急に電子音が聞こえなくなり、部屋が静かになった。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
ただその場に、俺でも常盤でも白銀の声でも無い、少し機械的な少年の声がモニターから発せられた。
「類、⬛︎語を適お?。空ダ*0を可析。言ゴ七誤e修、、正@開始」
分からない言語から別の言語に変わった。
日本語に似た言葉に聞こえるが、所々で全く分からない言語を発していた。
それから数十秒の沈黙の後、モニターが動いた。
「――――言語の誤差修正、完了しました。生体組織を認証……」
生体組織………………?あぁ、そういうことか。
常盤は防護服を脱いだまま、素手で台に触れていた。生物の生体組織が接触することで起動する仕組みなら、防護服を装着している俺が触れても動かないのも当然か。
「知的生命体の存在を確認。ご主人様が変更されます。了承しますか?」
いきなり常盤が後ろを向き俺と目を合わせた。
(新條君どうすればいいのこれ?!)
という目で訴えかけて来た。
(たぶん常盤が起動させたから常盤がなんとかしてくれ!)
そういう目で返す。
「………………えっと、はい。で良いかな?」
常盤がそう言うと、明るい光が写し出されているだけだったモニターに、極度に抽象化された荒いドットの顔が写し出された。
「初めまして。ボクは成長型自律式異工知能、コアと申します。ご主人様のご要望に何でもお応えしましょう」
自己紹介と共に目の前のモニターはそう言った。
「君は…………誰?」
「誰…………ということは、ボク自身についての情報をご所望ですね。それでは、ボクの身の上話をお応えします」
コアと名乗ったその存在は自身について話し―――
「ねぇ、あのモニターを撃った方がいい?」
「それは白銀の自由だが、そもそもアレが動力源について知っている可能性を考えないのか?」
「…………それもそうか」
―――始めた。
「ボクはデルメントルト所属の――――」
「ちょっとまった!……デルメントルトって何?ちょっと変な言葉だけど」
コアの言葉を遮り、白銀がコアに向けて質問をした。でるめんとると…………確かに聞き馴染みの無い言葉だな。
「デルメントルトとは、この空中都市の名前です。言語変換の結果、このような名前になりました」
この都市や目の前のコアを作る技術と知能があるなら、名前があるのも当然か。
「続けます。ボクはデルメントルト所属の研究員によって構成構築され、作られました。ボクが完成した時、その研究員からはボクを研究員自身の投影だと言われましたが、真意は分かりません」
研究員…………まさか、これが……………………
「研究員はボクに様々な知を教え、さらにはボクの能力の底上げをしてくれました。その中には、今まさにご主人様達の言葉を理解し、会話を可能にする言語理解能力もありました」
このエリアに来てから、人類にはまだ早過ぎる物ばかり。
これほどの圧倒的な技術を見せつけられると、どうして、どうやってデルメントルトが滅びたのか、知りたくなってきた。
「話の関係上、ボクを作った研究員の情報をお話します。ボクを作った研究員は、ボク視点から見ると、熱心だけれど少しドジが見受けられる印象でした。
デルメントルトでの地位や階級はそれほど高くありませんでしたが、この都市の大部分を占める住民とほとんど同じ……要するに、一般の部類で、普通だった…………………けど……………………………………………
ご主人様……地上は、どうなっていましたか?都市は、住民はいましたか?それとも、既に滅んでいましたか?もしくは…………この部屋の外…………デルメントルトはもう存在しないのですか?」
コアが研究員について話すのを辞め、都市について質問をしてきた。その声色に変化は無かったが、コアの言葉は何故か悲痛なように聞こえる。
「えー……と…………」
その質問に常盤は言葉に詰まっていた。まぁ、上の様相は流石に伝え難いからな。
何と言えば良いのか言えずにいた常盤が、傍観していた俺と白銀に近づいて意見を求めて来た。
「なんて言えば良いの?あの惨状を言って大丈夫……?」
コアに聞こえないように小声で聞いて来たので、俺も小声で返す。
「真実……を話すしか無いんじゃないか?そもそもあの惨状は到底隠し通せる物ではないぞ」
「………………分かった。言ってくる」
常盤はそう言い、モニターの前に立って上の惨状を話した。




