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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
一章 人智を越えた未知足り得る世界

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5話 灰の大地、無命の都市 その3

上空から落下する黒い何かを視認した白銀が、とっさに3分時計をいじり時間を遅くした。


白銀は取り敢えず常盤に抱えさせ、俺は手榴弾などを使い灰色の粉を舞い上がらせる。ロボットが熱感知や超音波を使っていないのは、さっきのロボットで確認済みだ。


同じ作りでは無い可能性はあるが…………


レーザーを避けながら取り囲んでいるロボットを掻い潜り、1番ロボットの数が少ない方向に全力で逃げる。


一回だけ、逃げる俺の背中にレーザーが掠ったが、少し防護服が溶けるだけで済んだ。しかし、掠っただけで防護服が溶けるとは…………


波熱弾レベルの超高温を連射していると考えていいな。


灰色に染まったボロボロ道を駆け抜けていると、少し遠くから、俺等が元々いた場所から爆発音が轟き、煙と粉塵が巻き上がり、爆風が俺等の背中を押し上げた。


俺の予想通り爆弾だった。しかし、それにしても威力が高い。


まともに喰らえば防護服ありでも消し飛びそうだ。というかもうほとんど戦争だろ……


あのロボットの包囲網から抜け、全力で逃げていると、こちらに気づいた1体のロボットが追いかけて来た。


常盤は白銀を抱え、白銀は空いている両手を使い、既に返した改造銃で追いかけて来るロボットを足止め。俺はというと、常盤の銃とその他の荷物を、2人の代わりに持って走っている。


何十mか逃げ回り、体力がもう底を尽きそうと思った時、ロボットのレーザーが近くのボロいビルの柱を貫き、支えを失ったビルがこちら側に倒れ――――


バンっと、何かを踏んだ感触と共に俺の足元が大爆発した。


恐らく地雷があったのだろう。しかし、いつの間に仕掛けられた?


たまたま俺が放置されている地雷を踏んだだけ?


いや、そもそも、ロボットの包囲網が一番薄い場所を抜けた。


その先で地雷に当たった……………………!やられた!嵌められた!考えておくべきだった。力こそ至上みたいな怪物ばかりで、策なんて仕掛けられると思っていなかった。


となるとまだ何かあるはず…………


だが、今は白銀が地雷を踏まなくて良かった。


常盤と白銀には離れていた為当らず、俺が持っていた荷物には然程損傷は見られないが、この爆破の規模だと生身ではほぼ即死。


俺は防護服の耐爆が高かったお陰で無傷で済んだが、今は目の前のビルが俺等に向かって倒れている。何とかしなけれ――――――


?!


地雷があった場所を中心として、地面にひびが入った。


「な……?!」

「マジかー……」

「ふぇ……?!」


そのひびは一気に広がり、俺と常盤と白銀にまでひびが広がると、そのまま地面が崩れて1mほどの穴ができた。


3分時計で遅くなっているが、それでも速く、穴ができた瞬間にそのまま落ちてしまった。同時にビルが倒れた。この場合……助かったと考えるべきか?


ビルに潰され圧死は確実。


底の高さによるが、落下の方が死ぬ可能性はある程度下がるだろう。


上から爆発音が聞こえた。最初は少しだけだったが、次第に爆発音が何重にも重なって聞こえるようになった。


あー成程。ビルに潰されて身動きが取れない所に、爆撃の雨あられで倒す算段か。


あえて包囲網が薄い場所を作り、あのボロボロなビルに誘導、偶然を装いビルの柱を破壊、地雷でその場から逃げないように足止め、ビルの瓦礫で動けない所に爆撃の雨荒れ。


今思えば、ロボットに包囲された時、100体を優に越えるロボットがいたのにも関わらず、攻撃の手が非常に緩かった。


レーザーでは容易に倒せないと判断したのなら助かった。


100体同時レーザーは流石に死ぬ。


完全なるオーバーキルで、絶対に殺すという意図がありありと分かる策だったが、まさか地雷で地面が崩れてもうそこにはいないとは思わないだろう。


しかし、策はあれだけでは無いだろう。


他にも策があったと考えられるが、穴に落下中の今は関係無いと考えるしか無い。


策の中に地面の強度が入っていたら終わりだったな…………それで、いつまで落下するんだ?


落下の途中途中で壁を掴み、落下速度を軽減しているが、このままだと体力が完全に尽きて落下で死ぬ。


暗くて底が見えないし懐中電灯を出す暇もない。早く、早く底に着いてくれ…………!






「げふっ……」

「ぐがっ……」

「イテっ……」


3人一緒に落下しながら体勢を崩し、変な体勢で着地した。


「イタタ……えっと、私の下って新條君?」

「となると、俺の上に乗っかってるのは常盤と白銀か」


2人分の体重と防護服の重量が俺の上にのしかかる。

重くて鈍くなった腕を動かし、懐中電灯を手に取り周囲を照らす。


「…………降りてくれ」

「あ、ごめんごめん」

「これは…………助かった…………?」


白銀はさっきまで落下していた穴を見上げ、なんとも言えない様子でそうに言った。無理もない。


さっきまでロボットに追いかけられ、地雷の爆発によるひびで地面が崩れ落下。挙句こんな場所にまで落ちて来た。


助かったかどうかは現状怪しい所ではあるが、まだ何とかなると信じて動くしか無い。


落下した場所。着地地点は、少し狭い部屋だった。天井はあまり高く無く、手狭ではないが広くは無い。


取っ手の無い扉らしき物がついている壁と、天井近くの壁と同化した大型TVほどの大きさを持ったモニター。


そのモニターの下には、機械的だが何も無いまっさらで大きな台。台のすぐそばには、明らか人間では無い形の骨が転がっていた。


他には何も無く、上が灰色に染まっていたのに対し、

この部屋はただ無機質で真っ白な空間だった。


部屋に一歩ずつ踏み入り、明らか人間では無い骨を飛び越えて台の前に立ち、モニターとその下の台を懐中電灯で照らしながら観察する。


モニターを起動するボタンらしき物は無く、その下の台に触れ軽く叩いてみたが反応はなかった。もう壊れているのか、もしくはそういう設計…………?


「あ、ちょっと待って。肩が外れてた……新條君。治してもらっていい?」


…………一度常盤の防護服を脱がせ、外れたという所を確認する。


触診や視診で確認した所、左肩が綺麗に外れていた。ぷらーんとしていた左腕を動かし、少々強引だが左肩を治す。


本来肩が外れたなら色々としなければならないが、まぁ常盤ならなんとかなると信じよう。肩が治った常盤に、渡されていたもう一つの懐中電灯を返す。


常盤は防護服を脱いだまま部屋を照らした。防護服の無い白銀が正常に行動できているので、ウイルスなどの心配は要らないだろうが、安全の為に防護服を着て欲しい。


よく見ると、常盤の体から少しだけ汗が滲み出ていた。さっきまでほとんど休憩無しで動いていたから当然か……


常盤は人間では無い骨をひょいっと軽く飛び越え、モニターのすぐそばに移動した。俺は一度持っていた荷物を下ろし、様々な銃弾が入ったポーチを白銀に返す。


ポーチを返すと、白銀が片眼鏡を掛け、中に入っている銃弾を1つ1つ取り出し確認し始めた。


この部屋はほぼ真っ暗。仕方なく俺が持っている懐中電灯を渡す。


「ふぅ………………」


このエリアに来てから、今まで以上に色々と起こり過ぎた。一度今の状況を整理しなければ。


落ちて来た穴を通して、上からドッコンバッコンと爆発音が未だに聞こえてきた。


まだやっているのか………………






「この骨って、たぶんこの都市の住民だったもの……だよね?」


「そうとしか考えられないな。誰かが侵入したにしては綺麗過ぎるし、上の荒廃ぶりを見ると、掃除ロボット的な装置や機械が稼働しているかも怪しい。この都市の住民だった可能性は1番高いだろうな」


「なんで滅んだんだろ」


常盤がこの部屋を調べているのを眺めていると、銃弾を全て確認し終えた白銀が渡していた懐中電灯を返して来た。


俺はその懐中電灯を受け取り、一度バッテリーを確認する。思った以上にバッテリーが削れていた。少し節約するか。


俺に懐中電灯を渡すと、白銀が取っ手の無い扉に近づいた。何をしたいのかを察し、俺もそれに手伝いに行く。


白銀は扉を押すが何も起こらず、俺は持っている銃を使い扉の隙間からこじ開けようとしたが、その扉に隙間なんてものは無かった。


俺と白銀で頑張って扉を開けようとしたが、ただ壁では?と思うほど扉はうんともすんとも言わなかった。


このままこの部屋にいても袋のねずみ。


一刻も早く脱出経路を確保したい所だが、難しそうだな…………


「なぁ、常盤も手伝って――――」

「―⬛︎―⬛︎―⬛︎―⬛︎―⬛︎―⬛︎―⬛︎―」

「新條君…………どうすればいい……?これ……?」


常盤が機械的な台に手を置いた瞬間、その少し上にあるモニターに光が灯り始め、モニターからはさっきのロボットが発していた言語に類似した、似たような言葉を発していた。

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