5話 灰の大地、無命の都市 その2
ロボットに追いかけられる白銀を、俺と常盤が追いかける。
「常盤、アレが何故白銀を追いかけているのか分かったのか?」
何故追いかけられているのが白銀と分かったのか。その疑問を常盤に投げつけた。
「うん!白銀ちゃんはあのロボットを、そして動いている所を見たことが無かった。ロボットが白銀ちゃんを追いかける理由、それは1年前に来た時には無かった。今来た時は、白銀ちゃんを追いかける理由ができた。
つまり、私や新條君は持ってなくて、白銀ちゃんだけが持っていて、その上つい最近手に入れた物。これらから導かれる答えは…………」
「…………3分時計!」
それもそうだ。どうやって知ったかは分からないが、あの時計は使い方次第で世界を滅ぼせる。
そんな危険な物を知れば普通は放っておく訳にもいかないだろう。
「ずーっと銃口が白銀ちゃんを向いてたんだもん。嫌でも気づくよ」
「それで、あのロボットの目的は分かったの良いが、一体どうすれば…………」
ロボットに追いかけられている白銀が、手首に触れて何かをいじった。
「こうなったら!遅くなれ1/2倍速!」
3分時計を起動し、周囲の生物以外の動きが遅くなった…………が、ロボットは全く遅くならなかった。
「なんで?!」
ロボット自体は遅くならなかったが、レーザーは遅くなっていた。レーザーが遅くなったのは大きい。
しかし、ロボットそのものが低速化しなければ持久戦でいつか負ける。まさか効かないとは……アレが生物とか言うんじゃ無いだろうな?
まぁ、色々と考えても仕方ない。今は目の前のことに対処しなければ。3分時計の時間速度操作が効かないのなら、それ用の対処法はある。
だが、今白銀が3分時計を使った。あと12分待たなければならない。
時間を稼ぎたいが、俺と常盤が持っている武器や道具ではどうしようも……いや、まだあのロボットに銃弾を浴びせていない。ロボットの耐久力を知る為にも、走りながら銃を構え、一発撃った。
結果として、全く効かなかった。傷すらつかなかった。弾は何処かへ飛んでった。
逃げるにも限界がある。これではどうしようも…………あ、白銀の改造銃をまだ試していない。
「白銀!その銃でロボットを足止めできるかやってみてくれ!」
「え?!………こんなのには……いや、アレなら効くか?!えっと、あ、あったあった。これを入れて……喰らえ!!」
白銀は改造銃に何かを詰め、その銃口を背後に向けて撃った。その何かがロボットに当たると、小さな爆破音と共にロボットの動きが止まった。
ロボットは文字通りの石を被っていた。
正確には、薄い灰色の石に類似した物質がロボットの全身を包み、そしてそれが地面にまで伸び、ロボットを地面に縛りつけていた。
「何だこれは……?」
「石液弾。外気に触れると急速に硬化する液体が、弾の中に詰まっている。ワタシの発明の1つ。大型の怪物や動きの速いのに喰らわせれば、瞬時に動きは止まり、安全に逃げることができる」
白銀がこちらにやって来て説明した。
「欠点は、製作難度が高くてあまり量産できないことくらい。この石は通常の石より硬度、衝撃吸収性が段違いで高い…………今のみたいに、レーザーとかで強引に破壊しない限りは大丈夫なんだけどな……スキンリーパーですら容易に破壊できないのに、怪物以上の機械ってどういうこと……?」
白銀の頬には一筋の汗が滴った。
目の前ではロボットがレーザーを射出して被さっている石を破壊。
ロボットの馬力が高過ぎるのか、足元の石にひびが入り崩壊。
1分も掛からない内にロボットが自由になり、銃口が白銀を向いた。
「白銀ちゃん。あのロボットが追いかける理由は、白銀ちゃんが持ってる3分時計だよ」
常盤のその言葉に、白銀が神妙ながらも納得した表情を浮かべた。
「たしか、対機械用の切り札があったよな。それを使う」
「使いたく無かったけど…………仕方ないか」
そう言いながら改造銃に新たな弾を詰め、レーザーがまた放たれない内に石液弾をロボットに向かって撃った。
何度も石液弾をロボットに撃ち、何度もロボットの動きを止める。しかし、ロボットは被さった石を全て破壊。
この時間がいつまでも続くのではないかと思うほど繰り返していると、白銀が様々な弾が入っているのポーチを眺め、苦い顔をした。
「まだ――――」
「弾切れ!」
俺が言い切る前に白銀が言い放った。
「時間は!?」
3分時計を見た瞬間、突然白銀が改造銃に1つ弾を手際よく詰め、俺に渡した。白銀の様子からして、やっと12分が経ったのだろう。
「……4、3、」
俺は改造銃を持ち、ロボットに接近する。
未だにロボットの銃口は白銀……3分時計に向けられており、難なくロボットのすぐ側に近づくことができた。
「2、1、ゼロ!喰らえ5倍速!」
5倍速と白銀が大声を出した瞬間、俺はロボットの下を勢いよく滑りながら、1番防御力が低いであろう場所に銃口を向ける。
その場所はロボットの足が展開されている、足の付け根の内側。そこが装甲が1番薄いと判断した。
改造銃に入っている弾は白銀の発明の1つであり、その名はL.E弾。略、局所的電磁パルス発生弾。
電磁パルスを発生させることが可能な弾。着弾から約10秒後に強力で局所的な電磁パルスが放たれる……らしい。エリア65に向かう前に、このL.E弾について説明された。
怪物に電磁波が効くか怪しかったが、目の前のような機械なら効果は抜群だろう。電磁パルスを受ければ、電子機器のショートに電子系統の故障諸々を引き起こし、まともには動けないはずだ。
電磁パルス発生まで少々時間が掛かるが、3分時計の時間加速で発生時間を短縮。
ロボットが電磁パルスを対策している可能性を考慮し、内側に向けて、この手に持っている改造銃を撃った。
L.E弾を撃つのと同時に、ロボットの下を滑り抜ける。
弾丸は目にも止まらぬ速さでロボットの体を抉り、電子音と微かな電撃を放ち、ロボットはその場で機能を停止した。
…………危なかった。
少し遅ければ機能停止したロボットに押し潰される所だった。別の要因で死にそうになりながらも、なんとか危機を退けた。いや……しかし、異常界で倒すという行為をしたのは白い怪物以来だな。
一応、常盤の腕を切り落としたスキンリーパーは、百手に轢かれた為倒してはいない。
「前々から妙に場慣れしているとは思っていたけど……一体キミたちは何歳なんだ?」
疲れた様子でその場に座った白銀が、不思議そうに俺と常盤の年齢を聞いて来た。まぁ、別に隠すような物でも無いし、包み隠さず正直に言う。
「20歳」
「18だよー」
少し驚いた顔で俺と常盤の顔を交互に見た。
恐らく、俺と常盤の若さと強さに驚いているのだろう。
銃を使い慣れ、怪物に然程臆せずに戦う人間。
それも軍人でも無いただの一般人としては若い。というか若過ぎる。荒起博士のスカウト条件が、どれほど無理難題なことかを改めて再認識した。
白銀の驚く様子を見ていると、何処か別の方向を見ていた常盤が急足で白銀を抱き上げた。
「新條君!避けて!」
急に飛んで来た複数のレーザーを紙一重で躱し、周囲を見渡す。さっきまで誰もいなかった空間に、突如としてさっきと全く同じ形をしたロボットが現れた。
ボロボロの道、崩れたビルの上、瓦礫が積もった残骸の山、更には空中にまで。
その数は100を優に超えており、俺等を逃がさないように取り囲んでいた。白銀は常盤に抱き上げられ、レーザーに当たらずに済んだようだ。
既に3分時計の時間速度操作は切れている。
レーザーは見てからの回避は何とかできる分、そこまで変わらないだろうが、何かヤバいことになるのは間違い無いだろう。
「!」
ロボットのレーザーが俺に向かっていることに気づき、またもや紙一重で避けれた……が、問題が1つ。
その問題は俺を狙ったこと。
3分時計や何かヤバい物を持っていないのに、俺に向けてレーザーを放った。思い当たる節はある。それはロボットを1つ機能停止にしたこと。
そこで壊れているロボットは偵察機かなにかで、偵察機を機能停止した俺は危険と判断された。
そんな所だろう。
色々と考えていると、上からヒューという音が聞こえた。上空を見ると、何やら空中のロボット達が黒い何かを落としていた。
「まさか、爆撃……?!」
「あーもう……!1/5倍速!」




