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アビスシステム  崩れゆく常識、積み重なる異常  作者: 鷹鴉
一章 人智を越えた未知足り得る世界

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1話 アビスシステム その2

書類を読み終え、ただ天を仰いだ。そして疲れた。


特殊部隊で何をするのか前々から疑問だったが、この調査は未開の地を探索するよりも圧倒的に危険過ぎる。


「最後の破壊音って……絶対何かいるよねー」

「だろうな」

その言葉に肯定し、もう一度手に持っている書類を読み返す。


「アビスシステム開発者、荒起あらき博士はかせ?あのハイテンション爺さん、こんな物を作っていたんだ……」

常盤ときわが呆れと感嘆混じりに呟いた。


「儂の凄さがようやく分かったか!」

「?!」

「うお?!ビックリした……」


いきなりの大声に俺と常盤が驚き、俺のすぐ真横にいた初老の人物に対して、俺と常盤がとっさに少し距離を取った。


俺は一瞬跳ねた心臓を落ち着かせ、大声の主の名を呼ぶ。


「心臓に悪いですよ……荒起あらき博士はかせ

この人は荒起博士。マッドサイエンティストを自称する普通に気の良い人である。


今の大声で分かると思うが、この人は常時テンションが馬鹿高い。

「若者がそう言うな……まあ、明後日まで生きている保証はながな……」


言葉の最後に言い淀んだことで、明日俺等が死ぬ可能性が高いということを改めて感じさせた。


「ま、儂が出来うる限りのことはするつもりだ。新條蓮!常盤凪沙!お主ら2人には期待しておるぞぉ!」

その言葉を残し、荒起博士が食堂を出て行った。


俺と常盤の不安掻き立てて。






次の日、俺と常盤を含めた計6人が、体全身を覆うゴムの質感を持った服を悪戦苦闘しながら着ていた。


「重い!着づらい!動きにくい!なんだこの防護服は?!」

真っ先に装着し終えた常盤が、この場に居る全員の気持ちを代弁して悪態をついた。


現在時間は14時10分。


たった6人しかいない極秘研究施設の特殊部隊。俺と常盤以外は国内外から引き抜かれた元軍人である。


俺等が悪戦苦闘しながら着ているのは荒起博士が開発した特別性多耐防護服。


耐火、耐電、耐冷、耐熱、耐圧、耐菌、耐撃、耐斬、耐腐、耐音などといったあらゆる事態に耐え、装着者を守ることの出来る防護服らしい。


先程荒起博士がこの防護服を持って来たついでに、嬉々として説明していた。

ただ、荒起博士曰くてんこ盛りにし過ぎて弊害が出てしまったらしい。


その弊害とは重さだ、総重量は実に40キロ。何が起こるか分からない為、銃などの火器を携帯する関係上全体の重量は更に跳ね上がる。


結果、俺と常盤含め部隊全員が思った。もう少し重量は何とか出来なかったのか?と。






現在時間14時25分。


部隊全員が特別性多耐防護服を装着し終え、全員が必要な装備と道具を背負うもしくは手に持った。


俺等はアビスシステムが置かれている実験室と、自動扉を挟んだ隣の待機室で、隣の実験室に置かれているアビスシステムを、待機室にある大きなモニター越しに見ていた。


モニターに写るアビスシステムを一言で形容するなら、扉の機能を持たない鉄の扉のような壁だった。


モニターからは人が見当たらないが、荒起博士含めその他研究員はアビスシステムを上からガラス越しに観測出来る制御室にいるそうだ。


今の所この重い防護服を着ているのことに流石に疲れてきたが、万が一想定外の事態に対処する為に、そして特殊部隊の安全の為に今いるこの部屋で待機を命じられていた。


『あー、あー……聞こえておるかー!聞ここえているなら返事をしてくれ!』


荒起博士の声が防護服内で反響し、思わず俺は防護服の上から両耳を塞いだ。


「き、聴こえた……荒起博士!もう少し声量を下げてくれ!」

『おお、すまんすまん。ちと興奮してしまったわい。

ふむ……音が防護服の中で反響する、こりゃ改善点じゃな』


防護服に内蔵された無線機越しに俺に軽く謝ると、荒起博士が独り言を呟き始めた。

今すぐ改善して欲しい所だが。


周りを見渡すと俺以外にも耳を塞いでいる人が何人かいたので、荒起博士に今すぐ改善して欲しいと改めて思った。


『あー、あー……部隊全員の確認が取れたから、改めて実験内容の確認と別世界移動後何をするかの指令じゃ』


声量に関して他の隊員に色々と言われたのか、荒起博士の声がいつもより数段階下がっていた。


『実験内容はアビスシステムによって繋がった別世界の調査。何が起こるか儂ですら分からん。だからこそどんな事も詳細に伝えてくれ。別世界に移動したらまず、部隊全員に渡した懐中電灯で周囲を照らして安全確保を。

その次に、亀裂周辺に設置型の光源と無線中継機を設置してくれ。これらが終わったら、AチームとBチームに分かれての調査を開始する。

チーム分けは、防護服を渡した時に伝えていた通りだから忘れないように。まずAチームは反応が消失した偵察機周辺の調査。何かが起きたことは確実。警戒を絶対に緩めない様に。

次にBチームはAチームの反対側方向に足を進めての別世界の調査。どんなことでもいい、詳細に詳しく伝えてくれ。調査開始から8分が経過したら部隊全員に帰還命令を送る。10分が経過する前に確実に帰還するように。

最後に、何が起こるか分からない別世界と言うことを念頭に置くように。以上!』


最後の最後に大声を出したことで、俺含め全員が自身の耳をとっさに塞いだ。






『アビスシステムを起動します。各員別世界突入準備を始めてください』


無線から荒起博士とは違う男の声がした。俺は待機室にある大きなモニターに写されたアビスシステムに視線を移す。


「いやー……まさかこんな大きな事に首を突っ込まされるとは。辞表出していいかな?」

いつのまにかすぐ隣に立っていた常盤が弱音と冗談混じりに呟いた。


「もう後戻りは出来ないから諦めろ。今はこの実験をどうやって生きて乗り切るかだ」

「そうだよ……ねぇー。まぁ辞表出しても行くところないからなぁ」


その言葉には俺も同意する。

常盤と話しているうちに、モニターに写っていたアビスシステムに変化が起こっていた。


扉の機能を持たない鉄の扉の様な壁に、目が眩む程の閃光と電撃がほとばしる。

数瞬の時間が経過すると、閃光と電撃が治る。


今、モニターから見えるアビスシステムは、形容し難い色がぐことの無い水面のように、絶えず色がうごめいていた。


その様相に俺含めた部隊全員が、モニター越しに見えるアビスシステムに目を奪われていると、実験室と待機室を繋ぐ自動扉が開かれた。


『実験開始じゃ。心配するな、なあに危険は無い……はずじゃ』


荒起博士のその言葉を不安に感じながら俺等は実験室に足を進める。正直言って不安しかないが、意を決してアビスシステムの中に足を踏み込んだ。

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